妹、異世界にて最強

海鷂魚

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二十一話

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「オールラからアルハまで二日。アルハの端からアルハの王都まで五日。計一週間。それだけの食料は集まりましたな。全て保存食なので味の保証はありませんが……。まあ、これだけ揃えばいいですな」
 ヴィルランドールさんが、灯とシロとクロが持って帰った大荷物を見て言った。僕とシバリアさんは非力なので、何十キロという食料を持つ係はこの三人にした。
 そして、オールラでは馬小屋と並列して展開する宿があったので、そこでの集合となった。集合してからのことといえば、馬小屋の裏に止めておいた馬車に、大荷物を荷室に詰め込む作業に随分骨を折った。
「いやー、ギリギリだねー」
 荷室には詰め込めるだけ詰め込んだ。ぎっしり。隙間なく。荷室の扉が閉まってよかった。と、言えるくらいには、詰め込んだ。
「でも入ってよかった。……外もすっかり暗くなったな。宿に戻ろう。女子と男子で別れて部屋を確保してるから、安心して」
「よかったわ。むしろ部屋が一緒じゃとお主を引っかいておる」
 シロにゾッとすることを言われつつ(シロの力で引っ掻かれたら切り傷じゃ済まないだろう。皮ごと捲られる)、宿へ。
 馬小屋の近くを選んだので(営業主は同じなので、近くというか、宿と馬小屋は同じ場所にある)、宿の高級感に関しては、言及していない。
 普通の宿だ。別に何の変哲も無い。
 そこで夕飯を食して、女子は灯シバリアシロクロの四人で寝てもらい、男子であるこちらは青志ヴィルランドールで寝る。六人の宿泊だが、勇者の紋章でもちろん無償。駄洒落みたいになるが、本当にこれには助かっていた。
 なんせ僕と灯は無一文である。シバリアさんとヴィルランドールさんは多少持ってそうだが、シロとクロに至っては荷物さえ持っていない。服さえも。
 あの二人は全裸である。胸部にブラジャーみたいな毛が覆われており、下半身にはホットパンツのような形状で毛が生えそろっていた。
 あれファーだと思っていたけれど違ったのか。と、事実を知らされた時は衝撃を受けた。裸の女の子(可愛い)が身近にいるのだと思うといてもたってもいられなくなるが、肝心な部位は完全に見えなくなっているので、気持ち的には平常を保っていられるのだった。
 生殖器などの配慮をすれば、足を大きく広げたりすれば見えるということでありそうだが。
 まあそんな機会はないので、つまりは見えないということである。
 以上、大浴場で風呂に入りながらの考察でした。
 こんなんで平常心保ってられるか! 大浴場だけに!
 さっさと風呂から出て明日のために寝よう(歯磨きも忘れずに)。
「あっ。どうも」
 風呂を出ると、脱衣所でヴィルランドールさんとすれ違った。
 お互い裸である。
 気まずい……。
 別に何も隠す事情はないのでいいのだが、僕少年はまだ思春期を卒業するかしないかのところで生活している。人に裸を見られるのは恥ずかしい。
 というか、大人になっても裸を同性にも見られるのが恥ずかしい人はいるのではないだろうか。その人が思春期だと言ったらそれは違うし。僕のこの羞恥心も、一概に思春期だからとは言いにくい。
「湯はどうでしたか」
「おわっつ!」
 すれ違い様で訊くので、止まって答えるために少しこけそうになった。
「いや、いい湯加減でしたよ。お風呂も独創的な形の湯船で入ってて楽しかったです」
 この感想は僕こと異世界人のものなので、湯加減以外はヴィルランドールさんに役立つことはないかもしれない。
「ありがとうございます」
 そう言って、ヴィルランドールさんは浴室に消えて行った。
 僕は脱衣所で着替えてから(寝室に置いてあったパジャマ。どこの宿にでもパジャマを置いてくれていて優しいサービスである)、歯磨きをしに洗面所に。すると小さな洗濯機が置いてあった。
 そろそろ今着ている私服を洗濯にだすなりしないとなー。と、思ってるところに、それが置いてあったので、これはよかった。僕は自分の服を下着まで洗濯に出した。現在ノーパンツでパジャマのズボンを履いているが、誰の前でもズボンは脱がないのでそこは問題なし。
 ノロジーの物は便利なことが多い。この洗濯機も無音で回っている(洗濯機の蓋が全面透明なので回っているのは見える)。またまた異世界の物に感心しつつ、歯磨きを続行していると、ピーという音が洗濯機から鳴った。
 なんだ? エラーか? 僕には再開の仕方がわからないぞ。と思いつつ洗濯機を恐る恐る覗き込むと、透明な蓋に半透明な緑の文字が浮かび上がっており、『洗濯完了』。と、そう書いてあった。
 近未来的(異世界的)な文字の表記に驚きつつも、洗濯の早さに驚いた。あ、でもしまったな。干す場所も物もないや。
 ハンガーどっかに置いてないかな~。
 なんて言いつつ、どこにもないので、とりあえず洗濯物を取り出した。すると驚くべきことに、服が全て乾いているのだ。
「すげえ……」
 と、声に出るほど。
 それほど感心した。
 元の世界の不便なところが全て便利になった世界がここにある。
 とりあえず洗濯が済んだのならパンツを履き、途中だった歯磨きを済ませ、さっさとベッドに入るのだった。部屋はヴィルランドールさんと同じなので、部屋の電灯は消さないで寝ることにした(ヴィルランドールさんにも先に寝てていいと言われている。彼は長風呂が好きみたいだ)。僕は眠りが良い方なので、電気がついてても、多少の物音でも起きることはない。さすがに僕を起こす目的の音が立てられたら起きるが。
 明日からいよいよ、本格的に旅路につくことになる。
 魔物と出会うだろう。そして出会ったからには戦わなくてはならない——殺さなくてはならない。
 それが唯一の、心に引っかかることだった。
 戦争なんて、話し合いで解決されればいいのに。そんな夢のあることを思いつつ、自分でも夢であると——譫言であると自覚しているのに気づいて、自己嫌悪した。
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