Δ 爪痕を残して

黒野すごろく

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仲間のカタチ

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突然ふらつき始めたボスを俺は抱きとめて様子を窺うと、まるで人形のように脱力していた。
目も焦点が合わず、どこを見ているのかもはっきりしていなかった。
「ボス…!」
エースは一瞬こちらを見てから剣を即座に構え、周囲の警戒にあたる。
何度も呼び掛けて軽く揺するも反応はなく、ステータスを確認すると“Error”という表示が浮かび上がる。
「…!ボス……ボスっ…!」
「動揺するな!今やれる最善の行動を取れ」
俺に叱咤した彼を見れば、白い人型の生命体と向かい合っていた。
がボスに何かしたことは間違いなかった。再びボスを見れば、先程と違って意識を取り戻していた。
瞳が合って俺は手を握った。安心はしたけれど、表情はなくこちらを見続けているだけだった。
「ボス!体は…どこか痛いところは」
ふーっと息を長く吐き出してから、わずかに口元を笑わせた。違和感を覚えたが、気の所為だろうか
「問題ないよ、ありがとう」
「…本当に―――」
念を押して聞こうとした直後に口付され、ぬるっと舌が入り込む。驚いて離せば呆然とした表情をしていた。
「どうした?もっとしようよ」
「な、何を……っ!」
首に腕をまわされ、ボスの柔らかな唇が重なって舌が伸びた。ボスの肩を押し返すと糸が繋がってからすぐに切れた。
「ボス…!こんなこと」
「嫌なのか?」
即座にふるふると小さく顔を振れば、ならいいじゃんと返される。エースの後ろ姿を確認して、またボスを見る。
「ああ…人目が気になるってこと?」
そうであり、そうでもなく。この状況が理解出来ていないのにキスされたのも1つの原因だ
「ボス、に何か」
あれ?と俺が指し示す白い生命体を見やれば、ボスは何度かまばたいた。
それからゆっくり立ち上がって、ボスがそれに近付いたと同時に消えてしまった。
「…消えたな…… マスター、無事で何よりだ」
「うん…… でも何だか疲れちゃったな、早く帰ろう」
俺達2人にボスはそう言い、来た道を戻ろうとし始めたので慌てて俺は腕を取った。
「ボス…?まだ依頼は終わってない…」
「あ、ごめん…そうだったね」
ボスを気に掛けながら周囲を調べると、やや離れた所で犬…というよりは狼に近い動物が横たわっていた。
危険の無い事を確かめながらエースはゆっくり近付き様子を窺う
「生きているな、ただ…かなり衰弱している」
「……早めに切り上げよう」
ボスの事も心配だとエースに目配せすると、彼も同意するように頷いた。武技を使って保護をしてから犬を抱えた。

2の地域へ戻ってエースと相談し、犬を預かってから依頼達成の報告をしに俺だけ集会所へと向かった。
頭に渦巻くのはボスからの唐突なキス、あの時になぜされたのか分からないままだった。
(俺とボスの感覚には差がある。ボスの生きる世界では、ああいう事も…?)
とも考えたが、それなら今までだってそういう機会はあったかもしれない
結局その真意は不明のまま、依頼達成と犬を預けて2人の待つ宿へと足早に向かった。


マスターの足取りはそこまで悪くなさそうだった。リヒトの様子も気になったけれど、問題が発生したならばきちんと言ってくれるだろう
「マスター、体に異常は」
ベッドへ座っているマスターの前で跪き、水の入ったグラスを手渡しする。
「ないよ、気に掛けてくれてありがとう」
受け取ってそのまま水を飲んだ、かと思えばボタボタと水をこぼしていた。
驚いて見ていると、服や床を濡らしながらも満足そうに飲み切っていた。
「水なのにすごくおいしいね!あっ…濡れちゃってた」
急いでタオルを取って水を拭き取る。疲れているのかもしれないと思った。
「休まれた方がいい、慣れない事をしてきたから疲労が溜まっているはずだ」
軽装になるようマスターへ促し、脱がれた服を受け取った。
そうして横になった事を確認してから移動しようとする直前に腕を引かれた。
「っ!……マスター…?」
振り返ると、そのままもう一度引っ張られてベッドになだれ込む形になった。
向かい合い、この状況を不思議に思っていると両手を頬に添われた。
そして唇が重なり、舌までもが入り込んで来た。困惑して引き剥がそうとすると、牽制するように唇を軽く噛まれた。
「…マスっ…タ…… な、んん」
くちゅりと音が鳴って、それはもっと深くなった。体力的にも優位なのは俺であるはずなのに、遠慮出来なくなってくる。
舌が絡みつつ、角度を変えたキスに脱力してしまう。マスターの求める事はなるべく応えていきたいが、いきなりこんなことになるとは
(…理解は出来ていないが、マスターが求めるなら)
しばらくして唇が離れ、ぺろっと舌で舐めるマスターの動きに気持ちが昂る。その流れで鼻先に軽いキスを落とされて目眩も起こしそうだった。
「もっとしたいな…」
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