妹、異世界にて最強

海鷂魚

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四話

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 宮殿を出るが、宮殿の敷地内には様々な建物がある。どれも異国で見たことのあるような建物ばかりだ。しかし、そりゃそうかとも思う。
 異世界にも人間がいるのだ。皆同じような発明もするし開発もする。しかし、魔物がいるかどうかでそうとう技術力の進歩の仕方も違いそうだが。
 なにがちがうのかはわからないのでスルー。多分材質が強固になっているとかそういう感じじゃないか? 魔物に攻められても壊されない建物。そう言ったものが多いのではないだろうか。
 それにしたってさっき灯がぶっ壊したばかりだが。
 いささかこの世界の技術力に不安が残る。いや、灯が強いだけか。
 しかしこの強い妹、灯がいれば旅は安泰しそうだ。魔王なんて一撃でぶっ飛ばしちゃったりして。
 なんて、浮かれた気持ちで、旅の荷物が揃っているという部屋についた。
「地図、コンパス、寝袋、防寒グッズなど」
 異世界にも違和感なくある、見慣れた物たち。
 異世界異世界いうけれど、隣国の中国とか韓国とかの方がよっぽど異世界だな。ここじゃ言葉通じるし、日本語で言語が統一されている。文字もそうだ。旅グッズにはメーカーと思われる名前が日本語で羅列してある。ただ、それが『ルーキュ』。だったり、『ヘベラ』だったり、初めて聞く発音の言葉が多いのは確かだ。
 異世界は異世界で、異世界をやっている。
 ただ、言語については謎だ。言語が同じということは文化も同じでなければ矛盾が生じるだろう。しかし、建物を見ても日本と文化が同じだとは思えない。その矛盾はなんなのだろうか。
「すいません」
 王様はもう僕らのそばにはいない。案内を担当する者が僕らを導いている。
 その男に声をかけた。
「座敷って知ってます?」
「いや、知らないですね。なんですかそれ?」
 言語は統一されているのに文化が違う事による矛盾。これは一体どう解消すればいい? 異世界パワーとかそういう、僕らの未知なる力が働いているのか。
 未知といえば。
 召喚される時点で色々未知だ。
 考えてもキリがなさそうなので放っておく。そんなことより、旅に必要な道具の使い方などを現在進行形で説明されているので、それを聞かないと。
「——と、いうわけです。わかりましたか?」
 使い方講座を終えた男がこちらを見る。まあ、だいたい見れば使い方はわかる。言語も同じであれば概念や物質も同じであるらしい。ただし事細かく辿れば文化は違う。一体どうなっているんだ。放っておくにも気になるな……。
「よし、じゃあこのリュック背負ってここを出ればもう冒険の始まりだね」
「そうです。そのリュック重くないですか?」
「重くないよー」
 灯と男がそんな会話を交わす。リュックに至っては日本語ではない。ドイツからやってきた外来語だぞ。なぜ通じる?
 ああ! 頭がパンクする!
 もう考えるのはよそう。旅に出るんだ。魔王を倒すんだ。その事に専念しなければ。
 魔王を倒す。
 やっつける。
 そんな可愛い言い方をすれば済むかもしれないが、やることは殺害だ。
 敵を殺す。殺さなければならない。
 異世界というだけでも精神が崩壊しそうなのに、何かを殺さなければならないだなんて非日常に、僕は耐えられるだろうか。
 この異世界だって、異世界の国の王が優しくしてくれたからなんとか今ここに立っていられるのだ。これが人間に対して悪意の塊を放つ魔物と対峙してみろ。
 死ぬほど恐ろしい。
 死んでしまいそうだ。
「兄ちゃん、怖い?」
 灯が僕の顔を覗く。気づいたら俯いて歩いていた。
「下向いてたって、お金落ちてないよ? というか紋章あるんだし全部タダじゃん。楽して生きようぜ」
「はぁ、お前なぁ」
 なんでそんな気楽なんだよ。
 そう言いたかったが、すんでのところでやめる。
 そういえばこいつ、自殺志願者だった。
 死ぬほど、人間界を嫌ってた女子中学生なんだ。
 そんな人間界を離れてノロジーにやってきたとなれば、自殺が果たされたと言っても過言ではない。
 そりゃ嬉しいか。
 僕は訳のわからないまま死んだようなものだ。現世に未練がある。
 しかしそれを灯に伝えてどうなる。
 喧嘩になるだけだ。
 理解し合えない者が近づいたって、起こるのは戦争だ。今のシュバルハとアルハのように。
「では、お気をつけて」
 宮殿の門を出たところで、男に礼をされる。召喚するだけしてほったらかしか。軍隊くらい同行させたっていいだろ、ないのかこの世界には。軍隊。
「行ってきまーす!」
 元気な灯に引っ張られ、歩く。トボトボ歩く。
「なぁ、どこに向かってんだ?」
「ここが首都。王都って言ってたから、そこからアルハの本拠地まで直行! この方角で正しいよ。色んなとこで保存食いっぱい買っとこう。シュバルハの食べ物とアルハの食べ物じゃ違うだろうし」
「歩いてか?」
「だって車とかないでしょ?」
 確かにない。
「はぁ……」
 何も言い返す気にならない。疲れた。もう疲れたくない。
 そのまま徒歩を決行した。
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