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三話
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目覚めると、体の下には赤い絨毯が敷かれていた。絨毯の感触を確かめつつ、ああ、もうここは異世界なんだ。と、諦めがついた。僕の部屋には赤い絨毯なんてものは敷いていない。気絶してから移動したとして、病院でないなら一体どこだ? そう、異世界である。
意識は戻ったが、瞼を開けて起き上がるのが怖い。
目の前には未知の生命体なんかがいたりして、とか。
そんなことを考えてしまって、体が動かない。
しかし隣でもぞもぞと何かが動いたと思えば、
「兄ちゃん! 兄ちゃん!」
と、僕を呼ぶ灯の声が聞こえたのだ。起きても大丈夫なんだろうな? そう思いつつ、僕も起き上がる。
そこは宮殿のようなゴージャスな場所だった。その中央に僕らが眠っていたらしく、中央の目の前には、王様らしき人物が座っており、僕らを見ていた。
「ようこそ、ノロジーへ」
王様らしき、とはいわず、王様といっても過言ではないだろう。長い髭に黄金の王冠を頭に被っている。
「待っておりました。灯様。と、その従者」
「従者ではありません。兄です」
と、灯が反論した。王様にしてみれば、物として一緒に連れてこられている人間がいれば、それは従者に見えるだろう。それほどの扱いを灯は僕に強いているのだぞ。反論の前に自覚を持て。
「ほうほう。お兄様であったか。持って行くものを人間にするとは、様変わりな灯様だ——いや、勇者様と、そう呼ぼうか」
灯が勇者? なんだ、まるで今から冒険に出るかのような言い方は。
あの手紙を読む限り、旅行か何かで異世界へ行けるという感覚でいたのだが、そうではないのか?
「勇者様と、そのお兄様。さっそくお願いがあります」
すっかり勇者様という称号に馴染む灯。となりではデレデレとしている。
「お願いとは?」
僕が問うと、
「魔王を、倒して欲しいのです」
王様はそういうと、世界の情勢を語り始めた。
「ノロジーは、人間と魔物が共存する世界です。人間は一つの国として、魔物も一つの国として。二つの国がノロジーにはありました。しかし、知能の低い魔物は人間の国にちょっかいをかけては面白がる輩ばかり。ついには戦争が始まってしまったのです。知能を持つ人間の我が国、『シュバルハ』と、筋力を持つ敵国『アルハ』。この二国がぶつかり合った結果、こちらが劣勢を保っています。そして勇者様とお兄様。お二方には、この国を救って欲しいのです。救ってくださった暁には——」
「了解! やるよ!」
話の途中で、灯が手を上げて発言した。若干、王様の隣にいる屈強そうな男がムッとしたのを見て、ハラハラする。
「ありがとうございます」
王様が頭を下げる。厳格な人間に頭を下げられるとこちらも礼をしなければと思うが、灯は一切そのようなことをしないので、僕は肩身がせまい思いをしながら灯のそばにいた。
というか、全然旅行とは違うな。まんま冒険に出ろといわれているのである。手紙にそう書いとけよと思うが、ここまできたら仕方がない——とも、思い難い。
まるで詐欺にあったかのようだ。
ノロジーに招待しますというふうな言い方をしておいて、いざきてみればノロジーは戦争真っ只中。そして挙げ句の果てにはその戦争に終結を迎えさせろと言うのだから、僕は居ても立っても居られず、王様に挙手をする。
「なんですかな? お兄様」
「帰る方法ってあるんですか?」
帰る。と言う僕の言葉を聞いて、灯がピクリとしたのが視界の端で見えた。お前は帰りたくないだろうが、僕は帰りたいんだ。もう灯には付き合っていられない。帰る方法があるのならすぐさま帰らせてもらう。ここで兄妹が仲違いしたところで知ったことではない。こちらは命がかかっているのだ。兄妹の絆より、自分の命を僕は選ぶ。
他人のために死ぬとは言ったが、現実、死ねるわけがない。
ここにきて、怒りがふつふつと湧く。だがここで王様に当たっても仕方がない。とにかく帰る方法を聞き出して、それを実践するのみ。
「はい。戦争が終結しましたら、帰りたいと申す方は元の世界に帰して差し上げます」
「…………」
今のところ、実践できる帰宅方法はなし、と。
「帰りたくないとおっしゃるのならば、あなた方を次期王として迎え入れますよ」
「二人で王様かー。なんか斬新だねー」
灯は帰りたくないようだ。次期王の席を仄めかされて浮き足立っている。王様なんてできるわけないだろ。僕らに政治なんて実際にできるはずがない。命令を下すだけの簡単な仕事と思いきや、重大な責任を負っているのは王様なんだぞ?
戦争が終わってももてなす気がないのか。いや——王という立場が、ここでは最高なのだ。
至高にして至福の立場。
それが王。
そんな王に頼み事をされて、それを断ってみろ。どうなるかは一目瞭然だ。
「支援はいくらでもします。お二方には是非、魔王、『ルーツェ』を討伐していただきたい。戦争はそれだけで終結する」
ルーツェという魔王を倒せばいいだなんて簡単に言っているが、魔王自体、筋力を持つ魔物の頂点に立つ人物だぞ。そう簡単にできるはずが……。
「やりますやります!」
「…………」
灯はなんでこうも乗り気なんだ?
自殺志願がまだ収まらないか。
「ラノベで読みましたよ、私達に能力、ついてるんでしょ?」
「ラノベ?」
王様と僕の発言が被った。ラノベとは一体なんだ?
「ラノベに注目しなくていいよ二人とも! だから、魔王を倒さなくちゃいけないんでしょ? 倒すための力、私達につけてくれてるんでしょうね」
なるほど。確かに裸一貫の僕たちでは、魔王どころか下っ端の魔物にでさえ簡単に殺されそうだ。魔物が今の僕たちに倒せるほどなら、とっくに戦争は人間が勝っている。なんて言ったっけ、シュバルハか。アルハにシュバルハが勝利しているはずである。
「なんとなんと、千里眼をお持ちかな、勇者様は。私たちは、当然、あなた方に能力を与えるつもりでしたよ」
灯の予感は的中。なんなんだ、一体ラノベとは。
「というより、すでに能力は身についているはずです」
王様のいうことに驚きつつ、灯を見る。一体どのような能力がついているのだろうか。
「ああ、大体わかるよ。いわれてみて初めて自覚した。うん。自分に能力、宿ってるわー」
灯は両手をグーパーしながら自分の体を見る。何がわかるんだ? 僕には全く自覚が持てない。
「兄ちゃんも、ほら、よく見て見なよ、自分の腰。刀がぶら下がってるよ」
そう言われて、自分の体を見る。特に腰。確かに腰には鎖が巻かれており、その先端に刀がストラップのようについてぶら下がっている。まるで帯刀しているみたいに見える。
そしてその刀は。
木製の柄と鐔が付いた、太いまな板のような形状をした木刀だった。木刀なら木刀で刀の形をしていればいいのに、形は太いまな板というこのダサさだ。僕は物としてつれてこられたからこんなにダサい刀なのだろうか。こんなのでは何も切れない。撲殺はできそうだが。重みもあるし。
「その刀に、何かしらの能力が付与されています」
「え、その能力は説明してくれないんですか?」
「わからないのですよ、どのような能力がついているのか」
では灯にもどのような能力がついているのかもわからないのか。
「灯は、どんな能力か自分ではわからないのか?」
さっき自覚したとか言っていただろう。どんな能力なんだ。
「いや、わかんない」
灯はいう。
「でも、力がすごく宿ってる感じがするの。今ならなんでもできそう!」
シュッシュッ。なんていいながらシャドーボクシングを始める灯。そして少し強く、真横に拳を突き出した結果。
拳の先が吹き飛んだ。
パンチの風圧で、宮殿の壁が崩壊したのだった。
「貴様ッ!」
王様の横にいた屈強そうな男が飛び出す。剣を抜いて。
しかしそれを止めたのは、王様の一喝だった。
「やめい!」
男が止まる。
「それが、勇者様の能力です。勇者様。使う際は、是非お気をつけて」
「は、はい。ごめんなさい」
さすがの灯も、自分のしでかした事に反省しているようだった。
パンチの風圧で壁が崩壊するとか、直撃したらどうなるのだろうか。凄まじい威力だ。それに比べて僕の刀は……。まあ、使って見ないと能力はわからないが、明らかに灯のほうが強そうだ。まるで勇者だからと言って、贔屓されているかのような……。
贔屓といえば。
僕も頭がいいというだけで、両親に贔屓されていた。
灯はこのような気持ちで過ごしていたのだろうか。僕の場合、嫉妬なんてするほどの贔屓ではないにしても。
贔屓には変わりない。
別にその事に関しては僕は悪くないけれど、強いて悪い点を挙げるなら、贔屓する両親にきちんと注意できなかったことかもしれない。
「わぁ、でもやったね。すごい強いよ、私」
これなら魔王も倒せそう! と、灯。
「そうですか。それならば、早速、冒険に出でもらいます。この紋章を」
王様が立ち上がり、灯に近づいて、紋章がはいった小さな石のついたネックレスを手渡す。
「これで、旅の資金はいりません。この紋章を持つものは王の勇者として、無償で貢がれます。飲食店などで、会計時にこの紋章を見せてください。ただになりますよ」
すごいものを渡されたな。勇者というだけで、魔王なんて倒さず、のんびりどこかで旅でもしてればいい。
しかし、魔王を倒さなければシュバルハは壊滅、その紋章も意味を持たなくなるだろうが。
魔王を倒す勇者ありきの紋章だ。
それを渡されて首につける灯。
「では、ご健闘を祈ります」
「はい、王様。必ず魔王を倒してきます」
そう言って灯は踵を返して歩き出した。宮殿の出入り口に。
「おい、どこへいく?」
僕が訊くと、張り切って灯は答える。
「魔王を倒しにだよ、さあ出発!」
「待ってくだされ! 冒険に必要な荷物をまだ渡してませんぞ」
「え、確かに!」
灯はやはり、螺子がどこかへ飛んでいる。それがシュバルハに飛んだか、アルハに飛んだか。螺子を取り戻した頃には、戦争は終わってそうだ。
意識は戻ったが、瞼を開けて起き上がるのが怖い。
目の前には未知の生命体なんかがいたりして、とか。
そんなことを考えてしまって、体が動かない。
しかし隣でもぞもぞと何かが動いたと思えば、
「兄ちゃん! 兄ちゃん!」
と、僕を呼ぶ灯の声が聞こえたのだ。起きても大丈夫なんだろうな? そう思いつつ、僕も起き上がる。
そこは宮殿のようなゴージャスな場所だった。その中央に僕らが眠っていたらしく、中央の目の前には、王様らしき人物が座っており、僕らを見ていた。
「ようこそ、ノロジーへ」
王様らしき、とはいわず、王様といっても過言ではないだろう。長い髭に黄金の王冠を頭に被っている。
「待っておりました。灯様。と、その従者」
「従者ではありません。兄です」
と、灯が反論した。王様にしてみれば、物として一緒に連れてこられている人間がいれば、それは従者に見えるだろう。それほどの扱いを灯は僕に強いているのだぞ。反論の前に自覚を持て。
「ほうほう。お兄様であったか。持って行くものを人間にするとは、様変わりな灯様だ——いや、勇者様と、そう呼ぼうか」
灯が勇者? なんだ、まるで今から冒険に出るかのような言い方は。
あの手紙を読む限り、旅行か何かで異世界へ行けるという感覚でいたのだが、そうではないのか?
「勇者様と、そのお兄様。さっそくお願いがあります」
すっかり勇者様という称号に馴染む灯。となりではデレデレとしている。
「お願いとは?」
僕が問うと、
「魔王を、倒して欲しいのです」
王様はそういうと、世界の情勢を語り始めた。
「ノロジーは、人間と魔物が共存する世界です。人間は一つの国として、魔物も一つの国として。二つの国がノロジーにはありました。しかし、知能の低い魔物は人間の国にちょっかいをかけては面白がる輩ばかり。ついには戦争が始まってしまったのです。知能を持つ人間の我が国、『シュバルハ』と、筋力を持つ敵国『アルハ』。この二国がぶつかり合った結果、こちらが劣勢を保っています。そして勇者様とお兄様。お二方には、この国を救って欲しいのです。救ってくださった暁には——」
「了解! やるよ!」
話の途中で、灯が手を上げて発言した。若干、王様の隣にいる屈強そうな男がムッとしたのを見て、ハラハラする。
「ありがとうございます」
王様が頭を下げる。厳格な人間に頭を下げられるとこちらも礼をしなければと思うが、灯は一切そのようなことをしないので、僕は肩身がせまい思いをしながら灯のそばにいた。
というか、全然旅行とは違うな。まんま冒険に出ろといわれているのである。手紙にそう書いとけよと思うが、ここまできたら仕方がない——とも、思い難い。
まるで詐欺にあったかのようだ。
ノロジーに招待しますというふうな言い方をしておいて、いざきてみればノロジーは戦争真っ只中。そして挙げ句の果てにはその戦争に終結を迎えさせろと言うのだから、僕は居ても立っても居られず、王様に挙手をする。
「なんですかな? お兄様」
「帰る方法ってあるんですか?」
帰る。と言う僕の言葉を聞いて、灯がピクリとしたのが視界の端で見えた。お前は帰りたくないだろうが、僕は帰りたいんだ。もう灯には付き合っていられない。帰る方法があるのならすぐさま帰らせてもらう。ここで兄妹が仲違いしたところで知ったことではない。こちらは命がかかっているのだ。兄妹の絆より、自分の命を僕は選ぶ。
他人のために死ぬとは言ったが、現実、死ねるわけがない。
ここにきて、怒りがふつふつと湧く。だがここで王様に当たっても仕方がない。とにかく帰る方法を聞き出して、それを実践するのみ。
「はい。戦争が終結しましたら、帰りたいと申す方は元の世界に帰して差し上げます」
「…………」
今のところ、実践できる帰宅方法はなし、と。
「帰りたくないとおっしゃるのならば、あなた方を次期王として迎え入れますよ」
「二人で王様かー。なんか斬新だねー」
灯は帰りたくないようだ。次期王の席を仄めかされて浮き足立っている。王様なんてできるわけないだろ。僕らに政治なんて実際にできるはずがない。命令を下すだけの簡単な仕事と思いきや、重大な責任を負っているのは王様なんだぞ?
戦争が終わってももてなす気がないのか。いや——王という立場が、ここでは最高なのだ。
至高にして至福の立場。
それが王。
そんな王に頼み事をされて、それを断ってみろ。どうなるかは一目瞭然だ。
「支援はいくらでもします。お二方には是非、魔王、『ルーツェ』を討伐していただきたい。戦争はそれだけで終結する」
ルーツェという魔王を倒せばいいだなんて簡単に言っているが、魔王自体、筋力を持つ魔物の頂点に立つ人物だぞ。そう簡単にできるはずが……。
「やりますやります!」
「…………」
灯はなんでこうも乗り気なんだ?
自殺志願がまだ収まらないか。
「ラノベで読みましたよ、私達に能力、ついてるんでしょ?」
「ラノベ?」
王様と僕の発言が被った。ラノベとは一体なんだ?
「ラノベに注目しなくていいよ二人とも! だから、魔王を倒さなくちゃいけないんでしょ? 倒すための力、私達につけてくれてるんでしょうね」
なるほど。確かに裸一貫の僕たちでは、魔王どころか下っ端の魔物にでさえ簡単に殺されそうだ。魔物が今の僕たちに倒せるほどなら、とっくに戦争は人間が勝っている。なんて言ったっけ、シュバルハか。アルハにシュバルハが勝利しているはずである。
「なんとなんと、千里眼をお持ちかな、勇者様は。私たちは、当然、あなた方に能力を与えるつもりでしたよ」
灯の予感は的中。なんなんだ、一体ラノベとは。
「というより、すでに能力は身についているはずです」
王様のいうことに驚きつつ、灯を見る。一体どのような能力がついているのだろうか。
「ああ、大体わかるよ。いわれてみて初めて自覚した。うん。自分に能力、宿ってるわー」
灯は両手をグーパーしながら自分の体を見る。何がわかるんだ? 僕には全く自覚が持てない。
「兄ちゃんも、ほら、よく見て見なよ、自分の腰。刀がぶら下がってるよ」
そう言われて、自分の体を見る。特に腰。確かに腰には鎖が巻かれており、その先端に刀がストラップのようについてぶら下がっている。まるで帯刀しているみたいに見える。
そしてその刀は。
木製の柄と鐔が付いた、太いまな板のような形状をした木刀だった。木刀なら木刀で刀の形をしていればいいのに、形は太いまな板というこのダサさだ。僕は物としてつれてこられたからこんなにダサい刀なのだろうか。こんなのでは何も切れない。撲殺はできそうだが。重みもあるし。
「その刀に、何かしらの能力が付与されています」
「え、その能力は説明してくれないんですか?」
「わからないのですよ、どのような能力がついているのか」
では灯にもどのような能力がついているのかもわからないのか。
「灯は、どんな能力か自分ではわからないのか?」
さっき自覚したとか言っていただろう。どんな能力なんだ。
「いや、わかんない」
灯はいう。
「でも、力がすごく宿ってる感じがするの。今ならなんでもできそう!」
シュッシュッ。なんていいながらシャドーボクシングを始める灯。そして少し強く、真横に拳を突き出した結果。
拳の先が吹き飛んだ。
パンチの風圧で、宮殿の壁が崩壊したのだった。
「貴様ッ!」
王様の横にいた屈強そうな男が飛び出す。剣を抜いて。
しかしそれを止めたのは、王様の一喝だった。
「やめい!」
男が止まる。
「それが、勇者様の能力です。勇者様。使う際は、是非お気をつけて」
「は、はい。ごめんなさい」
さすがの灯も、自分のしでかした事に反省しているようだった。
パンチの風圧で壁が崩壊するとか、直撃したらどうなるのだろうか。凄まじい威力だ。それに比べて僕の刀は……。まあ、使って見ないと能力はわからないが、明らかに灯のほうが強そうだ。まるで勇者だからと言って、贔屓されているかのような……。
贔屓といえば。
僕も頭がいいというだけで、両親に贔屓されていた。
灯はこのような気持ちで過ごしていたのだろうか。僕の場合、嫉妬なんてするほどの贔屓ではないにしても。
贔屓には変わりない。
別にその事に関しては僕は悪くないけれど、強いて悪い点を挙げるなら、贔屓する両親にきちんと注意できなかったことかもしれない。
「わぁ、でもやったね。すごい強いよ、私」
これなら魔王も倒せそう! と、灯。
「そうですか。それならば、早速、冒険に出でもらいます。この紋章を」
王様が立ち上がり、灯に近づいて、紋章がはいった小さな石のついたネックレスを手渡す。
「これで、旅の資金はいりません。この紋章を持つものは王の勇者として、無償で貢がれます。飲食店などで、会計時にこの紋章を見せてください。ただになりますよ」
すごいものを渡されたな。勇者というだけで、魔王なんて倒さず、のんびりどこかで旅でもしてればいい。
しかし、魔王を倒さなければシュバルハは壊滅、その紋章も意味を持たなくなるだろうが。
魔王を倒す勇者ありきの紋章だ。
それを渡されて首につける灯。
「では、ご健闘を祈ります」
「はい、王様。必ず魔王を倒してきます」
そう言って灯は踵を返して歩き出した。宮殿の出入り口に。
「おい、どこへいく?」
僕が訊くと、張り切って灯は答える。
「魔王を倒しにだよ、さあ出発!」
「待ってくだされ! 冒険に必要な荷物をまだ渡してませんぞ」
「え、確かに!」
灯はやはり、螺子がどこかへ飛んでいる。それがシュバルハに飛んだか、アルハに飛んだか。螺子を取り戻した頃には、戦争は終わってそうだ。
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