妹、異世界にて最強

海鷂魚

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五話

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 歩いて何時間経っただろうか。町では馬車が走るのを横目で流し見しつつ、僕は歩いていた。
 僕らは歩いていた。
 馬、この世界にいるのか。
 ならば他の動物もいる可能性があるな。だからか、ここの世界の食事はどれも美味しかった(飲食店のメニュー欄にも『焼き鳥』など書いてあったが、鳥が鳥だとは信じていなかった。首が三つある怪鳥とか想像していた)。
 時計は王様との顔合わせの後に、旅グッズの中に入っていたので時間を把握しているが、現在は午後二時。宮殿を出発したのは午前十一時。昼休憩を入れても、二時間半は歩いていた。
 馬車があってなぜそれを利用しないのか。それには僕の自暴自棄があった。
 もうなんでもいいや。
 どうなってもいいや。
 そう思って、苛烈な徒歩に身を任せ、疲労しているのだ。
 自分をいじめたくなったから、いじめている。
 それともう一つ。
 灯の超元気だ。超がつく元気であるのだ、この妹。
 張り切って張り切って張り切って張り切って。
 そうして灯は歩いている。馬車も目に入っているだろうが、灯は頭の螺子がないのでその馬車を使うという簡単な事に気づかない。
 なので、歩いている。
 会話もない。いや、言葉は聞こえてくる。超元気な灯が一人でぺちゃくちゃずっと喋っている。僕に空返事されようが無視されようが、ずっと。
 喧しい。
 とは思いつつ、自暴自棄な僕はそんなことをお構い無しに歩いているのだった。この不愉快なやかましさも、僕をいじめる材料になる。なるが、灯の一言で、僕の興味が引かれる事になったのは、僕が完全に、自殺志願者になったわけではなかったからだ。
 希望を見つけた。
 それが、
「あー、こういう冒険といえば、仲間だよね。魔法使いだったり、僧侶だったり。この世界にいるかはわからないけど」
 仲間。仲間がいる。それはとても心強い事である。
 もう台無しになったが、受験を目前にした僕だ。共に学問を共有する仲間がいた。共に勉強してくれる仲間がいた。
 仲間の心強さを知っている僕にとって、仲間というのは希望の光に見えた。
 魔王を倒すに値する、その力が。
 仲間が集うことによって、光り輝くのではないか。
 しかし、
「……どこで仲間なんて見つけるんだよ」
 と、僕は思うのであった。
 仲間なんてそうそう見つかるわけではない。灯の言っていることはゲーム内での話ではないだろうか。仲間を集めて旅をする。挙げ句の果てには魔王を倒す——それがRPGなどと呼ばれる部類のゲームなのは知っている。
 僕も多少はかじっていたからだ。
 かじっていたから、わかることもある。
 勇者が仲間を引き連れて歩けるのは、ゲームだからだ。
 お互いの関係性を画一的な無にして、一から関係を築くとなると、相当の手間と時間がかかる。兄である僕ともまともにコミュニケーションがとれない灯に、コミュニティを築き上げ、仲間と絆を深めるという芸当は、おそらく不可能に近い。
 というか、無理ではないだろうか。
 学校でもいじめにあっていたことを示唆していた灯だ。また異世界でいじめにあうぞ。
 なんて、兄として妹を気遣ってみるが、僕としては、仲間という存在が大きい事にも気づいている。
 欲しいよなぁ、仲間。
 だけどやっぱり、ゲームとは違う。
 いくら僕らにとってこの世界——ノロジーがファンタジックとはいえ、ここの世界はゲームではない。システム的に仲間は増えないし、できない。
 だから僕は灯にどこで仲間なんて見つけるのか訊いたのだった。
「うーん。強そうな人に声かけて仲間になってもらうしかないよね」
 だからそれが難しくてお前には無理なんだっていうの。
「…………」
 とは言わない。
 それには、やっぱり仲間が欲しい。仲間がいれば魔王を打倒できるのではという僕の希望的観測があるからだ。
 何かしらの方法で仲間を集めるしかない。
 しかしどうやって。一体どこに灯の言う、『強そうな人』と出会えると言うのだろうか。
 勇者は灯なのだ。灯にこそカリスマ性がなければならない。僕にカリスマ性が発揮されたところでなんの意味もないのだ。
「すみませーん」
 目を離した隙に、灯が見知らぬ婆さんに声をかけていた。
 あのヨボヨボの婆さんが灯には強そうに見えたのだろうか。僕にはとてもじゃないけれど、あの婆さんに戦力は期待できない。
「ギルドやパーティーに入りたいんですけど、集会所とか詰所みたいなところってありますか?」
 ゲームを少しかじっていただけの僕には、到底できない発想だった。
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