アヴィロードで会いましょう

朋藤チルヲ

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 翌日。
 珍しく早起きをしていなかったら。母親のパートが休みでなかったら。だらだらと二人で朝ご飯を食べながら、テレビに流された速報を見ることもなかったかもしれない。

「やだ。死体遺棄事件だなんて。近所じゃないの」

 母親は顔をしかめる。その斜め横で、わたしは箸を落とした。

 桜の木。あのしだれ桜。黄色いテープ。せわしなく歩き回る捜査員。

 遊ぶ金欲しさに、通りすがりの大学院生を殺害し、遺体を木の根元に埋めた犯人が、未明に自首してきたことを、アナウンサーは悲痛な面持ちで告げた。
 聡明な生徒でした、と高校時代の恩師が嘆き、その画面の隅には、被害者の写真が映し出された。
 まだ記憶に新しい、ストロベリー・ミルクティー色の髪。
 事件が起きた日付は、三日前だった。

 行かないといけない場所がある。
 絵空事のように、わずらわしいことがない場所。

 彼はあそこでずっと待っていたのだろうか。見つけてもらえることを。ようやく外に出られる時を、感じ取ったのだろうか。

 涙が溢れるのを止められなかった。悲しくて悲しくて、たまらなかった。

 アビィロードで会いましょう。

 あまりにも有名な名盤が生まれた背景には、メンバーたちの奮起があったと言われている。解散の危機に瀕していた彼らが生み出した音は、不朽の名作となった。

 あの言葉はきっと、彼なりの激励だった。

 悪意のある声など無視しよう。自分の中に降り積もらせるものは、温かい声だけでいい。やがて、金色の陽にも負けない強く優しい花びらをまとい、わたしはそこから歩き出せるだろう。
 そうして、いつか生まれ変わった彼と再会するのだ。

 それが、約束だから。


(fin)
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