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白き其の者
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俺の見間違いじゃなければ、レイルにかばわれる前に見た眩しい光はエースが放つ閃光とはまた別のものだったように見えた。
(何が起きてるか分からないけど、嫌な予感がする…!)
通り過ぎた人達全員の様子が変だった。まるで生きる気力を奪われ、意志を奪われたかのような状態になっている。
アイツが何かしたんだ、嫌な汗が滲む。どうかまだ、最悪な状況にならないでいてほしいと思いながら駆ける。
運動は得意な方だったけど、やはり社会人になってからは仕事をするかゲームをするかだけだったのもあって体が思うようには動かない
それでも、これは良くないという勘が働く。会場までの入口が見えてきた。やはり誰も俺を止めようとはしなかった。
足を踏み入れ、初めに見えて来た光景に俺は一度立ち尽くしてしまった。
『ふ~… お前達は本当に、たまらないよね』
白く光る、淡いような剣で喉を突き刺された。刺された瞬間だけ、強い痛みを感じた。
「っ…!!」
だが不思議な事に、血は出ていないし痛かったのは最初だけ。唯一気掛かりなのは体が動かせないということ
どこからその剣を出して来たのかも何一つ理解出来ていないが、エースならきっと何とかしてくれる…なんて、無責任だろうか
剣ごと俺を軽々と持ち上げた。手や足は痺れているかのようで、力を込めてもほんのゆっくりとしか反応しない
「…リ、ヒト…ッ!!」
息を切らしながらもエースの悲痛な声が響いた。俺の感覚は間違ってはいなくて、やはりこの人はユヅキではなかったのだと納得した。
危険な状況だというのに、それが分かっただけでも良かったと安堵する。
「ッ…ぐ、ゔぅッ……!ああ゙あ゙ッ…!」
体全体に魔術を集めた。少し動けるのならまだ、出来ることはある。このまま集め続ければ、俺は―――。
「…リヒッ、ト…やめろ…!!それ以上、は…するなっ…!」
『お前、そんなに私の事が好きなのか。愛されているかもと思うと…イライラするね』
ぐんっと剣を引かれ、顔の距離が縮まり高めていた魔術が途切れてしまった。微笑まれたかと思えば、そのまま乱暴に振り払われる。
喉から剣が抜け、俺は背中から地面に叩きつけられた。力の入らない状態ではろくな受け身も取れなかった。
「ゔッ……!」
起き上がろうとするも、やはり力が入らない。そのまま偽者は見下ろすようにしてからしゃがみ込み、顔を覗き込んできた。
(…白く…… なってきている、のか…?)
姿形はボスなのに、髪も目も肌もすべてが雪のように白く染まり始めていた。
『好きじゃない…… 1番ムカつくんだ。…そうか、アレを私のモノにすればいいのか』
顔を出来る限り向けると、視線の先には立ち尽くす人が居た。そこには俺のよく知るボスが呆然と立っていた。
「ッ……エース…!ボスと…逃げ、ろ…… ぐっ…!」
その言葉が不服だったのか、今度は白い剣で胸を突き刺された。先程よりも身動きが取れなくなり、手足がぴくりとも動かなくなった。
エースが瞬時にボスへ近付き、ここから立ち去ったのが確認出来た。わずかな魔術で探り、この場から離れられたのだと安心した。
『なぜ私から離れようとする?アレよりも私の方が強いし?迷わないし!優れているのに… 魂しかないクセして、お前達は変だね』
何を言っているのか全く理解は出来ないが、俺達を嘲っていることだけは分かった。俺はまだいい、だがボスを馬鹿にするのは許さない
「ふ、ざけるな……人の体を…何だと思って――――」
『何って……?それより私ね、かなり状態が良くなってきた気がするんだ』
まさか、ボスやエースを追って何か危害を加えるつもりなのだろうか。そんなことは死んでもさせない
『愉しみになるよな!…そういえば君、私が好きなんだっけ?』
「…は……?」
何か納得したかと思えば、急に突拍子もないことを言い出した。話の展開について行けず、俺は固まってしまった。
『どっちでもいいか!なんか気分も良いな…あ、そうだ!私の下僕にしてあげるよ』
「さっきから、何を言って…」
目まぐるしく話題が移り変わり、ついて行けない。すべて自分中心に世界が回っているかのようだった。
違う、きっと元からそうなんだ。魔術で探ってみると、膨大な力は持っているのにどこか不安定だ
(何なんだコイツは、存在が…定まってもいない。ボスの体を奪ったのは、誰なんだ…?)
『私の為に動くんだよ』
首をゆっくりと掴み、喉の気管が狭まり息が詰まってきた。
胸に刺さったままの白い剣が原因なのか、体だけではなく手も動かせずに無抵抗でそれを受け入れる。
「っ、う!……がっ、ぁ……ゔッ、ん…!……ッ」
鼓動が悲鳴を上げている。これ以上、絞められれば喉が潰れる。
思えば俺は、ずっと情けなかったかもしれない。このような最期を迎えるなんて思わなかった。
(何が起きてるか分からないけど、嫌な予感がする…!)
通り過ぎた人達全員の様子が変だった。まるで生きる気力を奪われ、意志を奪われたかのような状態になっている。
アイツが何かしたんだ、嫌な汗が滲む。どうかまだ、最悪な状況にならないでいてほしいと思いながら駆ける。
運動は得意な方だったけど、やはり社会人になってからは仕事をするかゲームをするかだけだったのもあって体が思うようには動かない
それでも、これは良くないという勘が働く。会場までの入口が見えてきた。やはり誰も俺を止めようとはしなかった。
足を踏み入れ、初めに見えて来た光景に俺は一度立ち尽くしてしまった。
『ふ~… お前達は本当に、たまらないよね』
白く光る、淡いような剣で喉を突き刺された。刺された瞬間だけ、強い痛みを感じた。
「っ…!!」
だが不思議な事に、血は出ていないし痛かったのは最初だけ。唯一気掛かりなのは体が動かせないということ
どこからその剣を出して来たのかも何一つ理解出来ていないが、エースならきっと何とかしてくれる…なんて、無責任だろうか
剣ごと俺を軽々と持ち上げた。手や足は痺れているかのようで、力を込めてもほんのゆっくりとしか反応しない
「…リ、ヒト…ッ!!」
息を切らしながらもエースの悲痛な声が響いた。俺の感覚は間違ってはいなくて、やはりこの人はユヅキではなかったのだと納得した。
危険な状況だというのに、それが分かっただけでも良かったと安堵する。
「ッ…ぐ、ゔぅッ……!ああ゙あ゙ッ…!」
体全体に魔術を集めた。少し動けるのならまだ、出来ることはある。このまま集め続ければ、俺は―――。
「…リヒッ、ト…やめろ…!!それ以上、は…するなっ…!」
『お前、そんなに私の事が好きなのか。愛されているかもと思うと…イライラするね』
ぐんっと剣を引かれ、顔の距離が縮まり高めていた魔術が途切れてしまった。微笑まれたかと思えば、そのまま乱暴に振り払われる。
喉から剣が抜け、俺は背中から地面に叩きつけられた。力の入らない状態ではろくな受け身も取れなかった。
「ゔッ……!」
起き上がろうとするも、やはり力が入らない。そのまま偽者は見下ろすようにしてからしゃがみ込み、顔を覗き込んできた。
(…白く…… なってきている、のか…?)
姿形はボスなのに、髪も目も肌もすべてが雪のように白く染まり始めていた。
『好きじゃない…… 1番ムカつくんだ。…そうか、アレを私のモノにすればいいのか』
顔を出来る限り向けると、視線の先には立ち尽くす人が居た。そこには俺のよく知るボスが呆然と立っていた。
「ッ……エース…!ボスと…逃げ、ろ…… ぐっ…!」
その言葉が不服だったのか、今度は白い剣で胸を突き刺された。先程よりも身動きが取れなくなり、手足がぴくりとも動かなくなった。
エースが瞬時にボスへ近付き、ここから立ち去ったのが確認出来た。わずかな魔術で探り、この場から離れられたのだと安心した。
『なぜ私から離れようとする?アレよりも私の方が強いし?迷わないし!優れているのに… 魂しかないクセして、お前達は変だね』
何を言っているのか全く理解は出来ないが、俺達を嘲っていることだけは分かった。俺はまだいい、だがボスを馬鹿にするのは許さない
「ふ、ざけるな……人の体を…何だと思って――――」
『何って……?それより私ね、かなり状態が良くなってきた気がするんだ』
まさか、ボスやエースを追って何か危害を加えるつもりなのだろうか。そんなことは死んでもさせない
『愉しみになるよな!…そういえば君、私が好きなんだっけ?』
「…は……?」
何か納得したかと思えば、急に突拍子もないことを言い出した。話の展開について行けず、俺は固まってしまった。
『どっちでもいいか!なんか気分も良いな…あ、そうだ!私の下僕にしてあげるよ』
「さっきから、何を言って…」
目まぐるしく話題が移り変わり、ついて行けない。すべて自分中心に世界が回っているかのようだった。
違う、きっと元からそうなんだ。魔術で探ってみると、膨大な力は持っているのにどこか不安定だ
(何なんだコイツは、存在が…定まってもいない。ボスの体を奪ったのは、誰なんだ…?)
『私の為に動くんだよ』
首をゆっくりと掴み、喉の気管が狭まり息が詰まってきた。
胸に刺さったままの白い剣が原因なのか、体だけではなく手も動かせずに無抵抗でそれを受け入れる。
「っ、う!……がっ、ぁ……ゔッ、ん…!……ッ」
鼓動が悲鳴を上げている。これ以上、絞められれば喉が潰れる。
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