転生したら死にゲーBLの主人公でした

秋月ふく

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2日目(2)

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部屋で宿題をしていると、「部活の練習で遅くなる」と郁哉から連絡が入ったので、夕食を食べるために1人で食堂に向かう。

ちょうどクラスメイトの、”佐藤三人衆”がいたので、同席させてもらうことにした。

佐藤三人衆は、仲の良い3人グループで全員苗字が佐藤のため、そう呼ばれている。

今日のメニューはハンバーグ定食だ。
うん、上手い。おろしポン酢との組み合わせが絶妙だ。

佐藤達の会話に適当に相槌を打ちながらハンバーグを味わっていると、佐藤が俺に話を振ってくる。

「半澤って、なんかここ数日元気くね?」

「俺も思った、前は人を避けてるのかなって感じだったから。俺今のお前好きよ」

またしても、ゲームとの主人公の性格の乖離かいりが発生していたようだ。

それで考えると、俺がこの身体に入ってからの半澤晃の言動は、周りから見たら不自然だったのかもしれない。

「いつもは水原が声を掛けなければ、1人席で飯食べてるもんな」

えええ。
そんな、根暗な感じだったんか、半澤晃。

ゲームだと、フレッシュで、子犬のような愛嬌がある親しみやすい性格だった気がするが。

ボッチ根暗キャラなのに、突然クラスメイトに慣れ慣れしく食事に混ぜてもらおうなんて、相手もさぞ困惑したことだろう。よく夕食に混ぜてくれたな、三人衆。

「えっと……、ホームシック的な感じだったんだよね。それもあって寝不足で」

この言い訳は………苦しいか?

パクリとハンバーグを口にしながら、上目で三人衆の様子を窺うと、それはさぞ大変だったろうと、慈悲深い眼差しでこちらを見返す3人と目が合った。

「ああ。そうだよな、寮生活って結構厳しいし、親元離れてからありがたみがわかるっていうか」

「だな、慣れてきてよかったな」

「実は俺も少しホームシックだったから気持ちわかるよ」


なんならすごく共感してくれている。
性善説を信じる方の人種だよ、この人たち。

「これからも水原がいないときは、一緒に飯食べよう」

「なんなら水原ごと来てくれてもいいよ」

1人が誘ってくれて、残りの2人もとノリよく賛同してくれる。
郁哉がいない時に俺がボッチにならないように、と気遣ってくれているのかもしれない。


この学園、みんな性格よくないか?
七條以外には、優しくされた記憶しかない。

いいのか七條?お前、クラスで浮いてるとかないか?



この場にいない七條を案じながら、佐藤達と歓談していると、部活終わりの郁哉が、他の部員たちと共に食堂に入ってきた。

かつての俺は脂汗で髪の毛が額に張り付く自分を鏡で見たショックで丸2日寝込んだことがある。

しかしどうだろう。郁哉の場合、むしろ汗に濡れた髪の毛が、奴の爽やかさと華やかさを更に際立せている。
イケメンは何をしてもイケメンのようだ。

ここが共学だったとしたら、今の登場シーンで女子共の歓声が響き、どこぞやのアイドルグループのライブよろしく数人は失神してもおかしくない状態だった。

だがここはむさい男子校。残念だったな、郁哉。お前は咲く場所を間違えた大輪の花だよ。



三人衆に混ざって食事する俺に気づき、二度見する郁哉。

その反応を見るに、郁哉も俺をボッチ根暗だと思っていたに違いない。

だが、高校入学前の記憶では人見知りもなかったように思うので、今のこの状態でもさして違和感はないはずだ。
よって郁哉にも後程、ホームシックだったと伝え誤魔化すことにしよう。



「半澤の保護者が心配そうにこっちをみてるぞ」

「あとで、虐められなかったか聞かれたら、ちゃんと大丈夫だったって伝えるんだ、半澤」

「あれは、PTAに乗り込むタイプだからな」

食事中にチラチラとこちらに視線を送ってくる郁哉をネタに、3人は盛り上がる。

「普通に三人衆に親切にされたって答えるよ」

笑って咽せそうになり、俺はコップの水をごくりと飲み込んだ。

和やかな食事を楽しむ俺たちに安心したのか、こちらに気を取られてそぞろだった郁哉も、いつの間にか部員たちとの会話に戻っていたようだった。




---------------

自分の部屋に戻り、布団に飛び込むと俺は意を決してスマホを開く。

ここの食事はとても美味しい。

これから俺は、毎日食堂で出されるメニューを随時記録していくことに決めた。

珍しいことに、ここの食堂は献立表がないという。
だから俺はこの手で献立の統計を取り、傾向を把握。
ゆくゆくは、翌々日の夕食のメニューまで当てられるようにしていく所存だ。

唐揚げ
おろしポン酢ハンバーグ

昨日の分のメインメニューをメモに記録し保存する。

作成したばかりのメモを満足げに眺めていると、その下の「やってダメだったこと」というメモが目につく。

暇だったので、俺は何の気なしにそのメモを開いた。

-----------------------
[やってダメだったこと]

・郁哉、七條先輩、弓川先輩も結局最期は皆操られた。大切な人が死ぬのは嫌なのでもう頼らない。

・わざと大怪我して生贄期間の間入院しても、帰ってきたら、期間外なのに結局生贄にされた

・図書館の隠し部屋にあった本を参考に、願いを聞いてくれるという悪魔を召喚したら、ケケカト様が出てきて秒で生贄にされた

--------------------------



俺は現実逃避するが如く、穏やかな表情で微笑み、そっとメモアプリを閉じた。

これが見知らぬ学生のメモだったとしたら、”生贄”とか”悪魔召喚”の文字が羅列していても、君の秘められし闇の書を開いてしまったね。ごめんね。で済むのだが。

実際に”生贄”になる予定の半澤晃の手記となると話は別だ。

―――――ここにきて、主人公タイムリープ説発覚!?

何通りもエンディングがあるゲームの主人公って、そういう感じで回ってるの?

パラレルワールドとして存在する数あるエンディングをゲームを通して見ているイメージだったが………


気分転換に部屋の空気でも入れ替えようと、すりガラスの小窓を開ければ、窓の外の人物と目が合った。

暗くてよく見えないが、20代くらいの男が、窓の外からこちらを覗いているのだ。

仮に覗いているだけならば、ただの変質者なのでよしとするが、俺と男の目線の高さが同じなのが問題なのだ。


ここは寮の2階。外には梯子も階段も、登れそうな物は何もない。



お、おばけっ!!!

俺は驚愕のあまり、白目をむいて倒れ、そのまま意識を手放した。

いつ侵入する時間があったのだろうか。

気を失い仰向けのまま倒れ、後頭部から床に着地しようとしていた俺を、華麗に受け止める謎の男。

何の感情も映さない瞳でじっと俺を見つめてから、そっとベッドに横たえた。

俺の顔にかかる髪の毛を払い寝顔を凝視すると、男はため息をつく。

「やはり君か」
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