雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

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第70話 校風

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 きゅうが眠り、握手が終わると食事を摂る。

「アキラも大人気ですね。ゲームストーリーの変更が効いています」
「それやってないんだけどな」
「泣けるストーリーです。後でやりましょう」

『俺はそれよりもボスの方が気になる』
「クラックはボスの方が気になるって」
六角ロッカクとラスボスですか、後でゲームをやりましょう。今は自分が強くなる方が良いですよね?」
「そうだな」

 マナの気配がした。
 ゆっくりと食事を取り近づいてくる。

「……」
「……」

 無言でマナの隣に座った。

「疲れてますね」
「寝ていないのか?」
「ふふふ、仕方ないのよ、魔法弾が必要なのよ、2回も魔法弾を売る事になったわ」

「何だろう、錬金術師も大変だよな」
「ふふふ、でも、錬金術師の技量は上がったわ」

 パンをもぶちっとちぎりもしゃもしゃと口に入れるが中々飲み込む様子が無い。
 上品な動きだが、少しパンをちぎる動作が速い気がする、機嫌が悪そうだ。

「おめでとう? でいいのか?」
「ふふふ」
「寝た方が良いですよ」
「問題無いわ。やっと魔法弾がたまって来たのよ」

「俺は学科を卒業まで終わらせてるからゲートに行く事が多くなると思うけど、マナは休んだ方が良いか」
「……外に出たいわね」
「私がおんぶして運んであげましょうか」

「1人で歩けるわよ。でも、学科のクリアは必須ね」
「……私もまた勉強です」
「いや、後で追試を受ければいいだろ」
「西高校じゃないんですから」
「西高校とは違うのよ」

「お、おう、そうなのか。その間に剣と魔法の訓練をしようかな。覚えたい魔法があるし」
「入学式が終わってからリツカも誘ってゲートに行きましょう」

 マナはもしゃもしゃと食事を摂り、メイはスマホをいじる。
 きゅうは眠ったままぷかぷかと浮かびあがりゆっくりとした時間が流れた。
 こういうのも悪くない。

 食事が終わると俺は学校を散歩した。
 みんな親切で人当たりがいい。
 落ち着くなあ。

 先生に訓練を頼みに行ってみよう。
 職員室に向かった。

「失礼します! 魔法か剣の訓練をお願いしに来ました!」

 人当たりの良さそうな若い男性教師が立ち上がった。

「うーん、今日は学校がお休みで魔法は無理、僕は剣しか使えないしソウルランクDで大したことは無いけど、それでもいいならやってみよう」
「よろしくお願いします」

 先生と訓練場に向かった。

「何度も言うけど僕はDランクだからね。教えられることは何も無いかもしれない」
「いえ、スキルが高い先生もいると思うので」
「残念だけど、勉強多めの人生だったからね。ソウルランクDになったのも、資格の為だし、イナセ君のように本気で取り組めていないよ」

 訓練場に着くと2人で剣を構えた。
 学校には人が少ないはずだが見学の生徒が集まってきた。

「それじゃあ、僕から打ち込んでいいかな?」
「どうぞ!!」

 俺は本気で構えた。
 気は抜けない!
 その瞬間に先生の顔が曇った。
 西高校の時の癖で大きな声を出し過ぎたのかもしれない。

「ちょ! ちょっと、本気は無しで頼むよ。君はソウルランクCで僕はDだ」
「分かりました。いつ来ても大丈夫です」
「行くよ」
 
 先生が間合いに近づき突きを繰り出した。
 その瞬間に俺は下段から剣を弾くと先生の両腕が上がる。

 俺は空いた腹部を狙って剣を横なぎに振るが先生が咄嗟に下ろした剣のグリップでガードしようとした為剣の速度を速めた。
 右手と左手のグリップ部分に剣を当てると先生があっけなく剣を手放す。
 そして即座にナイフを抜こうとするが俺はそれよりも早く先生の首に剣を突き立てた。

「参った、はあ、はあ、お見事」

 先生の技量が高い。
 力と速度で押し切れたけど、あの動きは参考になる。

 パチパチパチパチパチパチ!
 周りで見ていた生徒が拍手をした。

「舞海先生をこんなに簡単に勝つなんて凄いです!」
「イナセ君かっこいい!」
「動きが見えなかった! 凄すぎる!」

「僕から教えられることは何も無い、それよりも僕に剣を教えてくれないか?」
「あ、いや、僕は小さな子供に教えるのしかやった事が無くて」
「素晴らしい! 子供に教えるほど難しいことは無いからね、僕はどうすれば剣技が上がるだろうか?」

「先生は剣は動きが綺麗ですし、流れるようなナイフへの持ち替えも良かったです」

「それでもアドバイスは無いかな?」
「攻撃をする時の踏み込みに迷いがあるように見えました。もっと思いっきり踏み込まれた方が攻撃される方は嫌です。先生の動きに悪い所はあまりないですよ」
「なるほど、参考になるよ」

 4人の女子生徒が前に出た。

「私も剣を教えて欲しいです」
「え?」
「私も動きに悩みがあって」
「いや、あの」

「いい機会だ、皆も悩みがあればイナセ君に聞きましょう! 東高校は生徒も先生もお互いに教え合う校風です! 僕も皆へのアドバイスが終わってから踏み込みを見て貰います!」

 俺は皆に剣の使い方を教えた。
 みんな素直に話を聞いてくれるし、嫌味を言わないし自分で努力する。
 この学校なら楽しくやって行ける、そう思った。
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