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バンユウの長い一日
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「大変です!陣の東側から奇襲を受けております!」
「シンキ武将が打ち取られました!」
「分散した陣が各個撃破されています!」
ワシは眠れず、夜を過ごした。
左腕は燃え続け、炎が消える気配が無い。
喉が渇き何度も水を飲む。
腕の痛みで集中力が途切れそうになる。
そして陣を広げれば各個撃破され、狭めれば魔法で一網打尽にされる。
有効な対策を取れないのだ。
更に東西南北どこからでも奴は現れ、何度も奇襲をかけてくる。
50万も居る兵が休むことも出来ん!
兵が死の恐怖におびえている。
奴の名前はウイン。
服や容姿の特徴からすぐに調べそれは分かった。
まさかあそこまでの力を持っていたとは!!
そして、何なのだ?
なぜ奴は疲弊しない?
ワシらが疲弊しる中、奴は衰える気配が無い。
集団で攻めてくる気配はない。
ウイン1人しか確認されていない。
奴一人だけの為に万の兵を失っている。
深追いをすれば斥候のように気配を消し、追手の兵は一人も帰ってこない。
密集すれば魔法使いのように範囲攻撃を使われる。
陣の間隔を広げれば戦士のように一騎当千の強さを発揮してくる。
しかも奴はストレージのスキルも持っている。
物資が尽きることは無いだろう。
それよりなにより、この左腕の炎はなんだ!?
炎が消えない!
じわじわとなぶりごろされるようだ。
これはまるで、炎の神、カムイではないか!!
バンユウは自らの考えを頭から追い出すように首を何度も横に振った。
奴とて人間。
夜が明ける前までに力尽きるだろう。
それに、この軍には精鋭も多い。
疲弊は避けられん。
隠れる能力が高いようだが、闇に紛れることが出来るのは夜の内だけだ。
◇
「何故だ!なぜ攻撃が止まない!」
朝を迎え、整えたはずの陣は崩れていた。
テントはなぎ倒され、死体が転がる。
左腕の炎が消えない。
現場の指示に追われ一睡もできなかった。
兵士が駆けよる。
「被害は?」
「およそ5万となります」
「馬鹿な!たった一人の為に1割の兵を失ったというのか!しかも半日しか経っておらん!」
まずい!城への進軍は奴の対応に追われ完全に止まっている。
進軍の準備すら出来ていない。
兵は眠れず、戦っていない者も体力を奪われている。
この状態での進軍は極めて困難だ。
「全員に通達しろ!ウインを殺せ!どんな手を使っても構わん!」
バンユウ自身もウインの討伐の為動く。
「ばかな!倒せない!たった一人だというのに」
日が差し、明るくなりウインを追い詰めようとした。
だが奴は密集すると魔法を放ち、包囲されそうになると後ろに下がる。
深追いすればだれも戻ってこず、精鋭は狙われるように殺されていった。
それだけではない。
精鋭の間にも動揺が見える。
ウインへの恐怖が蓄積されている。
もう日が落ちる。
「今の軍の数は?」
「37万です」
馬鹿な!夜より被害が増えている!
加速している!
夜の被害は5万だった!
だが日中の被害が8万に増えている!
そして、ウインに斬りかかれる者が居なくなった。
斬りかかれば死ぬ。
そう思う者が多数派になった。
それがほぼ全員になるのも時間の問題。
そこに奴が現れた。
「ウイン!化け物がああああ!」
俺は叫んで斬りかかった。
「キャンプファイア!」
またワシは左腕にキャンプファイアを受けた。
そして周りの精鋭をすべて倒して帰っていった。
一切ワシの太刀が届かなかった。
そしてワシは一人で陣に帰る。
泥にまみれ左手が燃えたままのワシを見て部下の顔が引きつる。
奴はなぜワシを殺さない?
分からない。
簡単にワシを殺せる力を持っている。
ワシを殺せば軍が撤退を決める可能性もある。
なぜそうしない?
「……皆殺しにしたい、のか?」
軍の人間すべてを殺したい!
そう考えればつじつまが合う!
ワシの軍はなぶり殺しにされている!
このキャンプファイアの炎のように、軍すべてをじわじわと焼き殺そうとしている!!
バンユウの心は折れた。
そしてそれは兵にも伝わる。
2日後、バンユウはウインに打ち取られ、軍は撤退を決めた。
軍の兵数はこの時、10万を切っていた。
撤退を決め、後ろから迫るウインから逃げ惑う兵の姿は、軍の体をなしていなかった。
「シンキ武将が打ち取られました!」
「分散した陣が各個撃破されています!」
ワシは眠れず、夜を過ごした。
左腕は燃え続け、炎が消える気配が無い。
喉が渇き何度も水を飲む。
腕の痛みで集中力が途切れそうになる。
そして陣を広げれば各個撃破され、狭めれば魔法で一網打尽にされる。
有効な対策を取れないのだ。
更に東西南北どこからでも奴は現れ、何度も奇襲をかけてくる。
50万も居る兵が休むことも出来ん!
兵が死の恐怖におびえている。
奴の名前はウイン。
服や容姿の特徴からすぐに調べそれは分かった。
まさかあそこまでの力を持っていたとは!!
そして、何なのだ?
なぜ奴は疲弊しない?
ワシらが疲弊しる中、奴は衰える気配が無い。
集団で攻めてくる気配はない。
ウイン1人しか確認されていない。
奴一人だけの為に万の兵を失っている。
深追いをすれば斥候のように気配を消し、追手の兵は一人も帰ってこない。
密集すれば魔法使いのように範囲攻撃を使われる。
陣の間隔を広げれば戦士のように一騎当千の強さを発揮してくる。
しかも奴はストレージのスキルも持っている。
物資が尽きることは無いだろう。
それよりなにより、この左腕の炎はなんだ!?
炎が消えない!
じわじわとなぶりごろされるようだ。
これはまるで、炎の神、カムイではないか!!
バンユウは自らの考えを頭から追い出すように首を何度も横に振った。
奴とて人間。
夜が明ける前までに力尽きるだろう。
それに、この軍には精鋭も多い。
疲弊は避けられん。
隠れる能力が高いようだが、闇に紛れることが出来るのは夜の内だけだ。
◇
「何故だ!なぜ攻撃が止まない!」
朝を迎え、整えたはずの陣は崩れていた。
テントはなぎ倒され、死体が転がる。
左腕の炎が消えない。
現場の指示に追われ一睡もできなかった。
兵士が駆けよる。
「被害は?」
「およそ5万となります」
「馬鹿な!たった一人の為に1割の兵を失ったというのか!しかも半日しか経っておらん!」
まずい!城への進軍は奴の対応に追われ完全に止まっている。
進軍の準備すら出来ていない。
兵は眠れず、戦っていない者も体力を奪われている。
この状態での進軍は極めて困難だ。
「全員に通達しろ!ウインを殺せ!どんな手を使っても構わん!」
バンユウ自身もウインの討伐の為動く。
「ばかな!倒せない!たった一人だというのに」
日が差し、明るくなりウインを追い詰めようとした。
だが奴は密集すると魔法を放ち、包囲されそうになると後ろに下がる。
深追いすればだれも戻ってこず、精鋭は狙われるように殺されていった。
それだけではない。
精鋭の間にも動揺が見える。
ウインへの恐怖が蓄積されている。
もう日が落ちる。
「今の軍の数は?」
「37万です」
馬鹿な!夜より被害が増えている!
加速している!
夜の被害は5万だった!
だが日中の被害が8万に増えている!
そして、ウインに斬りかかれる者が居なくなった。
斬りかかれば死ぬ。
そう思う者が多数派になった。
それがほぼ全員になるのも時間の問題。
そこに奴が現れた。
「ウイン!化け物がああああ!」
俺は叫んで斬りかかった。
「キャンプファイア!」
またワシは左腕にキャンプファイアを受けた。
そして周りの精鋭をすべて倒して帰っていった。
一切ワシの太刀が届かなかった。
そしてワシは一人で陣に帰る。
泥にまみれ左手が燃えたままのワシを見て部下の顔が引きつる。
奴はなぜワシを殺さない?
分からない。
簡単にワシを殺せる力を持っている。
ワシを殺せば軍が撤退を決める可能性もある。
なぜそうしない?
「……皆殺しにしたい、のか?」
軍の人間すべてを殺したい!
そう考えればつじつまが合う!
ワシの軍はなぶり殺しにされている!
このキャンプファイアの炎のように、軍すべてをじわじわと焼き殺そうとしている!!
バンユウの心は折れた。
そしてそれは兵にも伝わる。
2日後、バンユウはウインに打ち取られ、軍は撤退を決めた。
軍の兵数はこの時、10万を切っていた。
撤退を決め、後ろから迫るウインから逃げ惑う兵の姿は、軍の体をなしていなかった。
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