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癒-healing-
P74.しずくだ
しおりを挟む涙が引っ込んでくれなくて
私はそのまま図書室の前に座り込んだ。
ーーもう、自分の気持ちが分からないよ…
「そんなところで何やってんだ?」
大好きな人の声…にそっくりな声をかけられて
顔を上げると目の前に二階堂君が立っていた。
「別に…何にもしてないよ…」
彼とそっくりな顔を見るのがなんだか嫌で
私は思わず目を背けてしまった。
私、今すごく感じ悪いな…
自分でもそう思ったぐらいなのに
二階堂君はふーん、とだけ言って隣に座った。
「な…何?」
「別に?俺がいると嫌なんだろうなと思って。」
「………嫌がる事するの?」
「まあな」
「意地悪はいくないと思う」
「お前には沢山迷惑かけられたしな」
「すみませんでした」
人と話すと、少し気がまぎれるな…
私の涙はもう流れるほどには出ていなくて、
何となく二階堂君が気を回してくれているのも分かっていた。
真君とはだいぶタイプが違うけれど、
二階堂君も優しい人だ…
「…お前さ、ちゃんと話せんじゃん」
「え…?」
「最初ははっきりしないやつだと思ったけど、普通に話せるんだなと思って。」
「…あの時はごめんね?真君と間違ってたなんて…」
「別に、もういいけど…」
「「………。」」
少しの沈黙が流れる
泣いているのを見ても
どうしたの?とか、聞かないんだ…?
ただ居るだけなんだ…?
「…二階堂君はさ」
「ん?」
沈黙に耐えきれず
私の方から話しかけてみる
「しずくと仲良いよね?」
「あいつが勝手に話しかけてくるだけだ」
「くすっ…そうなんだ?」
「成績が落ちたらあいつのせいだな」
「しずく重罪だね」
落ち着くな…この感じ…
誰かに似てる気がする…
「しずくだ」
「は?」
「二階堂君ってしずくとなんか似てる」
「………。」
「うわっ…嫌そうな顔っ」
二階堂君を見ると
眉間のシワが凄いことになっていた。
「俺があいつに似てるって…なんでだよ」
「分かんないけど、今しずくが隣にいる時と同じ感じがするの」
「不可解な上に不愉快な話だな」
「不愉快って…」
きっぱり言うなぁ…
「……多分だけどね、何でも話せるような安心感…?があるんだよ。」
「誰にでもそうすればいいだろ」
「え…」
「“もう”誰にでもそうできるだろ。」
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