雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

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第75話 魂の融合

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「アキラも4強選抜に参加するように言われたよね?」

「参加はしているけど。連続ソウルアップで体調が戻っていないのと、動きの感覚が合わなくなったから事故が起きたら危ないと言ったらそれ以上何も言われなかった」
「その言い方をすれば教師は何も言えませんよね。流石アキラです」

「リツカは4強選抜で別行動か」
「え?」
「アキラは4強選抜に参加したくないんですよね?」
「ソウルアップの連続で体調が戻り切っていないのと動きの感覚が合わなくなっている」
「全然そうは見えないよ?」

「ソウルアップの連続で体調が戻り切っていないのと動きの感覚が合わなくなっている」
「全然そうは」
「ソウルアップの連続で体調が戻り切っていないのと動きの感覚が合わなくなっている」

「アキラは何度言っても同じことを繰り返しますから。リツカとは別行動です」
「リツカは1人で4強選抜か、次に奥を探索するのは夏になって来てからだな」
「4強選抜に参加したくないの?」

「参加はしている。生徒は全員参加で魔石を納めれば自動でポイントが加算されるからな」
「今は4強になって4強決定式に出て文章を考える時間が無いと言っています☆ 4強になって生徒の指導にパワーを割く時間がもったいないとそう言っています☆ リツカと一緒にいれば4強選抜に巻き込まれると、アキラはそう言っています☆」

「そういう事? その翻訳で合ってる?」
「気が向いたら積極的に魔石を納めよう」
「……うん、それまでに強くなっておくよ」
「2学期の学科も終わらせておきます」
「リツカ、カドマツさんとヤナギさんには夏になるまでゲートの奥に行かないと伝えて欲しい。特にカドマツさんな」
「分かったよ」

「俺から兄さんとライカさんには連絡しておくから」
「2人は来れるかな?」
「来れると思う」

「……3人で特訓して奥に進む準備をする。リツカは4強選抜でしばらく別行動だな」
「きゅう♪」
「きゅうも一緒に行こうな。特訓が終わって夏になったら一緒にゲートの奥に行こう。夏までに俺達はレベルアップだ」
「きゅう♪」

 こうしてリツカと別れて行動する事になった。
 俺達は3人でゲートに通った。
 
「朝は苦手です」

 俺はメイをおんぶしてマナが配信を始める。

「あ!」
「隠れて特訓をしても意味が無いわ。隠れても変な噂が流れるだけよ」

 そうかもしれない。
 舞海先生の時もそうだった。
 4強選抜はうまく回避できるだろう。
 今は気にせず力を蓄えるか。

 ウサギのゲートに入ってメイを下ろした。

「おっし、行くか」
「ちょっと待って、襟が乱れているわ」

 マナが俺の前に立って腕を回すようにして俺の襟を整えた。
 いい匂いがするのと距離が近い。

「いいわよ」

 マナが笑顔で言った。

『最後の笑顔が良すぎる』
『羨ましい!』
『マナは一見気が強そうに見えて面倒見がいいからな』
『マナとメイにお世話されたいわ』

「はいはい、モンスターを狩るわよ」
「構えてくれ、メイ!」
「行けます☆」

 眠そうだけど、まあいい。
 戦闘が始まれば目が覚める。
 キュインキュイン!

「スティールソード!」

 キュインキュイン!

「サモンモンスター!」

 ウサギの群れが出現した。

 キュインキュイン!

『始まるぞ。連続サモンモンスターがな』
『アキラ1人で全員分の経験値を稼ぐ気だ』
『パワーレベリングだな』

 俺は前に立ってモンスターを倒しつつサモンモンスターを発動させていく。
 毎日戦い続けた。 




【10日後】

「ソウルアップ出来ます☆」
「おめでとう」
「そ、そう、おめでとう」

 マナの目が泳ぎだした。
 そしてダラダラと汗を掻く。

「マナ、泣かないでください」
「泣いてないわよ!」
「マナ、焦らなくていいんだ」
「泣いてない!」

 マナが涙目になっている。
 俺は気づかないふりをしつつ話を進めた。

「メイはすぐに帰ってソウルアップだな」
「皆と同じソウルランクCになって帰ってきます!」

 シュババ!
 メイは嬉しかったのか二段ジャンプをしながら帰って行った。
 マナに気を使うのを忘れるほど舞い上がるなんて、珍しいな。

 俺はその日、マナを後ろに下げて1人でモンスターを狩り続けた。

『ソウルアップ可能です』

「お!」
「どうしたの?」
「いや、何でもない。もう少し狩ってから帰ろう」

 余計な事を言っても気を使わせるだけだ。
 ソウルアップの事は黙っていて、帰ってからソウルアップだな。

「私も戦うわよ」
「いやいいって、魔法弾を貯めておいてくれ」
「……分かったわ。必ず借りは返すから」

「そっか、明日はメイがいないから早朝に集合して2人でウサギのゲートに行こう」
「分かったわ」

 その日はモンスターを狩って終わった。


【次の日】

 学校の前で待つマナに駆け寄った。

「悪い、遅れた」
「そこまで待って無いわ。配信を始めるわね」

 配信が始まり挨拶の声にマナが答えていく。

「今日もウサギ狩りよ……」
「ん? どうした?」
「痩せたように見えるわね」
「ふ、俺の華麗な剣技でカロリーを消費したんだろうな」

 中二病のように言った。

「大丈夫なの?」
「寝坊しただけだ」

 収納から大きなおにぎりを出して食べる。

「朝、食べてないの? 食べるまで待つわよ」
「今が朝食中だ、行こう」

 大きなおにぎりを3個食べた後パンサンドを食べながら歩いた。
 パーティーを組んでウサギのゲートに入ると深呼吸した。

「本当に大丈夫? 調子が悪いなら言いなさいよ?」
「むしろ力は増している。下がってくれ」
「分かったわ」
「もう少し下がってくれ、今から本気で暴れるから」
「……分かったわ」

 キュインキュイン!

「スティールソード!」

 キュインキュイン!

「サモンモンスター!」

 大きな魔法陣が発生し、そこから300体ほどのウサギが現れた。
 その瞬間に配信の声が上がった。

『ソウルアップしただろ! 今分かったわ!』
『力が増しているの意味はこれか!』
『高校生でソウルランクBだと!』
『成長痛と空腹で調子が悪いはずだ、危ない!』

「はっはっはっは、サプライズだ! おりゃああああああ!」

 ウサギを斬り倒していく。
 少し胃がもたれるが気にせずウサギを全滅させた。

 収納からおにぎりを出して食べつつ魔法をチャージする。

 キュインキュイン!

「無理しなくていいわ。今日は休みましょう」

『そうだ、無茶だ』
『マナを引き上げたいんだろうな。涙が出てきた』
『マナだけがソウルランクEで焦っていたからな。やりたいことは分かるぞ』

 おにぎりを口に詰め込んで魔法を発動させた。

「サモンモンスター!」

 10メートル級のウサギが出現した。

「はっはっは! 大物だ!」

 キュインキュイン!

「ディフェンスダウン! おりゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 ドスン!
 10メートル級が倒れて魔石と肉を吐き出した。

「アキラ、無理をしないで!」

「無理はしていない、サモンモンスター!」

 雑魚を全滅させた。

「今日は休みましょう」
「サモンモンスター!」

 また雑魚を全滅させた。

「もうやめて!」
「ふう……一旦座ろうか」

 俺はスティールソードを消して2人で座った。
 そして食べ物を出して食べる。

「どうしてそんなに無理をするのよ! ソウルアップした後は倒れるかもしれないのよ!」
「もぐもぐ、ごくん」
「私に気を使っているならいらないわ。ここまでして強くなりたいとは思わない」
「う~ん、何と言えばいいかな」

 昨日、マナが焦った時に自分の事を思い出していた。
 先に進むメイと兄さんに追いつこうと剣を振り、モンスターを倒しても強くなることが出来ない焦り。
 ずっと芽が出ず、置いて行かれる感覚が続いた。
 そして俺は、自分の人生を諦めかけていた。
 ……そうだ、簡単な事だ。

「置いて行かれるのは苦しいよな」

 その言葉にマナが口に手を抑えて泣き出した。

「だから、進もう、皆で進もう」

 俺は立ちあがってマナに手を差し出し、マナが泣きながら俺の手を取った。

「それでいい、モンスターを倒して倒して倒し続ける。それでソウルアップ出来なければスキルの訓練をすればいい」

『かっけえ!』
『朝から号泣してしまった』
『アキラの目が変わったぞ』

 俺は笑いながらスティールソードを使って前に出た。
 そしてサモンモンスターを使ってウサギに飛び込んだ。

 クラックと俺の魂が混ざる感覚があった。

 ウサギを倒してマナを引き上げる。

 やる事は簡単で、どうすればいいかの道も見える。

 ただ進むだけでいい。

 クラックも同じ思いか。

 最近、クラックとの対話が減っている気がする。

 俺とクラックが1つになろうとしているからか。
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