1 / 1
第1話「もう、訳分かんねえ」
しおりを挟む
1
「クソ。騒がしいな……今何時だと思ってんだ……」
俺は外で騒ぐクソ人間どもに起こされ、スマートフォンを確認した。って、まだ八時じゃねえか! 俺は深夜の五時に寝てんだぞ! 俺に気を使えよクソ人間ども!
「いてえって! おい誰か警察!」
「きゃあああ」
「ああああああああ」
「逃げろッ! あっ、足……」
「…………」
騒ぎ方が尋常ではない事が、窓の外を見るまでもなく、クソ人間の怒声で伝わってきた。結構でけーんだな、人の声って。
ま、そうか。
俺は窓の外を見て、思った。
「人が人を食ってんだもん。そりゃ怒鳴るってもんだぜ」
2
「ああがぁ」
人の声にしては理性がないと思われるその声の主は、カーチャン。
「おご……ごく……」
何かを言いながら俺の部屋のドアノブをガチャガチャと回したいようだ。まあ、今必死に俺が反対側でドアノブ抑えてるから開かねーんだけど。
「ごく……つぶ……」
「穀潰しっていいてーのかババア……だけど今朝から元気だな、どうした?」
「おごぁ」
「やっぱ会話にならねーか」
事は十数分前に遡る。玄関が何者かによって破壊された。うちは古い家で、ドアがガラスでできており、横にスライドするタイプのセキュリティ観念がないに等しい玄関をしているのだ。それが何者かによって割られ、とてつもなく不快なガラスの割れる音で俺の頭はついに覚醒した。寝ぼけていた脳みそがフル回転した。
が、すでに時遅し。普段ニートやってる人間が覚醒したところで平凡より下であることには変わりがなく、ガシャンという破裂音に反応して、部屋を出て確認するまでは時間がかかった。
だから遅かった。
「お、お母さん?」
制服姿の妹。俺に似て無愛想だが、俺に反して努力家の奴だ。俺は妹からは神と慕われていて……まあいいやそのくだりは。
とにかく、妹の方が早かった訳だ。玄関に様子見に行くのが。
間取りとしては、玄関を開ければすぐ傍に二階へ続く階段があり、二階の二部屋が妹と俺の部屋になっている。そして俺は自室から出て玄関を見に行った時、階段の途中から玄関を見下ろす妹の背中で通行止めを食らった。
「お母さん……なにやって……」
「おいッ!」
学校に行くつもりだったのか、制服姿の妹の襟を思いっきり引っ張った。
そうでなければ。
「おごぁあ? ああ?」
カーチャン……だったゾンビに妹が食われるところだった。
カーチャンゾンビは妹の足を狙って飛んだみたいだったが、俺が妹を引っ張ったお陰でカーチャンゾンビの噛みつき攻撃は躱された。そして階段の角に思いっきり顎をぶつけるというダメージを食らったらしいカーチャンゾンビは、外れた顎をぶらつかせながら立ち上がろうとしていた。
「おっさん! なに引っ張ってんだよ!」
「うるせえ早く上に行けよ!」
俺は無理やり妹の尻を叩き上げ、部屋へ逃げるよう誘導する。
「は? おっさんの部屋とかセーシ臭くて無理なんだよ死ね!」
「うるせえだったら自分の部屋にいろや! とにかく今のババアはただのババアじゃねえ! ゾンビババアだッ!」
真面目に何言ってんだ俺。とにかく、
言いながら各自部屋へ避難。妹も、先ほどのカーチャンゾンビの特攻が攻撃だと認識したらしく、部屋から出てカーチャンゾンビを説得するつもりはないようだった。
「にいちゃん……」
「……喋んな。ババアが今部屋の前にいる」
部屋は対に位置しており、声はおろか、生活音はなんでも聞こえる。俺はエロ動画をスピーカーで聴きながらシコってるところを何度も殺されかけたし、そんな俺を嫌いながらもシコってる(?)妹の妖美な声も聞いた事がある。いや妖美ってのは嘘。家族の喘ぎ声がエロい訳あるかいボケ。
「つか、お前俺のことおっさんて呼んでたじゃん。なに今更にいちゃんって」
「……うるせー……」
「すげえ嬉しいぜ。また妹に慕ってもらうのはな」
「にいちゃんも、私の名前、前みたいに呼べよ、クズ」
「……幸子」
「にいちゃん……」
「おごおおおぉおおお!」
うるせーぞババアーーーー!
クソ、死亡フラグか。まあいいか、死ぬ前に昔みたいに、幸子のこと……。
撫でてえな、昔みたいに。
「なあ、ババア、どうなってんだ? 幸子はどう思う?」
「いや、普通じゃないでしょ。目が白目むいてた」
「やっぱ? そうだよな、見間違いじゃねえよな。仮にゾンビって呼んだけどさ、マジでゾンビならやばいぞ。噛まれたら終わりだ」
「さっき……も、噛もうとしたんだよね」
「ああ、俺が間一髪、お前が死にかけるところを、俺がなんとか、お前を助けるために、俺が襟を引っ張って、お前の命を救った」
「恩の重ね着やめろ」
まあ、ともかく。
「俺、ゾンビ知識とかゲームでしかねーけど、おそらく従来のゾンビなら、音に反応するはずだ。今ババアが俺の部屋の前でガン待ちしてるようにな」
「おごぁ」
はい、待ってます! じゃねーわ。
「とにかく、だから、適当に音を鳴らそう。俺の部屋の窓が玄関と同じ向きだから、玄関側に何か落とせばなんとかなる……はず」
「えっと、にいちゃん。ひとついい?」
「なんだよ」
「今この声の距離感からして、ドアの前にいるよね? てことは、察するに、お母さん……? お母さんが、ドアを開けようとしてて、抵抗してるんだよね? 私が部屋のドアを開けられないようにドアノブ押さえてるのと一緒で」
「おお、推察力あるな」
「バカにすんなし。つかバカ、あんたその状態からどうやって玄関にものを落とすの?」
「…………」
そっすね。
ババアは相変わらず俺の部屋のドアノブ、ガチャってるしな。
「あー、どうしよ」
「私に考えがある。私が大きな声とか出す。その間ににいちゃんが玄関にものを落としまくる。いらねえ人形めちゃくちゃあるだろ」
「は? お前それフィギュアのことだったら許さねーからな? 俺の部屋で捨てていいのは使用済みティッシュだけだ」
「それでどんな音が出せるんだよ! わっ」
「どうした⁉︎」
「お、お母さんが、私の部屋のドアを開けようとしてる」
「ババアふざけんな! 幸子に手ぇ出したら許さねーぞコラァ!」
「ちょ、それが狙いだろうが! 今のうちに人形とかパソコンとかぶちまけてこい! ニート卒業のきっかけになるよ!」
「クソっ」
考えている時間はない。たしかにドアノブはもう握られている様子はない。今しかない! 今やるしか!
「さらば、『ゆーれいちゃんは嫌いですか? 第三巻に三ページだけ写り込んだ悪霊』のエロフィギュア! そして『吉田さんのよっしゃー! の主人公の母親』のエロフィギュア! そして」
「さっさと捨てろやァ!」
「ひぃっ。あっ」
効率よく捨てるため、棚ごと移動させてフィギュアを捨てていこうと思ったが、幸子の怒号にビビ……もとい驚き、俺は棚を窓側に思い切り倒してしまった。凄まじいガラスの割れる音で耳が痛かったが、棚ごと落ちていったフィギュアたちがそれ以上の音を奏でてくれたらしく、
「よし、多分お母さんそっちいった……!」
そういいながら、部屋を開けた幸子の気配を感じ取る。
「おつかれ、幸子。だけどまだ、ここから逃げなきゃなんねー。もし逃げ切れたらさ……俺、お前の頭……」
「にいちゃん……っ。あまり声出さないで。お母さん戻ってくるよ」
「あ、ああ、そうだ、った、な」
ん?
なんで。
幸子の声が向かいの部屋からするんだろうね。
「んごー」
「トーチャン、お前もか……」
そこには、仕事カバンを持った巨体がいた。トーチャンはこんなにでかくなかった。うん、天井に頭が届くような身長とかおかしいし、なんかそのせいでスーツボロボロだよ、トーチャン……。
カーチャンゾンビの姿は見えない。狙い通り下に行ったか。
「うおぉご」
「はぁ……っ、幸子、部屋から出るな。トーチャンもだ。なってる。ゾンビに」
「えっ」
「クリーチャーってほうが見た目的にあってるけど、まあいい。とにかくその、お前は部屋から出て、ベランダからでも逃げろ。玄関には多分、カーチャンがいるから、バレないようにな」
「に、にいちゃんはどうすんの……」
「と、トーチャンを、引きつける。なんのために宝の山を棚ごとぶん投げたと思ってんだ。お前の命を助けるためだよ、全て計画通りだ……」
「だから、恩の重ね着はうぜーって……言ってんだろッ‼︎‼︎」
瞬間、トーチャンゾンビが膝から崩れた。その後ろには、幸子……ノートパソコンでトーチャンの膝を攻撃した幸子が見えた。
「走れええええええええ!」
幸子の声に合わせ、
「らああああああああん!」
俺はダッシュした。膝から崩れたトーチャンゾンビの肩は、飛び台にするには高すぎない高さだった。そしてトーチャンゾンビを超えて飛ぶ俺。向かいには幸子。
幸子は両手を広げ、母性溢れる抱擁を俺に……。
「きゃっ」
普通に避けられて床に転がる俺。
「止まるなっ! 走るぞ!」
薄情な幸子はさておき、俺は幸子の手を引き、階段を転がるように、まあ転がってないんだけど、降りて、
「あぶぁあお」
「あっ、俺のエロフィギュアが、しゃぶられてる」
カーチャンゾンビはエロフィギュアに夢中だった。夢中でべろべろと舐めたり噛んだりしていた。
「何してんだよ……早く……っ」
「っと、その前に」
俺は自分の靴を取り、妹の靴も取った。これは忘れられない。というか、この家からの脱出時にはすでに考えていたので、無駄はない。
「いや、今の切なそうに人形を見てるお前の無駄の多さはなんだよ」
「心を読むな。行くぞ」
クソったれ! なんなんだよ一体。窓の外を見た限り、ゾンビになってんのはトーチャンカーチャンだけじゃねえ。どうなってんだ? 警察は仕事してんのか、それとも、最悪、警察がすでにゾンビ化していたり……。
「もう、訳分かんねえ」
「クソ。騒がしいな……今何時だと思ってんだ……」
俺は外で騒ぐクソ人間どもに起こされ、スマートフォンを確認した。って、まだ八時じゃねえか! 俺は深夜の五時に寝てんだぞ! 俺に気を使えよクソ人間ども!
「いてえって! おい誰か警察!」
「きゃあああ」
「ああああああああ」
「逃げろッ! あっ、足……」
「…………」
騒ぎ方が尋常ではない事が、窓の外を見るまでもなく、クソ人間の怒声で伝わってきた。結構でけーんだな、人の声って。
ま、そうか。
俺は窓の外を見て、思った。
「人が人を食ってんだもん。そりゃ怒鳴るってもんだぜ」
2
「ああがぁ」
人の声にしては理性がないと思われるその声の主は、カーチャン。
「おご……ごく……」
何かを言いながら俺の部屋のドアノブをガチャガチャと回したいようだ。まあ、今必死に俺が反対側でドアノブ抑えてるから開かねーんだけど。
「ごく……つぶ……」
「穀潰しっていいてーのかババア……だけど今朝から元気だな、どうした?」
「おごぁ」
「やっぱ会話にならねーか」
事は十数分前に遡る。玄関が何者かによって破壊された。うちは古い家で、ドアがガラスでできており、横にスライドするタイプのセキュリティ観念がないに等しい玄関をしているのだ。それが何者かによって割られ、とてつもなく不快なガラスの割れる音で俺の頭はついに覚醒した。寝ぼけていた脳みそがフル回転した。
が、すでに時遅し。普段ニートやってる人間が覚醒したところで平凡より下であることには変わりがなく、ガシャンという破裂音に反応して、部屋を出て確認するまでは時間がかかった。
だから遅かった。
「お、お母さん?」
制服姿の妹。俺に似て無愛想だが、俺に反して努力家の奴だ。俺は妹からは神と慕われていて……まあいいやそのくだりは。
とにかく、妹の方が早かった訳だ。玄関に様子見に行くのが。
間取りとしては、玄関を開ければすぐ傍に二階へ続く階段があり、二階の二部屋が妹と俺の部屋になっている。そして俺は自室から出て玄関を見に行った時、階段の途中から玄関を見下ろす妹の背中で通行止めを食らった。
「お母さん……なにやって……」
「おいッ!」
学校に行くつもりだったのか、制服姿の妹の襟を思いっきり引っ張った。
そうでなければ。
「おごぁあ? ああ?」
カーチャン……だったゾンビに妹が食われるところだった。
カーチャンゾンビは妹の足を狙って飛んだみたいだったが、俺が妹を引っ張ったお陰でカーチャンゾンビの噛みつき攻撃は躱された。そして階段の角に思いっきり顎をぶつけるというダメージを食らったらしいカーチャンゾンビは、外れた顎をぶらつかせながら立ち上がろうとしていた。
「おっさん! なに引っ張ってんだよ!」
「うるせえ早く上に行けよ!」
俺は無理やり妹の尻を叩き上げ、部屋へ逃げるよう誘導する。
「は? おっさんの部屋とかセーシ臭くて無理なんだよ死ね!」
「うるせえだったら自分の部屋にいろや! とにかく今のババアはただのババアじゃねえ! ゾンビババアだッ!」
真面目に何言ってんだ俺。とにかく、
言いながら各自部屋へ避難。妹も、先ほどのカーチャンゾンビの特攻が攻撃だと認識したらしく、部屋から出てカーチャンゾンビを説得するつもりはないようだった。
「にいちゃん……」
「……喋んな。ババアが今部屋の前にいる」
部屋は対に位置しており、声はおろか、生活音はなんでも聞こえる。俺はエロ動画をスピーカーで聴きながらシコってるところを何度も殺されかけたし、そんな俺を嫌いながらもシコってる(?)妹の妖美な声も聞いた事がある。いや妖美ってのは嘘。家族の喘ぎ声がエロい訳あるかいボケ。
「つか、お前俺のことおっさんて呼んでたじゃん。なに今更にいちゃんって」
「……うるせー……」
「すげえ嬉しいぜ。また妹に慕ってもらうのはな」
「にいちゃんも、私の名前、前みたいに呼べよ、クズ」
「……幸子」
「にいちゃん……」
「おごおおおぉおおお!」
うるせーぞババアーーーー!
クソ、死亡フラグか。まあいいか、死ぬ前に昔みたいに、幸子のこと……。
撫でてえな、昔みたいに。
「なあ、ババア、どうなってんだ? 幸子はどう思う?」
「いや、普通じゃないでしょ。目が白目むいてた」
「やっぱ? そうだよな、見間違いじゃねえよな。仮にゾンビって呼んだけどさ、マジでゾンビならやばいぞ。噛まれたら終わりだ」
「さっき……も、噛もうとしたんだよね」
「ああ、俺が間一髪、お前が死にかけるところを、俺がなんとか、お前を助けるために、俺が襟を引っ張って、お前の命を救った」
「恩の重ね着やめろ」
まあ、ともかく。
「俺、ゾンビ知識とかゲームでしかねーけど、おそらく従来のゾンビなら、音に反応するはずだ。今ババアが俺の部屋の前でガン待ちしてるようにな」
「おごぁ」
はい、待ってます! じゃねーわ。
「とにかく、だから、適当に音を鳴らそう。俺の部屋の窓が玄関と同じ向きだから、玄関側に何か落とせばなんとかなる……はず」
「えっと、にいちゃん。ひとついい?」
「なんだよ」
「今この声の距離感からして、ドアの前にいるよね? てことは、察するに、お母さん……? お母さんが、ドアを開けようとしてて、抵抗してるんだよね? 私が部屋のドアを開けられないようにドアノブ押さえてるのと一緒で」
「おお、推察力あるな」
「バカにすんなし。つかバカ、あんたその状態からどうやって玄関にものを落とすの?」
「…………」
そっすね。
ババアは相変わらず俺の部屋のドアノブ、ガチャってるしな。
「あー、どうしよ」
「私に考えがある。私が大きな声とか出す。その間ににいちゃんが玄関にものを落としまくる。いらねえ人形めちゃくちゃあるだろ」
「は? お前それフィギュアのことだったら許さねーからな? 俺の部屋で捨てていいのは使用済みティッシュだけだ」
「それでどんな音が出せるんだよ! わっ」
「どうした⁉︎」
「お、お母さんが、私の部屋のドアを開けようとしてる」
「ババアふざけんな! 幸子に手ぇ出したら許さねーぞコラァ!」
「ちょ、それが狙いだろうが! 今のうちに人形とかパソコンとかぶちまけてこい! ニート卒業のきっかけになるよ!」
「クソっ」
考えている時間はない。たしかにドアノブはもう握られている様子はない。今しかない! 今やるしか!
「さらば、『ゆーれいちゃんは嫌いですか? 第三巻に三ページだけ写り込んだ悪霊』のエロフィギュア! そして『吉田さんのよっしゃー! の主人公の母親』のエロフィギュア! そして」
「さっさと捨てろやァ!」
「ひぃっ。あっ」
効率よく捨てるため、棚ごと移動させてフィギュアを捨てていこうと思ったが、幸子の怒号にビビ……もとい驚き、俺は棚を窓側に思い切り倒してしまった。凄まじいガラスの割れる音で耳が痛かったが、棚ごと落ちていったフィギュアたちがそれ以上の音を奏でてくれたらしく、
「よし、多分お母さんそっちいった……!」
そういいながら、部屋を開けた幸子の気配を感じ取る。
「おつかれ、幸子。だけどまだ、ここから逃げなきゃなんねー。もし逃げ切れたらさ……俺、お前の頭……」
「にいちゃん……っ。あまり声出さないで。お母さん戻ってくるよ」
「あ、ああ、そうだ、った、な」
ん?
なんで。
幸子の声が向かいの部屋からするんだろうね。
「んごー」
「トーチャン、お前もか……」
そこには、仕事カバンを持った巨体がいた。トーチャンはこんなにでかくなかった。うん、天井に頭が届くような身長とかおかしいし、なんかそのせいでスーツボロボロだよ、トーチャン……。
カーチャンゾンビの姿は見えない。狙い通り下に行ったか。
「うおぉご」
「はぁ……っ、幸子、部屋から出るな。トーチャンもだ。なってる。ゾンビに」
「えっ」
「クリーチャーってほうが見た目的にあってるけど、まあいい。とにかくその、お前は部屋から出て、ベランダからでも逃げろ。玄関には多分、カーチャンがいるから、バレないようにな」
「に、にいちゃんはどうすんの……」
「と、トーチャンを、引きつける。なんのために宝の山を棚ごとぶん投げたと思ってんだ。お前の命を助けるためだよ、全て計画通りだ……」
「だから、恩の重ね着はうぜーって……言ってんだろッ‼︎‼︎」
瞬間、トーチャンゾンビが膝から崩れた。その後ろには、幸子……ノートパソコンでトーチャンの膝を攻撃した幸子が見えた。
「走れええええええええ!」
幸子の声に合わせ、
「らああああああああん!」
俺はダッシュした。膝から崩れたトーチャンゾンビの肩は、飛び台にするには高すぎない高さだった。そしてトーチャンゾンビを超えて飛ぶ俺。向かいには幸子。
幸子は両手を広げ、母性溢れる抱擁を俺に……。
「きゃっ」
普通に避けられて床に転がる俺。
「止まるなっ! 走るぞ!」
薄情な幸子はさておき、俺は幸子の手を引き、階段を転がるように、まあ転がってないんだけど、降りて、
「あぶぁあお」
「あっ、俺のエロフィギュアが、しゃぶられてる」
カーチャンゾンビはエロフィギュアに夢中だった。夢中でべろべろと舐めたり噛んだりしていた。
「何してんだよ……早く……っ」
「っと、その前に」
俺は自分の靴を取り、妹の靴も取った。これは忘れられない。というか、この家からの脱出時にはすでに考えていたので、無駄はない。
「いや、今の切なそうに人形を見てるお前の無駄の多さはなんだよ」
「心を読むな。行くぞ」
クソったれ! なんなんだよ一体。窓の外を見た限り、ゾンビになってんのはトーチャンカーチャンだけじゃねえ。どうなってんだ? 警察は仕事してんのか、それとも、最悪、警察がすでにゾンビ化していたり……。
「もう、訳分かんねえ」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる