妹、異世界にて最強

海鷂魚

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十一話

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 いざ入浴するぞとなった時、僕は鎖から解き放たれた。必要な場合だけ命令を聞くようにできているらしい。居間で外そうとした時は外れなかったが、脱衣所で外そうとした時に外れた。
 必要不必要に応じるのは便利というか。
 有能な刀だ。
 そう思うと同時に、不便でもあった。
 この刀、結構重い。持って振れないほどの重さではないが、推測するに二キロ前後のものがずっと腰にぶら下がっているのはかなり負担になる。風呂で解放されて初めて実感する。腰に巻かれていた間、あの鎖がどれだけ僕の体に負荷をかけていたか。
 それを自由に外したりできないのは、やはり不便だ。
 しかしそのぶん、風呂は極楽であった。
 湯船に浸かると、全ての疲れが体から抜けていく。そんな感覚がする。
 伸びをしてみたりして風呂を満喫。シャンプーもボディーソープも元の世界と大差なかった。
 時代が後退した異世界であれば、ここまでの清潔感は保てないだろう。感謝感謝。
 ん? 別に時代が進んだ異世界に行けたことに感謝はいらないよな……。元の世界に僕は帰りたいんだし。
 いよいよ慣れも過ぎて毒されてきた。
 いかん。と、顔を湯で洗う。しばらくの間激しくバシャバシャと顔を洗って、脳内がスッキリした感じがする。
 やっと冷静になって物事を考えられてきた。
 そんな感じ。
 風呂の間も、灯にテレパシーはなかったようだ。
 何が悪いんだろうな。あの募集。
 ……色々か。
 全部悪かったりして。そしたら最悪、強引に灯を言い負かすしかない。そして新しいギルドを設立して人を待つ。
 実際のところ、灯は強いかもしれない。魔物なんて一発でぶっ飛ばして、魔王は二発でぶっ殺して。そんなことができるかもしれない。そしたら二人でアルハに向かえばいいけれど、できなかった場合。
 魔王を殺すのに三発以上灯の拳を使う場合。
 それが怖い。
 魔物や魔王は戦争を経験していて、経験していなくても、魔物と呼ばれるぐらいだ。戦闘にも優れているのではないだろうか。
 そんな相手に少しでも遅れを取れば、それは一瞬で自らの死に直結する。
 灯も、強いだけだ。殴り合いの喧嘩なんてしたことないだろうし、それが殺し合いになればなおさらだ。
 そんな状態で実力が拮抗、あるいは魔王の方が強ければ、こちらの敗北は確定する。
 敗北とは、即ち死。
 灯は女の子だから、男たちに惨く扱われてから死ぬかもしれない。
 それではダメだ。だから仲間が必要なのに。
 一向に誰もテレパシーを送ってこない。
「風呂で考え込んでてもダメだ……」
 声に出して、自分に言い聞かせる。
 灯は信頼すべき、愛すべきパートナーである。灯と相談して、この世界を生き抜かなければならない。
 もしもシュバルハがアルハに敗戦したら、勇者の紋章も意味がなくなる。それがなければこの異世界で、ノロジーにとっての異世界放流者である僕たちに生きていくすべがなくなる。
 帰る方法も、王様から授かれない。
 まだゆっくりしていたかったが、焦った僕は一刻も早く灯と作戦会議をしなければならないと思い、ゆっくりしている暇はないと、風呂を出た。体を拭き、作戦会議を除けば歯を磨いて寝るだけなので、部屋に置いてあったから持ってきたパジャマを着た。大きさもちょうどいい。
「灯! 作戦会議だ!」
 今を開けると、ソファに灯がいた——いたが、眠ってしまったようだ。肘掛に頭を乗せて横になっている。
 寝ている場合か。と言いたいところだが、寝ている灯を見ていると、なぜか安心してしまった。理由はわからないが、癒された。
 焦りは禁物というし、今日は作戦会議だなんてしなくてもいいか。また明日にすればいいか。
 灯も寝ていることだしな。
「なんていうとでも思ったか! 起きろ灯! 寝るなら歯を磨いてベッドで寝ろ!」
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