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第35話 前世の因縁
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起きると夜の3時。
部屋を出るとメイドさんとばったり会った。
「今起きたのですか?」
「だらしなくてすいません」
「いえ、そういう意味では、まだしばらく起きていますか?」
「はい、起きてますよ」
「よければリツカ様の父とお話しませんか?」
「いいですけど、話す事が無いですよ」
「少々お待ちください。もしもし、アキラ様が起きました。はい、分かりました」
「こちらにどうぞ」
俺は食堂に座った。
すると男性とメイドさんが入ってきた。
俺の対面に男性が座る。
「強引ですまん、私はリツカの父、ヒメビシオウセイだ。アキラと、いや、クラックと話がしたい」
「クラックを表に出せばいいですか?」
「頼む」
クラックが表に出てきた。
「すまんがコーヒーと、クラックは何を食べる?」
「コーヒーとステーキ、パンをくれ」
「頼む」
「かしこまりました」
「早速だが言おう、私はファンタジーソウルに出て来る王、その記憶を持って生まれた。シルビアにクラウド領の統治を任せたのはこの私だ」
リツカパパがクラックを見た。
「私がお前を殺した元凶だ。恨むなら私だ」
「もういい、俺が王の立場なら、同じことをしていた。王にとってクラウド領は弱小領地にすぎん」
「そうか、更にアキラの生い立ちを調べた」
「当然だ、不審者を屋敷に入れる方がおかしい。調べるのが普通だ」
『マジでか! 調べられていたのか!』
「アキラ、今だけは黙っていろ。で? わざわざ起きて俺と話をした理由はそれだけか?」
「提案がある」
「言ってみろ」
「13ゲート東高校に転入しないか?」
「意図は?」
「私は前世でお前を踏みつけ、ゲームで悪役に仕立て上げた。償いになるとは思わんが、何かを返したい」
「西高校は治安が悪く、東高校は治安がいい。リツカとマナが東高校で俺とメイが西高校だったな?」
「そうだ」
「メイも一緒に転入できるか?」
「努力しよう」
「努力ではなく、出来ないなら転入しない」
「……分かった」
2人で黙ってコーヒーを飲み、食事をした。
俺が食べ終わると、リツカパパが口を開いた。
「なにか、出来る事はあるか?」
「いい、今は自分で上に行ける」
「そうか」
「用は済んだな」
クラックが立ち上がって部屋から出た。
【ヒメビシオウセイ視点】
私は朝になるのを見計らって東高校の校長に電話をし、メイとアキラの転入を進めようとした。
『話は分かりました。家に伺って直接話をしてもいいでしょうか?』
「分かった」
10分もせず校長が訪ねてきた。
年は取っていても見た目は若い男だ。
モンスターを倒すと寿命が延びるのだ。
「結論から言います。反対です」
家までわざわざ来る時点で予想はしていた。
「そうだと思った、理由を聞こう」
「Dランクで学科を終了しているイナセ君は問題ありません。ですが、ホウシさんはまだEランクです。何の理由もなく、Eランクを東高校に転入させたとなれば厳格な基準が失われます」
「パーティーで10メートル級を倒した」
「足りません。それにCランクのヒメビシさんも一緒の状況でした。それだけではあまりにも弱いのです」
「質問を変えよう、どうすれば2人揃って転入できる?」
「ホウシさんのソウルランクを上げる、その上で分かりやすい成果があれば可能でしょう。もっと言うと、西高校に連絡はしましたか?」
「まだだ」
「では、私の方で西高校と協議をしてみます。ただ入れたいからと言って基準に満たない生徒を東高校に転入させることは出来ませんので」
「分かった、すぐに頼む」
「はい」
高校の教育システムは厳格だ。
強引に押し通せば独裁にもなりかねん。
『ヒメビシがやっているんだ、家も強引に息子を転入させる』となりそこから腐敗が進む。
それ以前に今の日本は年金制度や非効率な国政からの揺り戻しで民意が非効率を許さない。
昔を知る大人は負担を強いられ苦労してきたからだ。
力不足の生徒を東高校に転入させるより、本人を強くして自然に転入させる方がまだ難易度は低い。
東高校が駄目なら南や北に転入させた方が、いや、まだあきらめるタイミングではない。
西高校だけはまずい、あそこは治安が悪すぎる。
「思ったようにはいかんか」
その日は眠らず、コーヒーを飲みながら考えを巡らせた。
部屋を出るとメイドさんとばったり会った。
「今起きたのですか?」
「だらしなくてすいません」
「いえ、そういう意味では、まだしばらく起きていますか?」
「はい、起きてますよ」
「よければリツカ様の父とお話しませんか?」
「いいですけど、話す事が無いですよ」
「少々お待ちください。もしもし、アキラ様が起きました。はい、分かりました」
「こちらにどうぞ」
俺は食堂に座った。
すると男性とメイドさんが入ってきた。
俺の対面に男性が座る。
「強引ですまん、私はリツカの父、ヒメビシオウセイだ。アキラと、いや、クラックと話がしたい」
「クラックを表に出せばいいですか?」
「頼む」
クラックが表に出てきた。
「すまんがコーヒーと、クラックは何を食べる?」
「コーヒーとステーキ、パンをくれ」
「頼む」
「かしこまりました」
「早速だが言おう、私はファンタジーソウルに出て来る王、その記憶を持って生まれた。シルビアにクラウド領の統治を任せたのはこの私だ」
リツカパパがクラックを見た。
「私がお前を殺した元凶だ。恨むなら私だ」
「もういい、俺が王の立場なら、同じことをしていた。王にとってクラウド領は弱小領地にすぎん」
「そうか、更にアキラの生い立ちを調べた」
「当然だ、不審者を屋敷に入れる方がおかしい。調べるのが普通だ」
『マジでか! 調べられていたのか!』
「アキラ、今だけは黙っていろ。で? わざわざ起きて俺と話をした理由はそれだけか?」
「提案がある」
「言ってみろ」
「13ゲート東高校に転入しないか?」
「意図は?」
「私は前世でお前を踏みつけ、ゲームで悪役に仕立て上げた。償いになるとは思わんが、何かを返したい」
「西高校は治安が悪く、東高校は治安がいい。リツカとマナが東高校で俺とメイが西高校だったな?」
「そうだ」
「メイも一緒に転入できるか?」
「努力しよう」
「努力ではなく、出来ないなら転入しない」
「……分かった」
2人で黙ってコーヒーを飲み、食事をした。
俺が食べ終わると、リツカパパが口を開いた。
「なにか、出来る事はあるか?」
「いい、今は自分で上に行ける」
「そうか」
「用は済んだな」
クラックが立ち上がって部屋から出た。
【ヒメビシオウセイ視点】
私は朝になるのを見計らって東高校の校長に電話をし、メイとアキラの転入を進めようとした。
『話は分かりました。家に伺って直接話をしてもいいでしょうか?』
「分かった」
10分もせず校長が訪ねてきた。
年は取っていても見た目は若い男だ。
モンスターを倒すと寿命が延びるのだ。
「結論から言います。反対です」
家までわざわざ来る時点で予想はしていた。
「そうだと思った、理由を聞こう」
「Dランクで学科を終了しているイナセ君は問題ありません。ですが、ホウシさんはまだEランクです。何の理由もなく、Eランクを東高校に転入させたとなれば厳格な基準が失われます」
「パーティーで10メートル級を倒した」
「足りません。それにCランクのヒメビシさんも一緒の状況でした。それだけではあまりにも弱いのです」
「質問を変えよう、どうすれば2人揃って転入できる?」
「ホウシさんのソウルランクを上げる、その上で分かりやすい成果があれば可能でしょう。もっと言うと、西高校に連絡はしましたか?」
「まだだ」
「では、私の方で西高校と協議をしてみます。ただ入れたいからと言って基準に満たない生徒を東高校に転入させることは出来ませんので」
「分かった、すぐに頼む」
「はい」
高校の教育システムは厳格だ。
強引に押し通せば独裁にもなりかねん。
『ヒメビシがやっているんだ、家も強引に息子を転入させる』となりそこから腐敗が進む。
それ以前に今の日本は年金制度や非効率な国政からの揺り戻しで民意が非効率を許さない。
昔を知る大人は負担を強いられ苦労してきたからだ。
力不足の生徒を東高校に転入させるより、本人を強くして自然に転入させる方がまだ難易度は低い。
東高校が駄目なら南や北に転入させた方が、いや、まだあきらめるタイミングではない。
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その日は眠らず、コーヒーを飲みながら考えを巡らせた。
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