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第一章 虜囚

15話 拳闘

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 やる気満々でウルガに向かって構えを取るけど、言い出しっぺのウルガがよそ見をしてる。

 どうしたんだろうと思ってウルガの視線の先を見てみたら、茂みの影で衛生兵の子とオーガの少年がエッチなことしてた。

 オーガの子が衛生兵の子の頭を持って無理矢理フェラさせているように見えて一瞬焦るけど、大丈夫、あれ和姦だ。

 衛生兵の子から美味しいエネルギーが送られてきてる。

「ちっ、軟弱なヤローが……」

 それを見ていたウルガは忌々しそうに言ってツバを吐き捨てるけど……。

 なんかジーッと見たままだな。

「えっと……拳闘、やらないの?」

「えっ!?あっ!お、おうっ!」

 僕に声をかけられて慌てて構えを取るけど、まだチラチラ見てる。

 そんなにあの子のこと気になるのかな?

 まあ僕なんて集中していなくても問題ってことなんだろうけど。

 油断してくれているのならと思って、よそ見しているウルガのお腹を思いっきり殴りつける。

 ペチって良い音がした。

 うん、腰の入った会心の一撃だ。

 それにしても、ウルガの腹筋、すごく硬くて殴ったこっちの手が痛い。

「……は?なんだ?今のは」

 お腹を殴られてようやくこちらをちゃんと見たウルガが呆れたような顔をしている。

 そして、小さく腰をひねる。

「パンチってのはこうやってやんだよ」

 そして無造作に僕の肩に拳を突き出してきた。

 ドンッ!と大砲でも撃ったみたいな音がした。

 そして、肩を叩かれた僕は面白いほどクルクルと回って、そのまま地面に倒れた。

「イロハっ!?大丈夫かっ!?」

「先輩っ!?先輩っ!?しっかりしてっ!?
 ボクを置いて死なないでっ!」

 倒れた僕にクロウくんとミツバくんが駆け寄ってくる。

「はっ!
 生意気なこと言っといてかるーく撫でてやっただけで終わりかよ。
 現地人なんてこんなもんか」

 一発で倒れてしまった僕を笑うと、ウルガは振り向いて収容所の方へ歩いていこうとする。

「あー、つまんねぇっ!
 おいっ!そいつ午後までに起こしとけよっ!
 生意気言ったことを後悔させてやっからよ」

 いやいや、ここで帰られちゃ意味がない。

 クルクル回ったせいでまだ少し目が回っているけど、慌てて立ち上がる。

「おいっ!ウルガっ!」

 そして、立ち去ろうとしていたウルガに声をかけて、振り向いたところで。

「カモーン♪」

 もっかい挑発してみた。

「はっ!しぶとさだけは一人前みてーだなっ!!」

 勢いよく間合いを詰めてきたウルガが、今度はお腹を殴りつけてくる。

「ぐうぇぇっ!」

 あまりの衝撃に朝食べたものが出てしまった。

 もったいない。

「イロハっ!?」

「先輩っ!?」

 クロウくんたちが慌てた声を上げる。

「ちっ!きったねえなあっ!ゲロぶっかけんじゃねえよっ!!」

 僕の朝ご飯がかかってしまった右手を振りながらウルガが収容所に帰ろうとする。

「ごめんごめん、流石に出るものは止められなくって」

 いやはや、殴られた衝撃ばかりはどうしようもないみたいだ。

「はぁっ!?モロに入ったはずだぞっ!?
 筋肉なんて全くねー腹だったし、どうなってんだお前」

 何事もなかったように立ち上がって、汚れた口元を拭っている僕をみて流石にウルガも驚いている。

「カモーン♪」

 ウルガにネタばらしをするつもりはないので、もう一度挑発した。

「…………」

 少し真剣な顔になったウルガが、無造作に間合いを詰めてきて、そのまま僕の顎を下から拳で跳ね上げる。

 今度はけっこう力を入れて殴ったみたいで、顎の骨が折れたのが分かるけど、折れたそばからあっという間に治っていく。

 僕からのエネルギーでみんなの傷が治った話を聞いて、僕もエネルギーが残ってるうちは勝手に治るんじゃないかな?と思って試してみたけど予想通りだったみたいだ。

 いや、それどころか、治ったとしても痛いのは覚悟してたんだけど、痛みすら無い。

 本当にどうなってるんだろう、僕の体。

「…………イロハ?」

「先輩……?」

 強烈なアッパーを食らって吹き飛んだのに何事もなかったかのように立ち上がる僕をみて、ミツバくんたちも呆然とした声を漏らしている。

「さあ、もう一発いってみようかあっ♪」

 今度はこちらを向いたままだってウルガに向かって、指をクイクイっとさせて挑発する。

「バケモンか?てめぇ」

 笑いかける僕を睨みつけたウルガが今度は思いっきり蹴りを放ってくる。

 僕程度じゃ当然避けることも防ぐことも出来ないので、蹴られた腕が折れてそのまま倒された。

 でも、すぐに治るので立ち上がるとまた挑発。

 今度はパンチとキックのコンビネーションで色々骨が砕けるけど、やっぱりすぐ治ったので立ち上がって挑発。

 今も色んなところでエッチをしている子達がいるから、治療に使ってるエネルギーより流れ込んできているエネルギーのほうが多いくらいだ。

 そのまましばらく殴られ続けてみた。

 何度殴られても起き上がってくる僕をウルガが不気味そうに見ている。

 いや、まあ、そりゃそうだと思うけど、うーん。

 ウルガ、一度も楽しそうにしないなぁ?

 乱暴者だっていってたから、人を殴ったりするのが好きなやばいやつなのかと思ってたけど、どうやらそういうわけではなさそうだ。

「…………ボロボロになってる先輩を見てたら……ボク……♡ボク……♡♡」

 傷自体は治るとは言っても、服や髪は乱れるし、すぐ止まるとはいえ血は流れるしでけっこう見た目的にはボロボロな感じになっているんだけど。

 そのボロボロな僕を熱く潤んだ目でみてるミツバくんから強烈なエネルギーが流れ込んできてる。

 …………やばい子ってのはこういう子のことだ。

「…………ちっ!付き合ってられっかよっ!!」

 いくら殴っても起き上がってくる僕に引いた感じになってしまったウルガがそう吐き捨てて収容所に帰っていく。

 とりあえずウルガが相手を殴って楽しんでいるタイプの子じゃないことが分かったことだし、ここはお開きでいいだろう。

 そう思いながら、今度は素直にウルガを見送る。

「せんぱぁい♡♡せんぱぁい♡♡♡」

 さて、ウルガは置いといて、まずはうちの二人をなんとかしなければ。

 ボロボロになった僕を見て発情してしまっているミツバくんはいいとして……。

「イロハぁ……もうやめてくれよぉ……死んじゃうよぉ……イロハぁ……死んじゃやだよぉ……」

 もう終わっていることも分からないくらい泣きじゃくっちゃってるクロウくんはどうしよう。

 とりあえず、残りの運動時間中、全力で二人をかわいがった。



「ウルガを眷属にするのはやめよう」

 運動の時間が終わってお昼ごはんを食べていた時、僕に寄り添うように肩を寄せていたクロウくんがそんなことを言い出した。

「え?なにか考えがあったんじゃないの?」

「これ以上続けるとイロハが死んじゃうからやだ」

 ……運動時間が終わるまで全力でイチャイチャエッチして回復したかと思ってたけど、まだ完治はしていなかったようだ。

「もうあんな事しないから大丈夫だって」

「やだ。
 イロハが危ないことするのやだ」

 あまりにもショックだったのか、ちょっと幼児退行しちゃってるクロウくんが可愛い。

「あー、いいなぁ、ボクもー♡」

 可愛いので頭を撫でていたら、反対側からミツバくんも頭を出してきたので一緒に撫でる。

 ミツバくんはミツバくんで、イチャイチャエッチしすぎたせいかまだあまえんぼモードだ。

「もう本当に怪我するようなことにはならないから大丈夫だよ。
 後もう少し確認してみればウルガの攻略は出来ると思うから、もうちょっとやってみよう?」

「ホントか?ホントにもう危ないことはしないか?」

「しないしない。
 ウルガにはもう危ないことをする必要ないと思うし、もしまた必要になるなら今度こそそこでやめよ」

 人を殴って興奮する性癖じゃないってことは分かったので、もう殴られる必要はない。

 …………もし、そのタイプだったら殴られエッチを視野に入れなきゃいけなかったので早々に潰したかったんだ。

 どういうのが好きなのかまだよく分からないけど、とにかくウルガ相手には普通のエッチで大丈夫そうだ。

 好きなプレイについてももうヒントっぽいのは手に入っているし。

 もうちょっと試してみればウルガとエッチする関係になれると思う。

「…………それじゃ、さっき使った分、俺のエネルギーで補充しとけ」

 そう言って、クロウくんが僕の首筋にチュッチュッと吸い付いてくる。

「あー、ボクもエッチするー♡」

 それを見たミツバくんが僕の服を脱がし始めた。

 いや、エネルギーについてはみんなのおかげでむしろプラスだったんだけど……。

 まあ、断る理由はないので、ありがたく二人からいっぱい補充させていただいた。
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