ANGEL -エンジェル-

観-see-

Ｓ５.ここに居たか上条！

「どうして好きでもない奴から振られなきゃいけないんだ！！！」







「…告白したからでしょうね」


昼休み、１年G組の教室の中で
俺に冷静にツッコミを入れるのは
唯一の男の友達である星梓ほしあずさだ。

真面目な制服の着こなしに黒縁眼鏡と
少し地味にも感じる格好をしているが、
同じ剣道部で成績も優秀、
顔もそこそこ整っていて
俺には及ばないが人気があるとかないとか…

さっきから話を聞くのもそこそこに
隣で小説を読んでいる。


「俺は納得いかない！」

「何が？」

「友達になりたいと言ってきた相手に、“友達もちょっと…”って、どう考えてもおかしいだろ！」

「忍に興味ないんでしょ？」


顔色一つ変えず俺に辛辣な言葉を
ズバズバ浴びせてくる…
とりあえず俺と話してる時くらいは
読書をやめていただきたいものだ。


「そもそも、俺に興味もないのに、何で剣道場に…」

「誰かの応援じゃないの？」

「…俺以外の応援に来るか？」

「馬鹿なの？」




















あれから数日

俺が告白したと言うこと、
先輩が振ったことが学校中で噂される…

と思っていたのに、
そんな事には一向にならなかった。

告白したのを誰かに見られたわけでもないし、
当たり前と言えばそうなのだが、
あの人は俺の告白さえも誰かに話したりしていないと言う事だ。

俺からの告白はそんなに取るに足らない事なのだろうか？

甘実かんなが学校中で一番の有名人なら、
今の俺は一年生で一番の有名人だと自負している。

だからこそ、甘実かんなに
自分をないがしろにされているような
そんな気がして納得できないのだ…












放課後、
道場へ行く前に俺の足は
二年生の教室がある二階へと向いていた。

一年生の靴やネクタイの色で
若干のアウェイ感の中、
二年生の階をすたすた進んでいく。


「あれ？！忍君？！」

「どうして二年生の階に？！」

「嘘？！本物！！！」


先輩たちの主に女子が騒ぎ出した。


「すみません、甘実先輩のクラスは何組ですか？」


まぁ、俺ぐらい人気があれば
人探しぐらい楽勝に…


「えー？！また甘実さん？！」

「付き合ってるって本当なの？！」

「忍君が来てるって！」

「甘実かんなに会いに来たのー？！」


わらわら集まって来た女子たちの話は
一向に進んでくれず、廊下に人だかりが増えていく。

きゃーきゃー言ってないで
さっさと質問に答えてくれ…

と思いながらも、笑顔を作り続け、
時間がかかりながら何とか
クラスがB組であることが判明した。


「じゃあ、B組に行って来ますね」


そう言ってやっとの思いで
甘実かんなに会いに行こうとした時だった


「ここに居たか上条！」

「げっ！」


強い力で俺の方を押さえつけたのは
この前負かして、団体戦の先鋒になった先輩だった。


「早く稽古に来い！いつまで油売ってんだ！」

「ちょっと先輩、俺まだ…」

「大会が近いんだぞ？！大将がいなくてどうする！」

「うぅ…」


先輩から大将の座を奪った以上
適当な理由でサボることができず、
俺はこのままおとなしく連行され、
大会まで授業以外は稽古で
ほとんどの時間を拘束されるのだった。