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癒-healing-
P53.聞けよお前ら!!!
しおりを挟む―次の日の放課後―
「あの時記憶を取り戻せたのは、大きな矛盾も関係しているんじゃないか?」
「と言うと?」
「あのちっこいのは、癒しの力を持つために、自分の辛い記憶をなくすため記憶を作り変えていた。だが本来あいつの力は自分以外の他の存在を癒すためのもの。にも関わらず、その力がお前を苦しめた。それが力の矛盾…。
あいつの力がお前の苦しみを察知して、お前の苦しみを消すために記憶を正常に治したのかもしれない。」
「だからあの時、みかんの苦しい思いがすぐに書き換えられなかったのね…今まではすぐに気を失っていたのに…」
『ねぇーおふたりさん』
「最初にお前がちっちゃいのの記憶を消した時は、自分の記憶を消されてしまうなんて思わなかっただろう?水谷真を俺にすり替えた時も、あいつは自分の存在が消される事には気づかず、地雷を踏んでいた。でも今回は違う。」
「忘れないでほしい。もう力を使わないでほしい…って思ってたから…?」
『ちょっと聞いてんの?』
「そう。あいつの力はその気持ちを察知したんじゃないか?」
「なんだ…。最終的にみかんの力に救われるなんてね」
『聞けよお前ら!!!』
「「何?」」
私を無視して
昨日の話を読み解いていた二階堂と九理は
めんどくさそうに振り向いた。
『あのねぇ…あんたたちは、解決したー!みたいな顔で話してるけどね…まだ解決してないから!ここで落ち込んでる真君の力になってあげようとかそういう気持ちはないわけ?!』
「ないな」
「特には」
『おい!』
なんだこの冷酷な人たちは…
てかまだ会って間もないのに
この二人何気に仲良くなってない?!
そもそも私がみんなを呼び出しのは
真君のためだっつーの!
私の隣で真君は困ったような顔で笑っている。
「別にいいですよ、星さん。これは僕の問題ですから…」
『いくない!ここまで皆で頑張って来たんだから、あんた達、最後まで付き合いなさいよ!』
「こいつもいいって言ってんのに、何を手伝うんだよ」
「まったくだわ…私はみかんと友達に戻ったし、水谷君はどうでもいいんだけど…」
『あ、あんたたちねぇ…』
真君も遠慮するし、
二階堂は関わりたくないって感じだし、
九理はみかんの力が解決してくれれば
後はどうでもいいって感じだし…
私は両手の握り拳を強く握って震えていた…
『真君はこれでいいと思ってんの?!』
「いや…それは…そういうわけじゃ…」
『きゅうりは真君に私をけしかけてきたくせに、最後は放置なわけ?!』
「う…それはその、仕方なかったと言うか…誘い文句的な…てかあんた、何で急にきゅうりとか呼んでんのよ!」
『おい、わかめ!ここまで来たら最後まで付き合いなさいよ!無駄に頭いいんだから、いい案ぐらい出しなさいよね!!』
「殺すぞ!お前!」
三人に力いっぱい叫んだところで、
司書の先生が顔を出して静かにね、
と声をかけられた。
私たちは図書室の奥にある図書準備室にいた。
ほとんど使われていない倉庫のような場所で、
真君が司書の先生と仲がいいこともあって、
よく使わせてもらっているとか…
きっと真面目に図書委員会に
参加している真君の人柄の賜物なのだろう。
『あれ?そういえば、この部屋…みかんとも来たんじゃなかったっけ?』
「はい。何度かここで一緒にお茶を飲んだりしながらお喋りしてました。」
「そういえば、あのちっちゃいのは今日はどうしたんだ?」
『今日は職員室に呼ばれてるから先に帰っててって言われて…みかん、毎日のように図書室に来てたんだよね…?記憶も戻ったし…今日は来るかな?』
「来ないでしょ?あんなにはっきり拒絶しといて」
『あんた少し口を慎みなさいよ!』
真君の前で昨日のことを!
大体、二階堂優だけでも好き勝手なことを言うのに
蓋を開ければきゅうりも自由すぎる…!
すると急に真君がはっとして、
少し声を上げる。
「あ…!」
『え?!何?』
「いや…これは…何でもないです」
『何かあるなら言いなよ!皆協力するって言ってるし!』
「「言ってない。」」
はもって否定する二人を制して、言って言って!と真君に詰め寄る。
「えっと…甘実さんに会いに行く用事があったことを思い出して…」
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