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第23話 無謀な勇也

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 先生が叫ぶ。

「実戦用武器に持ち替えつつ避難しろ!」

 A市では有名なパーティーパンクモヒカンが前に出た。

「お前ら邪魔だ!早く失せろ!」
「ここは冒険者と自衛官で対処する!」

 大河さんも叫んだ。

「自衛官も邪魔なんだよ!」
「ここは協力してモンスターを倒す時だ!」

「いいのか?レッドスライムの後ろにイエロースライムとスライムが迫って来る。自衛官は国民の命を守るのが使命だろ?邪魔なんだよ!」

「大河さん!人命を守るのが最優先です。まずは避難を済ませましょう!」
「ぐう、避難誘導を開始する!」
「がはははは!邪魔だ!消えろ消えろ!」

「ユウヤさん!私達も戦いましょう!」

 ヨウカの言葉で冒険者が怒りだした。

「コスブレ装備が!遊びでやってんじゃない!てめえのランクはいくつだ!?」

「え、えっと」
「俺はFランクです!」

「すぐに消えな!」
「分かりました!ヨウカ、行こう。あかりも走ってくれ」
「……はい」
「分かったよ」

「大河さん!スライムは生徒も狙っています」

「そ、そうだな。生徒の護衛を開始する!」
「「生徒の護衛を開始します!」」

 俺とヨウカ、そしてあかりは自衛官のみんなと一緒に後ろに下がった。

「へ!レッドスライムはBランクファイターの剛太様に任せときな!ははははは!」





【Bランクファイター・剛太視点】

 俺はBランクファイターの資格を持っている。
 この魔道アックスで数えきれないモンスターを倒して来た。
 俺は未だに無敗、そして俺の仲間も強い。

 19人の仲間は全員Cランク冒険者の資格を持っている。

 イエロースライムが湧いてくるようになったが俺達はすべて問題無く倒して来た。
 最近まで強敵と言われていたレッドスライムも、今じゃ多くの討伐報告を聞くようになった。
 そろそろレッドスライムを倒す時期に来た。
 世の中は変化している。
 それに合わせて俺も成り上がるぜ!

 俺はレッドスライムを倒して爆速で駆けあがる!
 レッドスライムを1体倒すだけでスライム1万体分のドロップアイテムが出るらしい。

 1体倒すだけで能力値は大きく増す。
 地位も、名誉も、金も、女も全部手に入れてやるぜ!

「行くぜ!俺達は無敗だ!無敵の大規模パーティー『パンクモヒカン』の力を知らしめてやろうぜ!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!剛太さまあああああ!!!」」

 レッドスライムがバウンドしながら近づいてきた。

「遠距離攻撃だ!」

 魔法と射撃攻撃でレッドスライムを追い詰める。
 俺以外Cランクではある、だが、多くの仲間がBランク試験を落ちはしたが受かりかけた!!
 惜しい所までは行った!!

 実質俺達はBランクに近い力を持っている。
 レッドスライムさえ倒せば全員Bランクに昇格できるだろう。

 レッドスライムは左右にバウンドし、回避運動をしながらこっちに向かって来た。
 攻撃が効いている証拠だぜ。
 レッドスライムはタックルしか攻撃手段がない。

 遠距離攻撃部隊にレッドスライムが迫る。

「俺達の出番だ!行くぜ!」
「「うおおおおおおおおおお!!」」

 近接攻撃のファイター部隊がレッドスライムを取り囲んだ。 
 レッドスライムを取り囲んで俺の斧をめり込ませる。
 後ろから槍で突き、剣で連撃を食らわせた。

 だが、レッドスライムはタックルで俺達を吹き飛ばす。

「ひるむな!後少しだ!粘れ!」


「後少しで遠距離攻撃の準備が整う!」

「3秒後に離れろ!3,2、1,離れろ!」

 俺達が離れた瞬間に耐性を立て直した遠距離部隊の攻撃が飛ぶ。

「はははははは!行ける!行けるぞ!」

「ピキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」

 レッドスライムが大きな振動音を発した。

「……おいおいおいおい!どうなってやがる」
「レッドスライムが、2体現れた」

 レッドスライムが3体合体した。

「嘘、だろ」

 更にイエロースライムとスライムもレッドスライムの元に集まって来る。
 レッドスライムにスライムが吸収されていく。

「くそ!くそがあああ!」

 斧を振り回してスライムを倒すが数が多すぎる。

 レッドスライムは、イエロースライムを飲み込み、スライムを飲み込んでいく。

 レッドスライムの文字と共に別の文字が浮かび上がった。


 レッドスライム
 ビッグ

「「うああああああああああああああああああ」」

 冒険者パーティー、パンクモヒカンは全滅した。
 冒険者は臆病であれば強くなれない。

 だが、無謀すぎてもいけない。
 無謀な者は勝ち続てもある時突然死ぬ。
 パンクモヒカンは理解していなかった。
 
 負けて逃げ遅れる=死を意味する。

 それを悟ったのは死ぬ直前であった。





【鬼道勇也視点】

 レッドスライムがバウンドしてこっちに向かって来た。
 特に速いわけではない。

 何故かレッドスライムの下に『ビッグ』の文字が見えるがそんな事はどうでもいい。
 最近みんな俺を舐めている。
 
 俺の凄さを分かっていない。

 だが、レッドスライムを倒せばどうだ?

 どんなに見た目が良く、成績もよく、戦いの才能も有り、嫉妬される俺でもみんなが俺を認めるだろう。
 認められる結果を出せば無駄に俺の能力を説明する必要もなくなる。
 みんなが避難して多くの人が俺を見ている。
 今がチャンスだ。

「俺がレッドスライムを倒す!!」

 俺は反転してレッドスライムに向かって走った。

「鬼道!やめろ!」
 
 先生の静止を無視した。

「鬼道勇也!馬鹿な事はするな!」

 自衛官の言葉も無視して俺はレッドスライムに飛び込んだ。

 レッドスライムは突然速度を上げてバウンドしながらタックルしてきた。

「ああああああああ!右腕が、右腕がああ!!」

 気が付くと、右腕が折れていた。

 レッドスライムは俺をいたぶるように攻撃を続けた。

「やめ!がぎいい!おぐ!がああ!か、回復ポーションを!」

 左手で回復ポーションを飲む。
 レッドスライムは俺が回復するのを待って、じわじわと攻撃を続けた。

 俺をいたぶっている。

 顔面に攻撃を受けた。

「目が!目があああああ!!!」
 
 俺は死んでいい人間ではない。

 俺は皆を使う人間で、死ぬ人間ではない!

 死ねいいのは仙道のような人間だ。

「仙道!お前が代わりに戦え!Fランクのお前が代わりに戦って死ねええええ!」



【仙道優也視点】

「助けに行かないんですか?」

 ヨウカの言葉に答える。

「助けない。鬼道も言っただろ?俺はオールFランクだ」

 俺が逃げ遅れた時、鬼道は笑っていた。
 包囲された鬼道を助けようとして俺が包囲された時お前は戦ったか?
 走って逃げ出しただろう。
 俺が鬼道を見捨ててもお互い様だ。

 それに鬼道は特殊な行動を取る。
 モンスターがどんどん強くなっている今、特殊な行動を取られれば最悪の結果をもたらす。

 もし仮にだ。
 さっきみたいに鬼道が強力なモンスターに飛び込んで、モンスターを引き連れて逃げ帰ってきたらどうだ?
 みんな死ぬ。


『無能な味方は敵よりも厄介だ』

 俺は鬼道を助けず、避難を続けた。
 魔力循環のスキルで分かった。

 鬼道の魔力が消えた。
 俺は、悲しい気持ちにはならなかった。
 ほっとしていた。
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