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白き其の者
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逃げなければ、ここから逃げなければ。不甲斐なさで押し潰されそうだった。
同じ光景を俺は何度見ることになるのだろう、俺は何をやっているんだ
「ッ!…エー、ス!!お、ろせっ!」
担いでいる最中に背中を何度も強く叩かれていたようだった。怒鳴り声に気が付き、その場で立ち止まった。あの者が追ってくる様子はない
「リヒトの所に戻れよ!」
「それは出来ない」
「…いいからっ…下ろせってば!」
マスターは俺の腕から解放されようと暴れるが、それは許さなかった。
「俺は、リヒトに…」
リヒトは、先に俺よりも異変に気付いていた。マスターだと思っていた人が、そうでない人であることに
俺が得意とする閃光を、模倣したかのような技をこちらに向けて放った。
いち早く気付いたリヒトが俺を庇い、それをまともに受けてしまった。
(なぜマスターが、なぜ俺の技を……なぜこんなにも苦しいんだ)
困惑したが、呼吸は荒くなるし身動きも取れないしで考えもまとまらない
(リヒト……リヒトが、危険だ…)
白く染まっていくマスターを、俺は過呼吸のような状態で見つめる事しか出来なかった。
手慣れたような所作でその者はリヒトに近付いたかと思えば首を狙って、白銀の刃を喉に突き刺した。
どうしてこんな光景を、見なければならなかったのか。どうして護るべき対象である主に、こんな
「…リ、ヒト…ッ!!」
辛うじて出た声がこれだけだった。相変わらず体は動かないものの、怪我はしていないようだった。
(血が出ていないということは…… 違う!分析は後だ…!)
しかしまともに動かない体を憎たらしく感じた。どうしてこう、悔しさだけが募るばかりなのだろう
するとリヒトは体に魔術を溜め始めたのが感じ取れた。そんな事をしたらリヒトの存在が消えてしまう
「…リヒッ、ト…やめろ…!!それ以上、は…するなっ…!」
ようやく体が軽くなった。レイルはハッとなって会場を見ると、そこには誰も居なかった。
ダンナを1人にしてしまった。整い始めた呼吸のままオレは走り出した。
術を使おうにも不発するしで、内心苛立ちながらもダンナを探した。
周囲の人達は意識が戻り始めたのだろう、少し慌ただしくなってきていた。
ロビーに着くと、同じタイミングでエースがダンナを担いでこちらに向かって来ているのが確認出来た。
「ダンナっ!」
近寄っただけで感じ取れた。2人の間には不穏な空気が流れていた。
「下ろせよ、もういいだろ…」
エースは黙ってそれに従い、ダンナを肩から下ろした。
ダンナと目が合い、続くようにエースとも目が合った。
「ごめんレイル、単独で動いちゃったから」
「いえっ……その…ご無事で、何よりです…… エースも、久しぶり…」
少しの間、沈黙になった。リヒトの姿は見当たらず、アイツも結局どうなったのか
「…探りを入れているが、もうあの者の存在は確認出来ない」
「それよりリヒトはどうなんだよ」
ダンナはエースを鋭く睨みつけていた。少しずつ感覚が戻り、オレ自身も周辺を探ってみるが特に変わったものはなかった。
(仮にリヒトが消えたなら、オレ達にも情報が共有されるはずだが……)
それもないということは、存在はしているのだろう。そう思うのが通常ではあるのだが、アイツが関わったとなれば話は別だ
(エラーが絡む存在…最悪な事になっていても不思議じゃない)
状況を整理する為にも一度場所を変えようと提案すると、ダンナは不満そうだが頷いた。その一方で、エースは何も答えなかった。
オレの記憶が正しければ、ここまでエースの口数が少なくなる事なんてなかった。
むしろ率先してあれをしようとか、これはどうだろうとか。1番に作られた存在だからこそ、その役割を務めてくれていた。
(……3人同時に揃う事が、こんなにも難しいなんてな…)
会場近くの宿を取り、ひとまず休憩を取ることにした。
相変わらず空気は良くないが、だからといって話をまとめない訳にはいかない
「エース、話を聞かせてもらってもいいか」
「……リヒトと共に参加したんだ。勝ち抜いて、一段落ついたところで…突然、俺に似た閃光が―――」
彼の得意とする武技の基礎は閃光、この域にまで到達するためには火属性と雷属性の熟練度を最大にしなければ閃光は習得出来ない
ただ、習得するだけなら時間を掛ければ誰でも出来る。しかしダンナはそれに留まらず、全パラメーターを最大は基本
そこからまた強化する事は出来るのだが、人によっては病的だの変態的だのと言われているのは聞いたことがある。
若干話が逸れたが、彼の閃光はすぐに真似できるものではないことは確かである。
しかしそれを模倣したような閃光をアイツはダンナの姿のまま、いとも簡単にして見せたのだと語った。
同じ光景を俺は何度見ることになるのだろう、俺は何をやっているんだ
「ッ!…エー、ス!!お、ろせっ!」
担いでいる最中に背中を何度も強く叩かれていたようだった。怒鳴り声に気が付き、その場で立ち止まった。あの者が追ってくる様子はない
「リヒトの所に戻れよ!」
「それは出来ない」
「…いいからっ…下ろせってば!」
マスターは俺の腕から解放されようと暴れるが、それは許さなかった。
「俺は、リヒトに…」
リヒトは、先に俺よりも異変に気付いていた。マスターだと思っていた人が、そうでない人であることに
俺が得意とする閃光を、模倣したかのような技をこちらに向けて放った。
いち早く気付いたリヒトが俺を庇い、それをまともに受けてしまった。
(なぜマスターが、なぜ俺の技を……なぜこんなにも苦しいんだ)
困惑したが、呼吸は荒くなるし身動きも取れないしで考えもまとまらない
(リヒト……リヒトが、危険だ…)
白く染まっていくマスターを、俺は過呼吸のような状態で見つめる事しか出来なかった。
手慣れたような所作でその者はリヒトに近付いたかと思えば首を狙って、白銀の刃を喉に突き刺した。
どうしてこんな光景を、見なければならなかったのか。どうして護るべき対象である主に、こんな
「…リ、ヒト…ッ!!」
辛うじて出た声がこれだけだった。相変わらず体は動かないものの、怪我はしていないようだった。
(血が出ていないということは…… 違う!分析は後だ…!)
しかしまともに動かない体を憎たらしく感じた。どうしてこう、悔しさだけが募るばかりなのだろう
するとリヒトは体に魔術を溜め始めたのが感じ取れた。そんな事をしたらリヒトの存在が消えてしまう
「…リヒッ、ト…やめろ…!!それ以上、は…するなっ…!」
ようやく体が軽くなった。レイルはハッとなって会場を見ると、そこには誰も居なかった。
ダンナを1人にしてしまった。整い始めた呼吸のままオレは走り出した。
術を使おうにも不発するしで、内心苛立ちながらもダンナを探した。
周囲の人達は意識が戻り始めたのだろう、少し慌ただしくなってきていた。
ロビーに着くと、同じタイミングでエースがダンナを担いでこちらに向かって来ているのが確認出来た。
「ダンナっ!」
近寄っただけで感じ取れた。2人の間には不穏な空気が流れていた。
「下ろせよ、もういいだろ…」
エースは黙ってそれに従い、ダンナを肩から下ろした。
ダンナと目が合い、続くようにエースとも目が合った。
「ごめんレイル、単独で動いちゃったから」
「いえっ……その…ご無事で、何よりです…… エースも、久しぶり…」
少しの間、沈黙になった。リヒトの姿は見当たらず、アイツも結局どうなったのか
「…探りを入れているが、もうあの者の存在は確認出来ない」
「それよりリヒトはどうなんだよ」
ダンナはエースを鋭く睨みつけていた。少しずつ感覚が戻り、オレ自身も周辺を探ってみるが特に変わったものはなかった。
(仮にリヒトが消えたなら、オレ達にも情報が共有されるはずだが……)
それもないということは、存在はしているのだろう。そう思うのが通常ではあるのだが、アイツが関わったとなれば話は別だ
(エラーが絡む存在…最悪な事になっていても不思議じゃない)
状況を整理する為にも一度場所を変えようと提案すると、ダンナは不満そうだが頷いた。その一方で、エースは何も答えなかった。
オレの記憶が正しければ、ここまでエースの口数が少なくなる事なんてなかった。
むしろ率先してあれをしようとか、これはどうだろうとか。1番に作られた存在だからこそ、その役割を務めてくれていた。
(……3人同時に揃う事が、こんなにも難しいなんてな…)
会場近くの宿を取り、ひとまず休憩を取ることにした。
相変わらず空気は良くないが、だからといって話をまとめない訳にはいかない
「エース、話を聞かせてもらってもいいか」
「……リヒトと共に参加したんだ。勝ち抜いて、一段落ついたところで…突然、俺に似た閃光が―――」
彼の得意とする武技の基礎は閃光、この域にまで到達するためには火属性と雷属性の熟練度を最大にしなければ閃光は習得出来ない
ただ、習得するだけなら時間を掛ければ誰でも出来る。しかしダンナはそれに留まらず、全パラメーターを最大は基本
そこからまた強化する事は出来るのだが、人によっては病的だの変態的だのと言われているのは聞いたことがある。
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