雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

文字の大きさ
35 / 116

第35話 前世の因縁

しおりを挟む
 起きると夜の3時。

 部屋を出るとメイドさんとばったり会った。

「今起きたのですか?」
「だらしなくてすいません」
「いえ、そういう意味では、まだしばらく起きていますか?」
「はい、起きてますよ」

「よければリツカ様の父とお話しませんか?」
「いいですけど、話す事が無いですよ」
「少々お待ちください。もしもし、アキラ様が起きました。はい、分かりました」
「こちらにどうぞ」

 俺は食堂に座った。
 すると男性とメイドさんが入ってきた。
 俺の対面に男性が座る。

「強引ですまん、私はリツカの父、ヒメビシオウセイだ。アキラと、いや、クラックと話がしたい」
「クラックを表に出せばいいですか?」
「頼む」

 クラックが表に出てきた。

「すまんがコーヒーと、クラックは何を食べる?」
「コーヒーとステーキ、パンをくれ」
「頼む」
「かしこまりました」

「早速だが言おう、私はファンタジーソウルに出て来る王、その記憶を持って生まれた。シルビアにクラウド領の統治を任せたのはこの私だ」

 リツカパパがクラックを見た。

「私がお前を殺した元凶だ。恨むなら私だ」
「もういい、俺が王の立場なら、同じことをしていた。王にとってクラウド領は弱小領地にすぎん」

「そうか、更にアキラの生い立ちを調べた」
「当然だ、不審者を屋敷に入れる方がおかしい。調べるのが普通だ」
『マジでか! 調べられていたのか!』

「アキラ、今だけは黙っていろ。で? わざわざ起きて俺と話をした理由はそれだけか?」
「提案がある」

「言ってみろ」
「13ゲート東高校に転入しないか?」
「意図は?」

「私は前世でお前を踏みつけ、ゲームで悪役に仕立て上げた。償いになるとは思わんが、何かを返したい」
「西高校は治安が悪く、東高校は治安がいい。リツカとマナが東高校で俺とメイが西高校だったな?」

「そうだ」
「メイも一緒に転入できるか?」
「努力しよう」
「努力ではなく、出来ないなら転入しない」
「……分かった」

 2人で黙ってコーヒーを飲み、食事をした。


 俺が食べ終わると、リツカパパが口を開いた。

「なにか、出来る事はあるか?」
「いい、今は自分で上に行ける」
「そうか」
「用は済んだな」

 クラックが立ち上がって部屋から出た。



【ヒメビシオウセイ視点】

 私は朝になるのを見計らって東高校の校長に電話をし、メイとアキラの転入を進めようとした。

『話は分かりました。家に伺って直接話をしてもいいでしょうか?』
「分かった」

 10分もせず校長が訪ねてきた。
 年は取っていても見た目は若い男だ。
 モンスターを倒すと寿命が延びるのだ。

「結論から言います。反対です」

 家までわざわざ来る時点で予想はしていた。

「そうだと思った、理由を聞こう」
「Dランクで学科を終了しているイナセ君は問題ありません。ですが、ホウシさんはまだEランクです。何の理由もなく、Eランクを東高校に転入させたとなれば厳格な基準が失われます」

「パーティーで10メートル級を倒した」
「足りません。それにCランクのヒメビシさんも一緒の状況でした。それだけではあまりにも弱いのです」

「質問を変えよう、どうすれば2人揃って転入できる?」
「ホウシさんのソウルランクを上げる、その上で分かりやすい成果があれば可能でしょう。もっと言うと、西高校に連絡はしましたか?」
「まだだ」

「では、私の方で西高校と協議をしてみます。ただ入れたいからと言って基準に満たない生徒を東高校に転入させることは出来ませんので」
「分かった、すぐに頼む」
「はい」

 高校の教育システムは厳格だ。
 強引に押し通せば独裁にもなりかねん。

『ヒメビシがやっているんだ、家も強引に息子を転入させる』となりそこから腐敗が進む。
 それ以前に今の日本は年金制度や非効率な国政からの揺り戻しで民意が非効率を許さない。
 昔を知る大人は負担を強いられ苦労してきたからだ。

 力不足の生徒を東高校に転入させるより、本人を強くして自然に転入させる方がまだ難易度は低い。
 東高校が駄目なら南や北に転入させた方が、いや、まだあきらめるタイミングではない。

 西高校だけはまずい、あそこは治安が悪すぎる。
 
「思ったようにはいかんか」

 その日は眠らず、コーヒーを飲みながら考えを巡らせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...