ANGEL -エンジェル-

蜜星

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癒-healing-

P72.自分が傷つきたくないだけなんだ。

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文化祭当日――



後夜祭の衣装合わせで
私は文化祭実行委員会の人たちに連行されていた。

あーあ…しずくときゅうりと文化祭回りたかったなぁ…
二人は仲良くやってるかな?
また喧嘩になってなきゃいいんだけど…

私のために誰かが用意してくれた衣装に袖を通し、ため息をついた。



「あれ…この衣装好みじゃなかった?」



実行委員会の女の子が衣装の最終チェックをしながら心配そうに問いかけてくる。


「いえ…衣装は可愛いしとってもいいと思います。…文化祭回りたいなぁって思ってただけで…」


いけない、いけない。
せっかく用意してくれた衣装なんだから
あんまり浮かない顔してちゃいけないよね

と笑顔ですぐに弁解した。


「大丈夫ですよ!14時からリハーサルまでは解放されますから!」

「なら良かった…衣装合わせ忘れてて、約束しちゃってて…」

「彼氏ですか?」


急にいたずらっぽく笑って聞いてくる彼女に
私は思わずぴくっと反応してしまう。


「ビンゴだ!」

「ちちちがいます!!!…彼氏なんていないしっ」


頭には真君の顔が浮かんできた。
彼氏じゃないのに…

もし、あの時私が真君の告白を聞いて、返事をしていたら
今日の文化祭も一緒にまわっていたのかな…?



でも私は決めていた。

いつかまた記憶を失うかもしれない私と一緒にいることは、真君のためにはならない。
もう傷つけたくない…だから、もう真君には関わらないって…
そもそも、もう天使の力をたくさん使ってきた私には
どれくらいの時間が残っているのか…
いつかきゅうりから聞いたことがある。

私の力は短命の人が多くて、力を使い過ぎて20歳で死んじゃう人もいるって…

16まで力を使ってきた私は…
あと何年生きられるんだろう…?

こんな私が真君の傍にいていいはずがない。
きっと不幸にしてしまう…


…なんて、
本当は私が怖いだけなんだ。
真君が私の事で傷ついたり、悲しんだりするのをもう見ていられないだけ…
そんな彼を見て自分が傷つきたくないだけなんだ。



「甘実さんの衣装、問題ないですね。一応スタッフのみんなにお披露目しましょうか!」

「あ・・・そうだね。」

「かわいい系の曲ですからね。白のミニドレスにカラフルなお花…やっぱりこれにして正解でした!」


実行委員の子は満足げに私の着ている衣装を眺め
うんうんと頷き、私の背中をぐいぐい押した。


「みんなー!甘実さんの衣装お披露目だよ~♪」


着替えていた教室に作られた簡易更衣室を出ると
衣装の最終調整を行う女子生徒たちの視線が集まってくる。

その瞬間わっと人が押し寄せて
いろんな人がいろんな方向から話しかけてきた。
かわいいとか、似合ってるとか、たくさん褒めてくれたけれど
私はこういう雰囲気があまり得意ではない。

褒めてくれるのはとてもうれしいんだけれど
沢山の言葉に耳を傾けて、目が回ってしまううえ、
身長が低い私からすると、囲まれてしまった時の圧迫感たるや…

みんなに衣装のお披露目のはずが、
髪はどうする、メイクはどうすると次から次へと話が進んでいった。
なんで同い年の女の子なのにみんなそんな知識があるのだろうか?
その手の事には無頓着な私は全部任せるよ、と答えて
なんとかその中から抜け出し、教室の窓際へ移動した。

やっと出れた…

どっと疲れが押し寄せ、
外の空気が吸いたくなった私は窓へと手を伸ばす。




ふと、外に映った風景に目を見開いた――



あれは…真君としずく…?



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