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第13話「必死のラーニャ」
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死を感じたことはあるだろうか。
例えば、高所から落ちた時。例えば、事故にあった時。
ラーニャは現在、成り行きで師匠となった人物に、殺されそうになっていた。
「これが……」
騎士現役を全うした男の、殺気。
それはオーラとなって見える。
「ただ魔力を見せただけで、ビビりすぎなんじゃよ、お前。ほら、かかってこい」
「…………」
かかってこいと言われても。
動けない。
こんな棒切れで。
あの殺気を放つ鬼のような存在に、立ち向かえるわけが。
ない。
「こなければ、儂から行くが」
一歩、ジャークがこちらに近寄った。
(殺される……!)
ならばいっそのこと、殺してしまえ——いや。
という、躊躇が、踏み出したラーニャの足を鈍らせた。
踏み込みが浅いので、当然、ラーニャの振った木刀も切れ込みが浅い。ジャークに杖で捌かれ、引き込まれる。それと同時に、ジャークは杖を振り、ラーニャの顔面に直撃させた。
「……っ!」
声も出ない痛みがラーニャを襲う。
「防御には、攻撃を受け止める技術が必要じゃ。今みたいにな。それに伴う筋力が必要なだけで、必要なことだけを述べれば、山ほどある」
ひざまづくラーニャに、ジャークはニヤリと笑った。
隙と見て、ラーニャはすぐさま立ち上がり、木刀を当てようとする。それも防がれるが。
とても杖をついている老人とは思えない。
何度もラーニャはジャークに木刀を振る。防がれ捌かれ、時に反撃を受け、そうしながら数分が経過していた。
「もうそこまででいいんじゃないですか?」
そんな二人に、声をかける人物がいた。
「なんじゃ、お前か。止めるなよ」
ジャークが横を見るので、ラーニャも同じところへ向いた。
そこには若い男が立っていた。髪の毛をきちんとわけ、眼鏡をかけた制服の男。
「こんにちは、ラーニャちゃん。僕は魔術講師のフレっていうんだ。このジャークさんの弟子でね」
「は、初めまして」
「酷い顔だ。殴られたんだろう、腫れているよ」
「は、はぁ……」
「何しにきたんじゃ、お前」
ジャークに問われ、フレは答える。
「そりゃあ、ラーニャちゃんにあなたが剣を教えて、僕が魔術を教える。そうすることで、最強の騎士が出来上がるのでは?」
「確かに、お前にラーニャの話はしたが、手伝って欲しくて話したんじゃない」
「魔術、教えて欲しいです!」
と、ジャークの言葉を遮って、ラーニャは挙手をした。
「……まあ、育てる弟子が強くなることはいいことだ。魔術、教えてやれ。今日はもう終いじゃ。フレから魔術を教えてもらう以上、この模擬試合は意味がないからの」
そう言い残したジャークは、どこかへ杖をついて歩いて行った。
「よろしくね、ラーニャちゃん」
フレは笑顔で握手を求めた。ラーニャは喜んで手を握った。
例えば、高所から落ちた時。例えば、事故にあった時。
ラーニャは現在、成り行きで師匠となった人物に、殺されそうになっていた。
「これが……」
騎士現役を全うした男の、殺気。
それはオーラとなって見える。
「ただ魔力を見せただけで、ビビりすぎなんじゃよ、お前。ほら、かかってこい」
「…………」
かかってこいと言われても。
動けない。
こんな棒切れで。
あの殺気を放つ鬼のような存在に、立ち向かえるわけが。
ない。
「こなければ、儂から行くが」
一歩、ジャークがこちらに近寄った。
(殺される……!)
ならばいっそのこと、殺してしまえ——いや。
という、躊躇が、踏み出したラーニャの足を鈍らせた。
踏み込みが浅いので、当然、ラーニャの振った木刀も切れ込みが浅い。ジャークに杖で捌かれ、引き込まれる。それと同時に、ジャークは杖を振り、ラーニャの顔面に直撃させた。
「……っ!」
声も出ない痛みがラーニャを襲う。
「防御には、攻撃を受け止める技術が必要じゃ。今みたいにな。それに伴う筋力が必要なだけで、必要なことだけを述べれば、山ほどある」
ひざまづくラーニャに、ジャークはニヤリと笑った。
隙と見て、ラーニャはすぐさま立ち上がり、木刀を当てようとする。それも防がれるが。
とても杖をついている老人とは思えない。
何度もラーニャはジャークに木刀を振る。防がれ捌かれ、時に反撃を受け、そうしながら数分が経過していた。
「もうそこまででいいんじゃないですか?」
そんな二人に、声をかける人物がいた。
「なんじゃ、お前か。止めるなよ」
ジャークが横を見るので、ラーニャも同じところへ向いた。
そこには若い男が立っていた。髪の毛をきちんとわけ、眼鏡をかけた制服の男。
「こんにちは、ラーニャちゃん。僕は魔術講師のフレっていうんだ。このジャークさんの弟子でね」
「は、初めまして」
「酷い顔だ。殴られたんだろう、腫れているよ」
「は、はぁ……」
「何しにきたんじゃ、お前」
ジャークに問われ、フレは答える。
「そりゃあ、ラーニャちゃんにあなたが剣を教えて、僕が魔術を教える。そうすることで、最強の騎士が出来上がるのでは?」
「確かに、お前にラーニャの話はしたが、手伝って欲しくて話したんじゃない」
「魔術、教えて欲しいです!」
と、ジャークの言葉を遮って、ラーニャは挙手をした。
「……まあ、育てる弟子が強くなることはいいことだ。魔術、教えてやれ。今日はもう終いじゃ。フレから魔術を教えてもらう以上、この模擬試合は意味がないからの」
そう言い残したジャークは、どこかへ杖をついて歩いて行った。
「よろしくね、ラーニャちゃん」
フレは笑顔で握手を求めた。ラーニャは喜んで手を握った。
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