ANGEL -エンジェル-

癒-healing-

Ｐ73．嫌だよ

なんで二人が一緒に…？


二人は外の出店に並んでいて、
仲良さげに会話しているのが二階の教室からでも見て取れた。

そうか…真君と仲いいのも当たり前だよね。
しずくと真君は私のために色々協力して頑張ってくれていたみたいだし、
それに、二人ともとってもいい人だから、すぐ仲良くなるよね…
私がいなくなったら、ふたりはうまくいっちゃうのかな…？


―――それは、嫌だな。


そんな考えがよぎったとき
はっとなってぶんぶん首を振った。

なんで私がそんなこと…
私はもう真君とは関係ないんだから、
そんなこと思ったってどうしようもないでしょ？
彼女でもない私が、真君のことについてどうこう言えないし…

なんだか楽しげな二人の様子を見ているのが辛くなって、
私は自分のブレザーを羽織って教室を飛び出した。



文化祭でにぎわう廊下を駆け抜けながら私はずっと考えていた。


例えそれがしずくではなくとも、
真君はきっとこれから私ではない誰かと恋人になって、
私がいた場所にはほかの誰かがいるようになって…

真君の優しい笑顔とか、笑い声とか、
守ってあげたくなるような弱いところとか、切ない横顔とか、
天パ気味の柔らかい髪の毛とか、
あったかくて大きい手とか…

全部、全部、全部、
私の手の届かない所に行ってしまう…
そんなの…





嫌だよ―――






私の足が向かった先は

彼がいつもいた

私が毎日通っていた

図書室で…




“本日閉館”の文字に

何故か、涙が溢れた。