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七話「交渉」
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「交渉をしよう」
男に渚は言った。
「交渉?」
男は怪訝に渚を見るが、即答で断ることはしなかった。
「僕の殺害が目的でない場合、僕は君たちの要求を飲もう。飲めない要求もあるにはあるが、それは交渉次第だ。まずはきみのミッションを教えてくれないか。そういう歩み寄りから、交渉というのは発展していくんだと思うんだな」
「…………」
考えている。この男はわかりやすく顔や態度に出る。今なら隙がある。殺せる……。苺はそこまで考えて、考えるだけにした。行動には移さない。
しかし、渚は何を考えている?
あいての要求を飲もうだなんて。
しかし、敵の目的がこちらのどちらかの殺害だった場合、全力で戦っていいというふうに言われている。目の前の男がミッションを教えてきた場合、それが殺害だったら、速攻であの男を殺してもいい。
苺はそう考えて、男の答えを待つ。
「私の任務は、青鷺渚、あなただけの拉致です」
男は答えた。
「ほう、拉致。それで? 僕は何をされるのかな」
「それはあなたがこちらの要求を飲むかどうかで話が違います」
「いいよ、拉致されてやろうとも」
「渚さん!?」
聞き返す苺に、
「いいんだよ、苺」
と、渚。
「ほう。そうですか。それなら乱暴にはしません。丁重に扱えとボスに言われていますので」
「わかった。交渉成立ってやつだ。僕を丁寧に扱う代わりに、僕は素直に拉致される。それでいいね?」
「渚さん。私はどうすれば?」
苺は渚を守るという任務を達成できないことに、焦りではないが、責任感を持って渚に問う。
「苺。きみには重大な任務を与える——」
苺の耳元でそっと囁く渚。その声は男には聞こえなかった。
「わかりました。渚さんはどのくらい戻られないのですか?」
「ねえ、どのくらい?」
渚が男に問う。
「さあ? どうでしょうね」
あやふやな回答だ。
「まあそういうことだから、よろしく。大丈夫だよ。僕は死なない」
「わかりました。では、お達者で」
深く深く、苺は礼をする。まるで祈るかのように。それに対し、渚は軽い様子で、
「うん。じゃあきみ。どうやって僕は拉致されたらいいのかな」
と、男に問うのだった。
「普通にこのホテルを出ましょう。そしたら私の車があるので、それで本部まで向かいます」
「了解。じゃあね苺」
「はい。お気をつけてくださいね」
そうして、男と渚は二人で部屋を出て行った。
もう追うことはできない。
それは約束を破ることになる。
そうすれば、渚がどうなるかはわからない。危害を加えられる渚を考えると、動けなかった。
当の渚と言えば、お気楽に男と話していた。
「名前は?」
「教えません」
「出身は?」
「教えません」
「年齢は?」
「教えません」
と、楽しく(?)車の中で過ごした。
男に渚は言った。
「交渉?」
男は怪訝に渚を見るが、即答で断ることはしなかった。
「僕の殺害が目的でない場合、僕は君たちの要求を飲もう。飲めない要求もあるにはあるが、それは交渉次第だ。まずはきみのミッションを教えてくれないか。そういう歩み寄りから、交渉というのは発展していくんだと思うんだな」
「…………」
考えている。この男はわかりやすく顔や態度に出る。今なら隙がある。殺せる……。苺はそこまで考えて、考えるだけにした。行動には移さない。
しかし、渚は何を考えている?
あいての要求を飲もうだなんて。
しかし、敵の目的がこちらのどちらかの殺害だった場合、全力で戦っていいというふうに言われている。目の前の男がミッションを教えてきた場合、それが殺害だったら、速攻であの男を殺してもいい。
苺はそう考えて、男の答えを待つ。
「私の任務は、青鷺渚、あなただけの拉致です」
男は答えた。
「ほう、拉致。それで? 僕は何をされるのかな」
「それはあなたがこちらの要求を飲むかどうかで話が違います」
「いいよ、拉致されてやろうとも」
「渚さん!?」
聞き返す苺に、
「いいんだよ、苺」
と、渚。
「ほう。そうですか。それなら乱暴にはしません。丁重に扱えとボスに言われていますので」
「わかった。交渉成立ってやつだ。僕を丁寧に扱う代わりに、僕は素直に拉致される。それでいいね?」
「渚さん。私はどうすれば?」
苺は渚を守るという任務を達成できないことに、焦りではないが、責任感を持って渚に問う。
「苺。きみには重大な任務を与える——」
苺の耳元でそっと囁く渚。その声は男には聞こえなかった。
「わかりました。渚さんはどのくらい戻られないのですか?」
「ねえ、どのくらい?」
渚が男に問う。
「さあ? どうでしょうね」
あやふやな回答だ。
「まあそういうことだから、よろしく。大丈夫だよ。僕は死なない」
「わかりました。では、お達者で」
深く深く、苺は礼をする。まるで祈るかのように。それに対し、渚は軽い様子で、
「うん。じゃあきみ。どうやって僕は拉致されたらいいのかな」
と、男に問うのだった。
「普通にこのホテルを出ましょう。そしたら私の車があるので、それで本部まで向かいます」
「了解。じゃあね苺」
「はい。お気をつけてくださいね」
そうして、男と渚は二人で部屋を出て行った。
もう追うことはできない。
それは約束を破ることになる。
そうすれば、渚がどうなるかはわからない。危害を加えられる渚を考えると、動けなかった。
当の渚と言えば、お気楽に男と話していた。
「名前は?」
「教えません」
「出身は?」
「教えません」
「年齢は?」
「教えません」
と、楽しく(?)車の中で過ごした。
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