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第3章 学園に通おう
105話 木材
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突然目の前に現れた白亜のお屋敷にまたみんなして愕然としてしまっている。
今度ばかりはイヴァンさんも軽く目をむいて驚きを表していた。
僕もさっきの地下室づくりでも十分驚いていたのに、それ以上に驚いてしまって夢でも見てるのかって気分だ。
穴を掘るっていう大規模だけど単純な作業と違って、いま一瞬で目の前に現れたお屋敷は、こちらの世界では珍しい完全木造の2階建てで、建材はきちんと製材された木材だし、要所要所には飾り細工まで施されている。
裏側だからかな?のっぺりとした印象ではあるけど、大きめの窓も付いているし窓にはガラスもはまっている。
とても、今あの瞬間にアッキーが建てたとは思えない。
アッキー自身『持ってくる』って言ってたし……。
「あ、あの、アッキー、このお屋敷どうしたの?」
どっかの人の家盗んできたんじゃないよね?
明らかに新築って感じで誰かが住んでいたような感じはないけど、それだけに誰かのために建てられたお屋敷にしか思えない。
「ああ、ちょうどエルフの里で建てていたお前の屋敷が出来上がったところだったからな。
もらってきた」
いや、『もらってきた』じゃないでしょ。
言われてみれば確かに前にミッくんが僕がエルフの里に滞在するとき用の屋敷を建ててるって言ってたけど……。
ここまで立派なものだとは思ってなかった。
「えっと、それ大丈夫なの?」
「長老会の承諾はもらってあるし、弟はお前が住むって聞いて喜んでたくらいだから大丈夫だろ」
アッキーも流石に色んなところに許可を取ってたみたいだ。
「建築費とかどうしよう?いくらくらいかな?」
流石にタダでもらえる物ではないよなぁ。
どう考えても僕の手持ちでなんとかなる額じゃないだろうし、分割になっちゃうと思うけど……。
「ああ、いらんいらん。
どうせ森にあるもので作っただけだし、建てるのも魔法仕事だからそれほど手間はかかっとらんしな」
「いや、いくらなんでもそう言うわけには……」
「気にするな。
エルフの里からの好意だと思って受け取っておけ。
……いや、そうだな、これがエルフの里からお前に対する『期待』の現れのごく一部だと思っておれ。
それを恩に着ていてくれるとなれば我々エルフとしては満足だ」
な、なるほど。
これに見合うだけの『働き』を期待されてるってことか。
少子化対策ってなにやるのか分からないけど、下手すると素直にお金払ったほうが安い貰い物になっちゃったかもな……。
まあ、でも、アッキーが『好意』だというのならありがたく受け取ろう。
「それじゃ、ありがたく受け取らせてもらうね。
……ちょっと怖いけど」
「うむ、そうしてくれれば弟も爺共も喜ぶだろう」
「ミッくんお屋敷ありがとーねー」
空に向かってお礼をいう。
ミッくんは魔名の繋がりで何となく分かるらしいから、少しは伝わるだろう。
今度会った時にちゃんとお礼しよう。
「あとは、とりあえず長老様?たちにはお礼伝えといてくれる?
字書けるようになったら改めてちゃんとお礼の手紙書くから」
あるいは落ち着いた頃に直接出向いて挨拶させてもらおう。
「そうかしこまらんでかまわんが、まあ分かった。
伝えておこう」
頷いてくれたアッキーに、小さく頭を下げる。
アッキーはそう言ってくれるけど、さすがにこれだけのものもらっちゃってお礼言わない訳にはいかないからな。
今度エルフの里に必要なものとか長老様たちの好きなものとか聞いてみよう。
「あ、あの、お師匠様?」
輝くように白い立派なお屋敷を眺めながら、なにを贈ろうか考えていたら気を取り直したらしいイヴァンさんが恐る恐るといった感じで口を開いた。
ちなみに、まだ他のみんなは突然目の前に現れたお屋敷を見上げながら現実とのすり合わせ中だ。
「ん?イヴァン坊、何か問題があったか?」
「い、いえ、問題と言いますか……」
なにか問題があったかと少し不安そうにしているとはいえ普通の反応をしているアッキー。
それとくらべて、イヴァンさんはたとえアッキー相手とは言え今まで見せたこともないくらい恐る恐るといった感じでなにかを口にだすのをためらっている。
「……あの……先程、『エルフの森にあるもの』とおっしゃっておりましたが、もしや建材は天空樹でございますか?」
『天空樹』という言葉が出た瞬間、ユニさんとミゲルくんとモレスくんとヴィンターさんがものすごい勢いで首をひねってイヴァンさんの方を見た。
クラウスさんとカミラさんもそこまで激しい反応じゃないけど、目を見張ってイヴァンさんを見てる。
「ああ、そりゃ、エルフの森の木って言ったらそれしかないしな」
アッキーの返事を聞いて、今度はクラウスさんとカミラさんも合わせてイヴァンさんの言葉に反応した人全員が、アッキーとお屋敷を何度も見比べている。
「……左様でございますか」
聞いたイヴァンさん本人はなんか優しい顔で空を見上げている。
えっと……?
なんかアッキーが……というかエルフさんたちが途方も無いことしでかしたのは分かるけど、この世界の常識のない僕にはなにがどうしたのか分からない。
というか、今驚いている人以外の子たちは驚いている人を不思議そうに見ているから、この世界の人でも特定分野の知識がないと驚くことも出来ないのかもしれない。
分からないままにしておきたいところだけどそうもいかないので、なにかを諦めたような穏やかな顔でお屋敷を眺めているユニさんの袖を引っ張って説明を要求してみる。
「あの、ユニさん、なにがどうしたの?」
「あ、ああ、あのですね……このお屋敷の建材としてエルフの里の周りにしか生えていない天空樹という世界樹の亜種……まあ、大変希少な木が使われているらしいんですが……」
天空樹はともかく世界樹は僕でも聞いたことあるぞ。
いろんなファンタジー作品に出てきて、ことごとく世界最高レベルで希少な木だ。
「希少な分当然高価なので彫刻として使うか、せいぜい飾り柱として使うかで建材としての値段など考えたことありませんでしたが……。
飾り柱の場合で1本金貨100枚はくだりません」
「はあっ!?」
柱1本でその値段って、このお屋敷、全部で柱何本使ってるんだ?
思わずブンブンと首を振りながら小さな学校くらいの大きさのあるお屋敷を見回してしまう。
「もちろん、彫刻や飾り柱などという芸術性を加味しての値段なので、そのまま建材の値段になるというわけではありませんが、それでも途方もない額の材料費になると思います」
な、なにやってくれちゃってんのエルフさんたち。
「いや、そうは言うがな、里の周りの木って言ったらこれしかないからな。
森の中に建材に適した木があるのに、その木伐らないで他所から買うっていうのも変な話だろう?」
もはやおののいてすらいる僕たちを見て、アッキーはちょっと困った感じで言ってるけど……言われてみればそれはそうか……。
「予め言っておくが、我々としてはそこらにある建材を使っただけだから過分な返礼とかは考えなくていいぞ」
釘まで刺されてしまった。
いや、まあ、確かにそこらに生えてる木を使った感覚ならそうだろうけど……。
とりあえず感謝の気持ちは忘れずにおこうと思う。
今度ばかりはイヴァンさんも軽く目をむいて驚きを表していた。
僕もさっきの地下室づくりでも十分驚いていたのに、それ以上に驚いてしまって夢でも見てるのかって気分だ。
穴を掘るっていう大規模だけど単純な作業と違って、いま一瞬で目の前に現れたお屋敷は、こちらの世界では珍しい完全木造の2階建てで、建材はきちんと製材された木材だし、要所要所には飾り細工まで施されている。
裏側だからかな?のっぺりとした印象ではあるけど、大きめの窓も付いているし窓にはガラスもはまっている。
とても、今あの瞬間にアッキーが建てたとは思えない。
アッキー自身『持ってくる』って言ってたし……。
「あ、あの、アッキー、このお屋敷どうしたの?」
どっかの人の家盗んできたんじゃないよね?
明らかに新築って感じで誰かが住んでいたような感じはないけど、それだけに誰かのために建てられたお屋敷にしか思えない。
「ああ、ちょうどエルフの里で建てていたお前の屋敷が出来上がったところだったからな。
もらってきた」
いや、『もらってきた』じゃないでしょ。
言われてみれば確かに前にミッくんが僕がエルフの里に滞在するとき用の屋敷を建ててるって言ってたけど……。
ここまで立派なものだとは思ってなかった。
「えっと、それ大丈夫なの?」
「長老会の承諾はもらってあるし、弟はお前が住むって聞いて喜んでたくらいだから大丈夫だろ」
アッキーも流石に色んなところに許可を取ってたみたいだ。
「建築費とかどうしよう?いくらくらいかな?」
流石にタダでもらえる物ではないよなぁ。
どう考えても僕の手持ちでなんとかなる額じゃないだろうし、分割になっちゃうと思うけど……。
「ああ、いらんいらん。
どうせ森にあるもので作っただけだし、建てるのも魔法仕事だからそれほど手間はかかっとらんしな」
「いや、いくらなんでもそう言うわけには……」
「気にするな。
エルフの里からの好意だと思って受け取っておけ。
……いや、そうだな、これがエルフの里からお前に対する『期待』の現れのごく一部だと思っておれ。
それを恩に着ていてくれるとなれば我々エルフとしては満足だ」
な、なるほど。
これに見合うだけの『働き』を期待されてるってことか。
少子化対策ってなにやるのか分からないけど、下手すると素直にお金払ったほうが安い貰い物になっちゃったかもな……。
まあ、でも、アッキーが『好意』だというのならありがたく受け取ろう。
「それじゃ、ありがたく受け取らせてもらうね。
……ちょっと怖いけど」
「うむ、そうしてくれれば弟も爺共も喜ぶだろう」
「ミッくんお屋敷ありがとーねー」
空に向かってお礼をいう。
ミッくんは魔名の繋がりで何となく分かるらしいから、少しは伝わるだろう。
今度会った時にちゃんとお礼しよう。
「あとは、とりあえず長老様?たちにはお礼伝えといてくれる?
字書けるようになったら改めてちゃんとお礼の手紙書くから」
あるいは落ち着いた頃に直接出向いて挨拶させてもらおう。
「そうかしこまらんでかまわんが、まあ分かった。
伝えておこう」
頷いてくれたアッキーに、小さく頭を下げる。
アッキーはそう言ってくれるけど、さすがにこれだけのものもらっちゃってお礼言わない訳にはいかないからな。
今度エルフの里に必要なものとか長老様たちの好きなものとか聞いてみよう。
「あ、あの、お師匠様?」
輝くように白い立派なお屋敷を眺めながら、なにを贈ろうか考えていたら気を取り直したらしいイヴァンさんが恐る恐るといった感じで口を開いた。
ちなみに、まだ他のみんなは突然目の前に現れたお屋敷を見上げながら現実とのすり合わせ中だ。
「ん?イヴァン坊、何か問題があったか?」
「い、いえ、問題と言いますか……」
なにか問題があったかと少し不安そうにしているとはいえ普通の反応をしているアッキー。
それとくらべて、イヴァンさんはたとえアッキー相手とは言え今まで見せたこともないくらい恐る恐るといった感じでなにかを口にだすのをためらっている。
「……あの……先程、『エルフの森にあるもの』とおっしゃっておりましたが、もしや建材は天空樹でございますか?」
『天空樹』という言葉が出た瞬間、ユニさんとミゲルくんとモレスくんとヴィンターさんがものすごい勢いで首をひねってイヴァンさんの方を見た。
クラウスさんとカミラさんもそこまで激しい反応じゃないけど、目を見張ってイヴァンさんを見てる。
「ああ、そりゃ、エルフの森の木って言ったらそれしかないしな」
アッキーの返事を聞いて、今度はクラウスさんとカミラさんも合わせてイヴァンさんの言葉に反応した人全員が、アッキーとお屋敷を何度も見比べている。
「……左様でございますか」
聞いたイヴァンさん本人はなんか優しい顔で空を見上げている。
えっと……?
なんかアッキーが……というかエルフさんたちが途方も無いことしでかしたのは分かるけど、この世界の常識のない僕にはなにがどうしたのか分からない。
というか、今驚いている人以外の子たちは驚いている人を不思議そうに見ているから、この世界の人でも特定分野の知識がないと驚くことも出来ないのかもしれない。
分からないままにしておきたいところだけどそうもいかないので、なにかを諦めたような穏やかな顔でお屋敷を眺めているユニさんの袖を引っ張って説明を要求してみる。
「あの、ユニさん、なにがどうしたの?」
「あ、ああ、あのですね……このお屋敷の建材としてエルフの里の周りにしか生えていない天空樹という世界樹の亜種……まあ、大変希少な木が使われているらしいんですが……」
天空樹はともかく世界樹は僕でも聞いたことあるぞ。
いろんなファンタジー作品に出てきて、ことごとく世界最高レベルで希少な木だ。
「希少な分当然高価なので彫刻として使うか、せいぜい飾り柱として使うかで建材としての値段など考えたことありませんでしたが……。
飾り柱の場合で1本金貨100枚はくだりません」
「はあっ!?」
柱1本でその値段って、このお屋敷、全部で柱何本使ってるんだ?
思わずブンブンと首を振りながら小さな学校くらいの大きさのあるお屋敷を見回してしまう。
「もちろん、彫刻や飾り柱などという芸術性を加味しての値段なので、そのまま建材の値段になるというわけではありませんが、それでも途方もない額の材料費になると思います」
な、なにやってくれちゃってんのエルフさんたち。
「いや、そうは言うがな、里の周りの木って言ったらこれしかないからな。
森の中に建材に適した木があるのに、その木伐らないで他所から買うっていうのも変な話だろう?」
もはやおののいてすらいる僕たちを見て、アッキーはちょっと困った感じで言ってるけど……言われてみればそれはそうか……。
「予め言っておくが、我々としてはそこらにある建材を使っただけだから過分な返礼とかは考えなくていいぞ」
釘まで刺されてしまった。
いや、まあ、確かにそこらに生えてる木を使った感覚ならそうだろうけど……。
とりあえず感謝の気持ちは忘れずにおこうと思う。
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