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第17話 レッドスライム

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 チュンチュンチュンチュンチュンチュン!

「知ってる天井だ」

 昨日の記憶が曖昧だ。
 ヨウカと日本に帰ってから、学校には戻らず修行をする事にして異界に入った。
 異界内のダンジョンにあるヨバイ村に帰って来て、スライムを倒して、温泉でアレになって、温泉から上がって……アレになった。

 右を見るとユキナが俺に密着するように寝ていた。
 左にはヨウカが密着するように寝ている。

 俺も、皆も何も着ていない。
 周りを見ると女性が倒れるように眠っている。
 俺は散乱していた自分の服を取って着た。

「あ、起きたね」

 声の方を振り返ると、女性が身なりを整えた洋服を着て、俺にスープを渡してくれた。

「ありがとうございます」

 優しい塩味が体に染みる。
 昨日は夢だった?

「「こちらこそありがとうございます」」

 みんなが土下座をするように俺に礼をした。

 ……いやな予感がする。
 だが、昨日の夢はファンタジーすぎて現実離れし過ぎていた。
 夢に違いない。
 酔っぱらって飲みすぎたんだ。

「昨日のユウヤ君は凄かったね。ユウヤ君はあの時みたいに遠慮せずもっとヤッタ方がいいよ。でも、全部見られて恥ずかしかったなあ」
「……」

 夢じゃなかった。

「ううん、ユウヤさん。えへへ、またしましょうね」
「ううん、ユウヤ、またスル?」

 ヨウカとユキナが起きた。

「そ、それより、服を着よう」

 ユキナとヨウカが体を隠しながら服を着る仕草で興奮してしまう。

「あ、酔拳ってなんだ?」
「そう言えば、私とユキナのステータスを見せていませんでした」



 ユキナ 女
 ジョブ ????
 レベル ????
 体力  ????
 魔力  ????
 速力  ????
 スキル:『生活魔法』『錬金術』『氷魔法』



 ヨウカ 女
 ジョブ ????
 レベル ????
 体力  ????
 魔力  ????
 速力  ????
 スキル:『体術』『疾風』『生活魔法』『バリア魔法』『炎魔法』『酔拳』


 ユキナは錬金術師か。
 スキルとしては錬金術師によくある構成だ。

 ヨウカは近接攻撃を得意とするファイターだな。
 俺と同じ6枠のスキルを持っている。

 スキル枠は3枠が限界で、才能のある一部の人だけが多くの枠を持っていると聞いたけど、訓練次第で誰でもスキル枠を増やせるのかもしれない。


 体術は格闘の動きが滑らかになる為何となく持っている事は分かっていた。
 速力を常時強化する疾風持ちか、通りで速いわけだ。

「酔拳は始めて見るスキルだ」
「酔拳はお酒を飲むと戦闘力が上がります。攻撃力・防御力・速度が強化されるんです」

「強いな」

「毎回酒を飲んで戦えば、簡単にモンスターを倒せるんじゃないか?」
「デメリットもあるわね。すぐに疲れちゃうのよ」
「それにお酒は全部飲んじゃいました」

「マジでか!」
「マジですよ」

「後でまた買いに行こう」
「それが良いと思うのだわ」

「あ、スキル枠だけど、どうすれば増えるんだ?」

 自分が何でスキル枠を増やせたのか分からない。

「能力値が増えればスキル枠の限界値が上がるような気がします」
「そうね、でも、枠が増えてもスキル訓練をしないと駄目よ」
「モンスターをたくさん倒した上でスキル訓練をする、か」

 俺の努力は無駄ではなかった、そう思えた。
 ユキナのように少ないスキルでも異様に錬金術が得意で深く鍛錬をする道もある。
 スキルの方向性は考えておくべきか。

「……スキルか」

 いつの間にか起きて着替えていた女性も後ろで声を上げる。

「もっと飲みたい!」
「梅酒がいい!」
「ゆず酒を多めに買って来て!」
「ちゅうはいがいい!」

「次は果実系の酒を多めに買って来る」

 若い女性が好きそうなのを買ってくればいいのか、分かりやすくて楽だ。



『天の声が解除されました』

「「え??」」

『モンスターの封印容量が限界値を超えました』

『モンスターの封印が1部突破されました』

「……頭の中で声が聞こえた」
「私も聞こえました」
「私にも聞こえたわ」

 周りの女性も全員聞こえたらしい。

「結界の光が弱まっているわ!」

「嫌な予感がする!村の外を見てくる!」
「私も行きますよ!」

「みんなを一か所に集めなさい!念のために避難するわ!」

 ユキナがヨバイ村のみんなを避難させる。


 村の外に出ると、魔法陣が発生して、そこからスライムが大量に出てきた。

「スライムだけが出て来る!スライムのモンスターパレードか!」
「今結界を攻撃されたら簡単に突破されちゃいます!」

「突撃する!後ろから援護してくれ!」
「はい!」

 俺は、万を超えるスライムに向かって突撃した。

「ホーミング!ショット!」

 危機感が俺のスキルを高めていく。
 苦手だったホーミングが速くなり、効果時間も長くなっていった。
 1分しか持たなかった持続時間が上昇している。
 
 ショットを1発撃っただけで数十のスライムが霧に変わる。
 ショットを連発して大量のスライムを倒す。
 俺に大量の生命力が流れ込んできた。

 俺は、スライムを倒し続けた。



 大量のドロップ品が地面に落ちる。

 スライムゼリー・レディーキラー・魔石を拾う。
 拾っておかないとスライムが悪用する危険があるのだ。

「結界が攻撃されています!」
「ヨウカを無視して結界を狙っているのか!」

 俺は走って結界の周りに群がるモンスターを倒していく。



 ◇



 倒しても倒しても倒しきれない。

「もう、駄目です」

 後ろで戦うヨウカが倒れて結界内にほおり投げた。

 ホーミングを使えなくなり、ショットも出なくなった。
 俺の手に残ったセイバーでスライムを斬る。

 セイバーが小さくなり、短剣のようになっても斬り続け、その短剣も短くなっていく。

 手が痺れる。
 魔力酔いで能力値が落ちる。
 だが、耐えられる。
 俺は魔力酔いに強くなっていた。

 だが、それでも数が多すぎる。
 最後は微量のバリアを手に発生させてモンスターを殴り倒す。
 
 呼吸が続かない。
 体が痺れて来た。

「アイスアロー!」

 ユキナの魔法でモンスターが倒れる。

「早く結界に入りなさい!」

 俺とユキナは結界内に走る。
 スライムが集まり、イエロースライムに進化していく。
 そして、そのイエロースライムが合体していく。

 光が収まると合体したイエロースライムが赤い体に変わっていた。
 
『レッドスライム』

 そう表示されていた。
 俺はモンスターの名前を見ながら、気を失った。
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