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六話「作戦会議」
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一ヶ月、見回りをしても何も起こらなかった。それはつまり、見回りをしている自分を見ている何者かがいるということ。
苺はそう結論づけると、ならば現在、家事に追われている自分も見られているのではないかという考えに結びついた。
その『嫌な予感』は的中。自宅を襲撃された。一ヶ月前に殺害した野村重明のような男が、爆発とともに上から降ってきて、刀を振り回すのだ。
その動きの速さに驚愕しつつも勝利。やはり刀は灰となって消えた。渚に死体を見てもらっても、『ただの人間』という結論以外が出ない。
一体何者なのか。全く見当のつかない相手と向かい合っている。
煙のような。
ゴーストのような。
一体私たちは、なにに巻き込まれたのか。
機械の脳を持った苺にしても、それは不明だった。
「まあでも、やっぱりなにかしらの組織だよね」
渚は言う。相変わらず余裕の表情で。
「攻められてばかりも面白くないから、攻めようと思うんだけど、どうかな」
「そんなことができるんですか?」
「まあ、考えはある」
作戦会議をしているここは研究室ではない。自宅は半壊しているので、現在工事中なのだ。それで現在はホテルに在住している。渚は研究室のことを気にかけていたが、誰にも開けられないよう、壊されないように作り上げた研究室を信頼し、家を出た。
ホテルのベッドはシングルが二つ。それに座って向かい合って話をしている。
「襲ってくるやつって、なんで襲ってくるんだと思う?」
「私たちを殺すため、でしょうか」
「普通に考えたらそうなんだけど、そうじゃないとしたら。何か目的があるとしたら」
「……どう言った目的が?」
「さあね。君でも想像するだけしてごらん」
「1200個くらいの候補が出てきました」
「さすがは機械の脳を持つ人造人間だ。だがそこから推理をしつつ候補を絞らなくてはいけない」
推理というほどのことをするわけではないけれどね。と、渚。
「今まで苺は襲われると反撃して殺したよね? それをやめてみたらどうだ?」
「殺されろと?」
「いやいや、今までの戦闘でも結果は出ているじゃないか。敵の刀では、敵の尋常じゃない身体能力を持ってしても、お前に傷一つ付けられないじゃないか」
言われてみればそうである。
野村重明。名も知らぬ男。この二人は共通して刀を持ち、普通ではない身体能力を発揮してきたが、それで苺が怪我をすると言うことはなかった。
刀の攻撃は全て、苺の肌で受け止められている。
それが苺の力なのだ。
「だから、喫茶店の男、野村重明と家を半壊させたやつ、この3人が繋がっているとしたら、自分たちの攻撃じゃ苺を撃破できないことくらい、情報共有していると思うんだよね。でも二度目も同じ手口と戦闘方法でやってきた。二度あることは三度ある。三度目も同じようにやってきたら、苺は降参して、敵の目的を聞くんだ」
いい考えだろう? と、自慢げに言うにはいい考えだ。機械の癖して——いや、機械だからこそ、攻撃されたら反撃するという単純な行動に移っていた。それ以外に考えられなかった。
反撃をやめる。
苺にしたら、自殺行動もいいところであるが。
確かに敵の能力では自分を倒すことは難しいだろうなとも、そう思う。
「いいですね。そうしましょう。ですが、相手の目的が私たちの殺害であった場合は?」
「全力で戦う。勝ち続けていけば敵も戦力が尽きる。そうなるまでやり合うのさ」
そもそも、渚が殺しという重罪な仕事をチャリティーで行うのは、苺という失敗作を、失敗作なりに、全力で使いたいからである。
失敗した機能を活用したい。
そのために殺しを無料で担うのだ。
そういう目的がある渚にとって、今回の敵のような相手は、絶好の検体とも言える。
だから全力で戦うことを選んだ。
「渚さんがそうおっしゃるなら、私はそれに従うまで。では、次の襲撃を待つしかありませんね」
「ああ。ただ、敵の能力が苺より劣っているだけで、僕、青鷺渚と比べると、敵の方がはるかに強い。僕の護衛は忘れないでね」
「はい。わかりました」
「だからと言ってガチガチに護衛しちゃダメだ。相手が遅いづらくなる。だからカバーできるだけの隙を作りつつ、敵を待つんだ」
「はい。わかりました」
「そうそう、ちょうど今みたいに、見回りも何もしてない状態で——」
と、言いかけたところで。
二人は作戦会議を中断せざるを得なかった。
「青鷺渚——苺さん。こんばんは」
高層ビルディングのホテルに宿泊している渚と苺がいるここは、百十六階。とても——
「人が窓から侵入できる高さじゃないよね。どうやってきたのかな」
窓を外側から器用に開けた男は、窓辺に腰掛けていた。
先ほど言われた通り、何も考えずに敵は殺さない。しかし、苺のポジショニングは背後に渚を置くということに、なんら変わりなかった。
「いーい警戒です。私たちは青鷺渚を狙っているのだから、当たり前の防衛です」
男は言う。座りながらなので、とても余裕が見える。今までの敵と同じならば、この男も大した力を持っているはずはないのに。
『私たち』とも言っていた。つまりは団体行動をしている、組織として動いていると捉えてもいい。しかし本当に情報共有がなされていないのだろうか? なぜこんな余裕で、平然と喋ってられるのだろうか。
「僕が目的かい。僕で何がしたい?」
「それを教えるほど、この世界は甘くないのですよ。青鷺渚。とりあえずまあ、そこの苺さんでも殺して、青鷺渚には同行してもらいますね」
男は立った。
たったの一人で、苺を殺すべく。
苺はそう結論づけると、ならば現在、家事に追われている自分も見られているのではないかという考えに結びついた。
その『嫌な予感』は的中。自宅を襲撃された。一ヶ月前に殺害した野村重明のような男が、爆発とともに上から降ってきて、刀を振り回すのだ。
その動きの速さに驚愕しつつも勝利。やはり刀は灰となって消えた。渚に死体を見てもらっても、『ただの人間』という結論以外が出ない。
一体何者なのか。全く見当のつかない相手と向かい合っている。
煙のような。
ゴーストのような。
一体私たちは、なにに巻き込まれたのか。
機械の脳を持った苺にしても、それは不明だった。
「まあでも、やっぱりなにかしらの組織だよね」
渚は言う。相変わらず余裕の表情で。
「攻められてばかりも面白くないから、攻めようと思うんだけど、どうかな」
「そんなことができるんですか?」
「まあ、考えはある」
作戦会議をしているここは研究室ではない。自宅は半壊しているので、現在工事中なのだ。それで現在はホテルに在住している。渚は研究室のことを気にかけていたが、誰にも開けられないよう、壊されないように作り上げた研究室を信頼し、家を出た。
ホテルのベッドはシングルが二つ。それに座って向かい合って話をしている。
「襲ってくるやつって、なんで襲ってくるんだと思う?」
「私たちを殺すため、でしょうか」
「普通に考えたらそうなんだけど、そうじゃないとしたら。何か目的があるとしたら」
「……どう言った目的が?」
「さあね。君でも想像するだけしてごらん」
「1200個くらいの候補が出てきました」
「さすがは機械の脳を持つ人造人間だ。だがそこから推理をしつつ候補を絞らなくてはいけない」
推理というほどのことをするわけではないけれどね。と、渚。
「今まで苺は襲われると反撃して殺したよね? それをやめてみたらどうだ?」
「殺されろと?」
「いやいや、今までの戦闘でも結果は出ているじゃないか。敵の刀では、敵の尋常じゃない身体能力を持ってしても、お前に傷一つ付けられないじゃないか」
言われてみればそうである。
野村重明。名も知らぬ男。この二人は共通して刀を持ち、普通ではない身体能力を発揮してきたが、それで苺が怪我をすると言うことはなかった。
刀の攻撃は全て、苺の肌で受け止められている。
それが苺の力なのだ。
「だから、喫茶店の男、野村重明と家を半壊させたやつ、この3人が繋がっているとしたら、自分たちの攻撃じゃ苺を撃破できないことくらい、情報共有していると思うんだよね。でも二度目も同じ手口と戦闘方法でやってきた。二度あることは三度ある。三度目も同じようにやってきたら、苺は降参して、敵の目的を聞くんだ」
いい考えだろう? と、自慢げに言うにはいい考えだ。機械の癖して——いや、機械だからこそ、攻撃されたら反撃するという単純な行動に移っていた。それ以外に考えられなかった。
反撃をやめる。
苺にしたら、自殺行動もいいところであるが。
確かに敵の能力では自分を倒すことは難しいだろうなとも、そう思う。
「いいですね。そうしましょう。ですが、相手の目的が私たちの殺害であった場合は?」
「全力で戦う。勝ち続けていけば敵も戦力が尽きる。そうなるまでやり合うのさ」
そもそも、渚が殺しという重罪な仕事をチャリティーで行うのは、苺という失敗作を、失敗作なりに、全力で使いたいからである。
失敗した機能を活用したい。
そのために殺しを無料で担うのだ。
そういう目的がある渚にとって、今回の敵のような相手は、絶好の検体とも言える。
だから全力で戦うことを選んだ。
「渚さんがそうおっしゃるなら、私はそれに従うまで。では、次の襲撃を待つしかありませんね」
「ああ。ただ、敵の能力が苺より劣っているだけで、僕、青鷺渚と比べると、敵の方がはるかに強い。僕の護衛は忘れないでね」
「はい。わかりました」
「だからと言ってガチガチに護衛しちゃダメだ。相手が遅いづらくなる。だからカバーできるだけの隙を作りつつ、敵を待つんだ」
「はい。わかりました」
「そうそう、ちょうど今みたいに、見回りも何もしてない状態で——」
と、言いかけたところで。
二人は作戦会議を中断せざるを得なかった。
「青鷺渚——苺さん。こんばんは」
高層ビルディングのホテルに宿泊している渚と苺がいるここは、百十六階。とても——
「人が窓から侵入できる高さじゃないよね。どうやってきたのかな」
窓を外側から器用に開けた男は、窓辺に腰掛けていた。
先ほど言われた通り、何も考えずに敵は殺さない。しかし、苺のポジショニングは背後に渚を置くということに、なんら変わりなかった。
「いーい警戒です。私たちは青鷺渚を狙っているのだから、当たり前の防衛です」
男は言う。座りながらなので、とても余裕が見える。今までの敵と同じならば、この男も大した力を持っているはずはないのに。
『私たち』とも言っていた。つまりは団体行動をしている、組織として動いていると捉えてもいい。しかし本当に情報共有がなされていないのだろうか? なぜこんな余裕で、平然と喋ってられるのだろうか。
「僕が目的かい。僕で何がしたい?」
「それを教えるほど、この世界は甘くないのですよ。青鷺渚。とりあえずまあ、そこの苺さんでも殺して、青鷺渚には同行してもらいますね」
男は立った。
たったの一人で、苺を殺すべく。
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