ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ1．好きな人ができたの

大きな瞳、長く柔らかそうな髪の毛。

優しい笑顔…

大好きなあなたに

ナイフを突き立てた私は

悪魔なんでしょうか？


























こんな夢で起きるのは何回目だろう？

私が高校に入学してから一年間は

どんどん多くなってきた様な気がする…。



私が見る夢は

人を殺そうとする夢だ。



もちろん毎回こんなおっかない夢を見るわけではない。

時には彼女が幸せそうに笑っている夢を見る…

でも、そのたびに不思議に思っていた。



夢の中の私は別に彼女が嫌いではないはずなのだ。

なのになぜか、私は彼女を殺している。



…何故かはわからないけど。



最初は夢なんて気にしていなかったのに

私がこんなに考え込んでいるのには訳がある。



「またあの夢？」



モンブラン味のポッキーを手に私に話しかける彼女は

高校に入ってすぐに仲良くなった“甘実かんな”

通称“みかん”。


「本当に人を刺したりしないでよ？」

「しないし！」

「でもなんでそんな夢…会ったことはない人なんだよね？」

「……うん」


みかんは心配そうに大丈夫？とポッキーを差し出す。

145センチという低身長に、

見るからに華奢な体つき、

整ったかわいい顔。

赤いリボンで軽く結ばれた、長くて柔らかそうな髪の毛。

誰をも癒してしまう雰囲気をまとった彼女は…



夢に出てくる“あの人”だ。



彼女に初めて会ったときは本当に驚いた

前から夢の中で殺していた知らない人が

目の前に現れて隣の席に座った時

私はまだ夢の中にいるのかと思ったほどだ


「雫？聞いてる？」

「え？…ポッキーならおいしいよ。」

「何の話？」


不思議そうな顔をした後

すぐに白い肌がほんのり赤くなって

だからね…と、話し出す


やっぱりみかんは可愛いな…

なんて思っている私に

恥ずかしそうに耳打ちした





「私ね、好きな人ができたの…。」