転生したら死にゲーBLの主人公でした

秋月ふく

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3日目(2)

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「んー、晃」

寝惚けたような声で、頬を擦り付けてくる郁哉。
抱きしめられているので、押し返すこともできず、されるがままでいるしかない俺。

「そ、そろそろ起きないと、郁哉。部活の時間じゃないの?」

「今日は朝練ないー」

そうだ!と思い付いた郁哉を起こす口実も使えず、丸1時間、俺は子犬のように擦り寄る181センチの大男に甘え尽くされるのであった。

スリスリスリスリ

また三度寝をしようとするも、攻撃を受けなかなか寝付けない。

もしこれを見ている人物がいるとしたら、美少年同士の微笑ましい戯れ合いに見えるのかもしれないが、不意打ちで郁哉が時折俺の頬にチュッと口づけをするので、俺に取っては気を抜くこともできない緊張感のある場面なのである。

さすがBLゲームの主人公といったところか。
敏感な体質なのか、頬にキスされるだけでゾワリと落ち着かない感覚が走る。

頬へのキスの頻度が増えてきた。
これはもしかしなくても、やばい。

腰が抜けそうな感覚に悶えて涙目になる。
漏れそうになる吐息を必死に押し殺すのもそろそろ限界かもしれない。

ピピピピピッーー

助かった。

目覚まし時計が勢いよくなりだし、郁哉が手を伸ばしてアラームを止める。

「あれ、晃じゃん」

ようやく覚醒したのか、郁哉は少し驚いて、抱きしめていた俺から離れ壁に背中をピタリとつける。

ようやく肩の力を抜くことができる俺。

そうです、お前ががずっとスリスリしたり、ほっぺにチューしてたのは、幼馴染の晃くんですよ。

郁哉の奇行のせいで朝から息を切らしてぐったりの俺は、未だ涙で霞む目を半眼にして郁哉をめ付けた。

「おはよう、どうだった?俺の抱き心地は」

「え?は?なんで晃がここにいるんだ?」

寝惚けた自分の痴態を思い出したのか、顔を赤くして慌て出す郁哉を見て、俺は溜飲を下げる。




少し冷静になった様子で天を仰いだ郁哉は、言いづらそうに俺に尋ねてきた。

「あの、朝のあれが当たったりしてませんでしたか?」

朝のあれ。

一瞬何を言われているのか分からず、ポカンとしてしまったが、数秒後に朝のあれの正体に思い当たり、俺まで顔が赤くなる。
あれだ、俺ら男子特有の朝のあれ。

郁哉に釣られて、俺も天を仰ぎ見た。

「全く大丈夫だったかと思われます」



幸いなことに奇跡的な位置で弛んだ布団が俺らを数センチ隔てていたこともあり、郁哉から言われるまで、そのような生理現象があることさえ忘れていたくらいだ。

ありがとう、布団。



「誠に申し訳ございません」

「あ、はい」

気まずそうに、頭を下げる郁哉に、俺もペコリと頭を下げる。

いくら幼馴染だとはいえ、俺が布団に忍び込んだのがそもそもの原因だし強く言えない。



「なんか………晃いい匂いだった気がする。同じシャンプー使ってるはずなのに」

寮備え付けのシャンプー類を使っているため、独自のものを持ち込んでいないかぎり、ここの生徒は皆同じ匂いである。
いい匂いだと思うのならば、それは俺のイケメン効果であろう。

「もう一回」

匂いを嗅ぐのを口実に、開き直って再び抱きつこうとする郁哉を押し退けて俺はベッドから出る。

「変態め」

「俺と晃の仲じゃん。昔は一緒に風呂も入ってたろー」

背後で吠える幼馴染を無視して、俺は郁哉の部屋から立ち去った。



バタンッと勢いよく締まるドアを見届けて、壁に背を付けて座る郁哉は、顔を真っ赤にして口元を抑えた。

「やばい。可愛すぎた」





途中で目は覚めていた。
なぜ晃が俺の布団で寝ていたかは知らないが、昔から晃に想いを寄せる俺にとっては最高に都合の良い展開だった。

寝惚けたふりをして、ちょっとだけ晃を堪能するだけのつもりだったのだが、あまりにも晃の反応が扇情的で。
あわよくば続きをと思ったところ、目覚まし時計に邪魔をされた。

涙目で我慢する晃、可愛かった。

ずっと秘めていこうと決めたはずの気持ちが、本能によって打ち砕かれた瞬間だった。

「やっぱり俺、晃が欲しいな」

口をついて出た言葉に、改めて晃への気持ちを思い知らさる。

学園に入学してから、なにか落ち込むことでも合ったのか、ずっと元気のなかった晃が、最近また笑うようになった。

その笑顔を見れるようになっただけでもいいと思っていたところだったのに。
自分の強欲さに、つくづく呆れる。

最近は生徒会メンバー達も晃に一目置いているともっぱらの噂だ。
晃が可愛くて、才能に溢れていることは、俺だけが知っていればよかったのに。

仄かに生まれた黒い感情。
俺はどんなことがあっても晃を手に入れようと決めて、拳を握りしめた。


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