ANGEL -エンジェル-

蜜星

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癒-healing-

P19.これが僕の持つ力です。

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綺麗な声で歌う人たち

私ならもっとうまく、あなたに届くように歌える。
そしたらきっと、あなたは私だけを見てくれる。
歌っている間だけでも…

でも、それができなくなった今は?
私にできることは…

立ち上がろう。
あなたの前で綺麗に舞おう。

























あれ…あれは…
私はまたあの夢を見ていたようだ。
やっぱり、あの男の人かっこよかったなぁ…
王子様みたいだった!

「あの・・・すみません。そろそろ閉館します。」

「へ?」

「「あ!」」

私は図書室で眠ってしまっていたらしい。
私に話しかけてきたのは二階堂真君。

「二階堂君!」

「この前はどうも」

いえいえ!と急いで頭を下げた。
私がここにいるのは他でもない、彼に会うため。
まぁ待っている間に寝てしまったんだけど、結果オーライ!
と、心の中でガッツポーズした後、すぐに話を切り出した。

「あのね…私、あなたにどうしても話たいことがあるの。」

「………甘実さんのことですね?」

「え?…うん。」

「分かりました。いいですよ。」

そういうと私の正面に腰かけて、なんでしょう?と笑いかける。
この人、二階堂優によく似ているのに、雰囲気が全然違うんだよな…


私が今回来た理由は、
みかんとどうやって知り合ったのか。
みかんと何があったのか。
それを聞くこと。

そして、みかんの記憶を取り戻すため、力を貸してほしいと頼むこと。

それもこれも二階堂優に言われてきたのだが…
やっぱりあいつは真くんに関することは
私に全部任せて、他を当たると言っていた…
昨日の様子を見たらあんたも来なさいとは到底言えたものではない。

まずは…

「二階堂君、あのね…」

「二階堂ではないんですよ」

「へ?」

「僕の名前は、水谷真みずたにまことです。兄の二階堂優とは別々に暮らしています」

どうしよう!!
昨日二階堂優に別々に暮らしていると言われたばかりなのに!!

普通にどちらも二階堂だと
思い込んでいたことに今更気が付く。

いきなり地雷を踏んでスタートしてしまった気がする…

「別々って…親の都合?」

「はい。離婚で。」

「そっか…」

昨日の二階堂優はなんだか怖い顔をしていて
あんまり深くは聞けなかったが
意味深なこと言っていたことを思い出す。

「あのさ、お兄さんとは…この前初めて会ったんだよね?」

「あ…知ってるんですね?」

「まぁ、ちょっとね。」

「…あんな形で会うつもりなかったんですけどね…僕も驚きました。」

複雑そうにまた笑顔を見せる。

最初会ったときは紳士的で素敵な人だと思ったけど、今はなんだか…



“守ってあげたくなる感じ”



みかんが言っていたことが少し分かる気がする…。

ここで少し黙り込んでしまった…。

どう切り出そう…?
水谷真はまた少し俯いている。



「僕は、あなたにいくつか嘘をつきました。」



先に沈黙を解いたのは真君だった。

「本当は誰にも話すつもりはなかった…本当のこと。でも、あなたにはすべてお話しします。」

「……なんで?私に?」

「あなたなら、助けてくれると言われたんです。天使と名乗る人から。」

「え?…えぇ?!」

「あ、れ?知り合いなんですよね?」

「そー、そうだけど…」

あいつーー何かってなことを!
助けてくれるって…!!
無責任な!!!

「でも、一体何をどう助けていいのか…」

「力を、失くしてほしいんです。」

「へ?」





またしばしの沈黙――




無理もない。




水谷真はポケットからカッターを取り出して、




自分の手首を思いっきり、




何のためらいもなく、




切ったのだ。






「っ…!!」

「ちょっと!何を…!!」

「黙って…」

私は立ち上がって叫んだが、
水谷真は体を震わせながら痛みを堪えている。

「早く…保健室…!!」

私が傷口を抑えようとした時、目を疑った。
目の前で傷口がぐんぐん塞がっていったのだ。
その間、およそ五秒。

言葉を失った私に、真はまるで何もなかったかのような口調で言った。






「これが、僕の持つ力です。」




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