ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ20．俺はお前を許さない。

父さんと義母さんは
僕が高校に入る前に事故で命を落とした。

それは車で家族３人、卒業祝いに旅行に行った帰りに。もちろん、僕だって巻き込まれた事故。


なのに助かったのは僕一人。

奇跡なんてものじゃない。

一度死んだはずだった僕は、生き返ったのだ。




血まみれの自分。



血まみれの両親。



僕は…何故生き返ってしまったのか――まるで悪夢のようだった。















今まで傷が治るのは、当然で、正常なものだと思っていた。
でも今回ばかりはさすがに自覚した。
自分の治癒能力はおかしい。
人並み外れた力であると。


























「お前のせいで…俺たちがどんな思いをしたのか…」



「兄さん、僕は」

「そんな風に呼ぶな！」

俺は何も分からなかった。何も言えなかった。
幼いころ、物心つく前に別れ離れになった、本当の母と暮らす実の兄。

４月に学校で、会った瞬間に分かった。
まるで鏡写しのように佇むお互いの姿。
この人が、父と義理の母が言っていた、僕の双子の兄だと。
嬉しかった。
何処にいるのかすら分からなかった兄。
やっと会えたのだから。

しかし、兄の眼には僕は一体どう映っていたのだろうか…？
そんな風に憎んでいるような…
敵にでもあったかのような…
そんな眼をして、僕を睨み付けている…。

「俺はお前を許さない。二度と俺の前に現れるな。」

僕は何も言えなかった。
初めて会った兄に、憎まれていた。
僕にとってはもはや絶望に近かった。
だってもはや家族と言える存在は兄と、実の母だけだったのだから…













それからというもの、僕は双子であるということを隠すようになった。
だって、兄は僕を弟として見ていない。
そう分かってしまったから。

この学校では兄は有名人だった。
全国模試一位なのだから当然だ。

来る日も来る日も問われた。

「二階堂先輩と双子？」

でもその度に否定をした。
それは誰も疑わなかった。
だって兄とは学年が違うのだから。

そして、誰もそれ以上は聞いてこなかった。
だって苗字が違ったのだから。
誰がどう考えたって、ややこしく、複雑な事情があるのは明らか。

そんな眼で見られて、たまに間違って先生や先輩から「二階堂」と呼ばれて、僕はなんでもないように返事をした。
いちいち説明する気にもならなかった。
苗字を間違えても、勘違いしても、仕方ない。


僕たちは一卵性双生児。正真正銘の双子なのだから。