ANGEL -エンジェル-

観-see-

Ｓ6．なんだ、この前振られてた奴ね。

6月中旬になって、試合も終わり、
稽古ばかりの生活からやっと解放された。

試合の結果は…まぁ言うまでもない。

団体戦というのは
1人2人だけ強くても勝てないものだし、
来年からは個人戦の枠も回ってくるのだから
そこで成績を残してやろうと思う。

先輩たちが悔しがっているのを
俺は何だか他人事のように眺めていたが、
この後俺が悔しい思いをしたのは、

すぐだった。














「…な、名前！まだ、教えてもらってませんでした…ので…///」











背が高い眼鏡をかけた男子が
甘実かんなの腕を掴んで
赤面しながら話している。

俺は試合も終わり、
昼の稽古も無くなったため
あの日のリベンジに甘実かんなを探していて
2年B組から購買の前まで来たところで
2人を目撃したのだった。

やっと甘実かんなと
告白以来の再会をしたわけだが、
きっとこれを目撃しただけなら
まだ良かっただろう…


「あ…甘実、かんな…です。」


ちょっと待て…
あいつ、顔赤くないか…？！
俺にはそんな顔しなかったのに？！


「…甘実さん、この間は本当にありがとうございました。…ちゃんとお礼も言えずにすみませんでした。」

「い、いや、そんな大したことはしていないので…」


2人ではにかみながら話している。
きっと俺が試合の練習中に知り合ったんだろうが、
俺が先に目をつけた獲物を
横取りされそうになっている…
と言うことだよな？！


「すみません、引き留めてしまって…」


しかも相手は俺と同じ色のネクタイ…
一年生じゃねーか！！！

こうしちゃいられないと、
怒りのままに俺が2人に近づこうとした時、
どんっと、鈍い痛みが走った。











俺は目の前にいた人に気づかず、
追突してしまったのだ。


「痛っ…！」

「っ…大丈夫ですか？！」


やば…しかも女子の先輩！？

絶妙な位置にかがんでいた彼女は
長めのスカートにおさげに眼鏡と…
絵に描いたような地味な格好をしていた。

俺が話しかけると
キッと睨みつけるように俺の方へ振り返るが
前髪が長すぎて顔がよく見えない。


「………」

「えーと…ごめんなさい。ちょっと急いでて…すみませんでした。」


何も言わず俺の方を睨むだけのそいつは
行動といい、風貌といい、
少し不気味な感じがした。

こう言うのには関わらないのに限る。
謝罪し、その場を離れようとした時、
彼女はやっと口を開いたーー





「なんだ、この前振られてた奴ね。」