ストロベリー

海鷂魚

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四話「本性」

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「ここです」
 車で何時間走っただろうか。周りはすでに暗くなっており、着いたのは山奥の小さな小屋だった。
「そこにいます。小屋の中から音も聞こえます。確実にこの小屋にいます」
 小屋から数百メートルは離れてあるはずだ。小屋を見つけてから随分バックしたのだから。それでもその小屋からの物音を察知できる苺は、そう言った。
「よし、突撃。どんな手段でもいい。絶命させて帰ってきて」
「わかりました」
 そう言って苺は車を出た。
 そして、跳んだ。
 目にも留まらぬ速さで飛び上がった。先ほどまで立っていた地面は割れ、凄まじい音とともに飛び上がる。着地地点は、小屋。
 小さな小屋だ。運が良ければ着地した苺や瓦礫で勝手に死んでくれる。
 そして一秒で小屋に着地。小屋は粉々に吹き飛んだ、轟音とともに。
「…………」
 瓦礫と土煙の中、生命反応を探す苺。
「!」
 直前だった。直前で回避できた。
 重明が背後から刀を振りかぶってきたのだ。
 瓦礫の中から外へ飛び出す。小屋の前はちょっとした広場があった。そこに着地した。
「へへっ。避けられちまったか」
「奇跡的に私と瓦礫から避けられたのですね」
「いいや、当たったよ」
 男は言う。
「瓦礫超いてえ」
 46歳とは思えない言葉遣いだ。と、苺は認識する。認識するだけで何かを思うわけではない。
「けど、その程度じゃあ俺は死なねえ。かかって来な、お嬢ちゃん」
 ノーリアクションで飛びかかる苺。まっすぐに男の元へ向かい、左足で踏み込み、右手の拳を男に向ける。その間一秒にも満たない。だが、男はその高速ストレートを、持っていた刀で防いだ。
 防いだ男の足元の地面が割れる。それほどの威力だ。だが、それを防ぎきった。なぜだ?
「その刀に秘密がありますね」
「当たりィ!」
 重明の反撃。刀を右横から左に振る。それを高跳びの要領で苺は避け、逆さの状態から両手を地面に着き、回転。男の首筋を狙って蹴りを繰り出す。それも刀で避けられた。
 後ずさりする重明。
「知ってたけどあんた、やっぱりすげえな。刃で防いでも怪我一つしねえなんてなー」
「あなたの刀は、刃こぼれを始めていますよ」
「そりゃそうだ。まだお前ら・・・・・に勝てる技術じゃねえ。だが、俺は負けねえ」
 次で決める。と、重明。
 苺はまた正面から全速力で突っ込んだ。その凄まじいストレートで、重明の防ぎの構えは崩れた。
 刀を折られ、拳が体に直接突き刺さる。その威力で重明の上半身は飛散した。
「…………」
 苺は重明のバラバラになった肉片と、ポツンと落ちている下半身を一瞥。死亡したと確認し、刀を持って渚の元へ帰ろうとした。が、それは叶わなかった。刀が灰となって風に流され消えたからである。
 苺は急いで渚の元へ戻った。
「先ほど、野村重明を殺害しました。しかし、あれはただの人間ではありません。私と同じ人造人間か、別の、全く新しい技術で作られた人間です。驚異的な戦闘力を持ち、刀を武器にした強者でした」
 と、苺と重明の間で戦闘があったことを伝えた。
「そうか。死体を見に行こう。何かわかるかもしれない。刀にも何かあるかもね」
「しかし、刀が灰になって消えてしまったんです。回収のしようがありませんでした」
「なるほど」
 いいつつ車で移動。瓦礫が散乱する広場に着いた。暗いので何も見えない。この中で戦っていたのか、二人は。渚は驚愕しつつ、車のヘッドライトで死体を照らす。そして検分したが、普通の死体だとしか言いようがない。
「ただの人間にしか見えないけれど、これが僕の知らない謎の技術でそう見えるだけかもしれない。まさか人造人間と渡り合う人間がいるとはそう思えない」
 結局はその人間に人造人間苺は勝っているが。
 そう言う問題ではない。
「しかも彼、私たちを知っているようでもありました」
「チャリティーとして殺しを担ってきてきたけれど、とうとう悪いやつにはめられたか。僕たちも殺し屋として、裏社会では名前を轟かしているところもあるし」
 そして渚は立ち上がる。
「死体、隠したほうがいいだろうけど、この瓦礫まで隠せと言われても無理だな……。どうせろくな証拠はないしこのまま放っておくか。あっ、車のタイヤ痕でバレるかな。まあいいか。警察にも根は張ってある。逮捕される心配はないや」
 あとで知り合いの警察に電話しておくよ。と、渚。
 二人はその場を後にした。
 野村重明……一体彼は何者だったのか。そして気まぐれで行った喫茶店にいたあの男は……。
「大丈夫大丈夫。気にしなくていいよ。僕には苺がいるし、苺には僕がいる。エナジードリンク飲んであるなら寝ずにいるかい?」
「はい。一応」
「自宅、バレてんのかなぁ」
「ですので起きて見張っておきます」
「ありがとう。頼むよ」
 気楽な渚に疑問を持つことはない苺だが、
(あの喫茶店にいた男。あいつは危険だ)
 苺は一切の警戒を怠らずに、車に乗っていた。
 渚は全く気楽に、鼻歌交じりで車を運転するのであった。
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