ANGEL -エンジェル-

回-recovering-

Ｆ6．自己満足だよ

あいつがいつか私に言っていたことがある。


水谷あいつは家族を引き裂いた張本人だ、と。


あれがどういうことなのか
本人に聞くのとができなかったのは
あいつがとっても怖い顔をしていたからだ。

本当に真君を恨んで拒絶していると
はっきり分かるような表情だった。

きっと真君が初めてあいつと会った時も
そんな表情を見たのかもしれない。
いや、もっと緊迫していただろう…。


あいつと真君の過去に
一体何が会ったんだろう？

















「というわけで…人のプライベートな話にこれ以上関わらないほうがいいんじゃない？」


次の日のお昼休み
お昼ご飯を食べた後、
私とみかんは屋上へ来ていた。

11月中旬にもなれば外は寒く、
雲行きも怪しかったので
屋上の出入り口の前の階段に座り
私は二階堂に相談を受けたことを
みかんにすべて話した。

みかんは終始むすっとした顔をして黙り込んでいる。


「真君も気にしないでって言ってたじゃん？」

「………。」

「何そんなにムキになってんの？」


小学生の姪っ子を叱っているような気分でいた私に
みかんは私の目を見ずにやっと口を開いた。


「………どうしても、家族に戻ってもらいたいんだもん。」

「家族に？」

「真君と二階堂君は兄弟揃ってそっくりなんだよ…優しいのに、どっちも孤独で…せっかく血の繋がった兄弟なのに…こんなのおかしいよ」


確かに2人はそっくりだ。
見た目も、それ以外も。
それはみかんの事で協力した時に
私も感じていたし、仲良くなって欲しいけど…


「でも、それはみかんの…自己満足じゃない？2人がそう望んでるならまだしも…」







「自己満足だよ？！分かってる！！！」








「みかん…？」


大きな声をあげたみかんは
酷く辛そうな顔をしていて、
私は何も言えなくなってしまった。


「…自己満足だけど、1人にしたくないの…真君を…」


そう言って泣きそうな顔を隠すように俯き、
今度は小さな声で呟くように話し始めた。


「私は、きっとすぐ真君を1人にしちゃう…すぐ死んじゃう。…真君だっていつかは私じゃない他の誰かと付き合って、家族をつくるかもしれないけど…それじゃ遅いの。私がいるうちに何とかしてあげたい…私が真君を1人にして死ぬわけにはいかないの…」

「自分が死んだ後のこと…考えてたの？」

「…そうだよ？…だって私が死んだら、真君は前みたいになっちゃうと思うから…」