空色リング

結衣

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3話 話し合い

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「あら、あなたは?」
「一条 想楽です。お久しぶりです」
「あなたが、一条さんの息子さん。あの時と、随分変わったご様子ね。やっぱりら都会へ行くと豪華な生活するものね」
「お母さん、なんか、不満であるの?いつもと喋り方が違うんだけど」
「別に?なにもないけど」
親子関係が特別悪いわけでもない。それどころか良好。優しい温暖な母がいつもより厳しい口調になっている。気にしないわけがない。
「よかったら、うちに上がっていく?ちょうど、ケーキを焼いてたの」
「いいんですか!?」
「えぇ、ぜひ」
そう言うと、莉緒の母はゆっくりと歩き出した。
「凛は、元気?」
「おかげさまで。とても元気です」
「そう」
「なになに!?想楽のお母さんとお母さんて知り合いだったの!?」
「まーね。親友の方が正しいかしら?」
莉緒の母親と想楽の母親は中学生時代からの親友だった。その仲の良さは、町でもとても有名で、誰もが認める仲の良さだった。
「急にいなくなったと思ったら急に戻ってくるんですもの。びっくりだわ」
「あはは。そうですね」
少し嬉しそうに、少し呆れたように莉緒の母は語った。

「狭いけど、ゆっくりしていってね。莉緒、お茶、運んできて。」
「またパシリ~!?」
「いいの!はい!行った行った!」
「チェー」
文句を言いながらも莉緒は台所の方へと向かった。

「ねえ、想楽くん」
「はい」
「わたしが、なぜあなたを呼んだか、検討はついてるんでしょ?」
「…はい」
想楽はいきなり元気がなくなり、下を見た。
「凛は、どういう状態なの?生きてるのよね?」
「立てるのがやっとの状態です。父が意識を失ってから、色々なことに手が回らなくなっちゃって」
「どうしてここへ、戻ってきたの?」
「僕の提案なんです。田舎に戻ってゆっくりしたら気が休まるんじゃないかと思って」
暗く重い口調で話す想楽の姿は、誰も見たことがない彼のようだった。
「なにか、できることは、ある?」
「ありがとうございます。でも、今は、誰なも合わない方がいいと…」
「...え?」
隠れて聞いていた莉緒は、事の重大さを、あまり分かっていなかった。
「そう。わかったわ」
「はい」
「…お茶!くんできたよ!」
「「ありがとう」」
莉緒の母と想楽が同時に言う。
「そういえば、莉緒の父さんは?」
「単身赴任で海外に行ってる~」
ケーキをほお張る莉緒の顔に、想楽は爆笑する。
「そんな、大口でほお張る女子、初めて見た!」
「ちょっと、莉緒!人様の前でなんと事を!」
「想楽だったら、別にどーでもいーや」
「もー、この子ったら」
莉緒の母は、呆れたようにため息をつく。
『ピーンポーン』
チャイムが鳴った。
「はーい」
莉緒の母が出る。
「り...凛!!」
「ご無沙汰ね、香織。元気?」
「こっちのセリフよ!今まで、なにやってたの!」
「何やってた?何もやってないわよ(笑)結婚して、東京行って、戻ってきた」
想楽の母親·凛は、見事なくらいやつれていた。
「ありがとう、香織。想楽、上がっちゃって」
「大丈夫よ!そんなことより、上がっていかない?」
「いいの?ありがとう」
少し飲んで、間が空いた。この空間、前にもあったような気がする。あれは、想楽が引っ越す前のこと。
『「それは、行かないという選択肢はないの?」
「…ない」
「私は、親じゃないけど、親のように接してきた。あなたの面倒を見てきた。あなたがいなくなるのは私にとっても寂しい。なんで、あんな男に凛を取られなきゃいけないわけ?」
「あの人は悪くないの。わたしが、全て決めたことだから」
紅茶を一口、口に含むと香織の説教が始まる。凛は、紅茶を少しだけ飲んで、無言になった。
「なんで、わざわざ東京なんかに...。もっと別の転勤場所はないの?」
「ないの。そこで、働いてみたいってあの人が」
「想楽くんのことも考えた?想楽くん、1人なのよ?寂しいかなとか、感じないわけ?」
「小さい子は、すぐその環境になれるんだって。だから、大丈夫」
「そんなの!ただの言い訳じゃな…」
「言い訳でもいいの。これが私の決めた答え。誰にだって口答えされたくない。いくら、大の親友の香織にも」』
あれから、お母さんはしばらく、凛凛凛と想楽のお母さんの名前を何回も呼んでいた。
「あはは!爆笑!母さん、愛されてんなー」
「そんなに仲良かったんだねーって今でもつくづく思うよ」
「俺も聞いてたよ。莉緒のお母さんのこと。毎日、ごめんねごめんねって謝ってた」
「やっぱり、親友テレパシーは最強だね」
「だな」
2人は大爆笑して、その場に倒れ込んだ。

「ありがとう、香織。」
「また改めて、2人でお茶にでも」
「うん」
お母さんにも想楽のお母さんにも、涙を流した跡があった。きっと、2人で思い出話でもして泣いてしまったんだろう。
「想楽くんも、凛も成長したね」
「想楽なんか、大人になってるよ」
「そう?変わってないように見えたけど?」
「えー、全然ちがーう」
莉緒は、星空を見ながら叫んだ。
「あれ?今日、星、綺麗に見えるね」
「あら、そう?いつもと変わらないけど?」
そう言って、香織はすたすたと家の中に入っていった。
(こんなに綺麗に見えるなんて...生まれて初めての経験かも)
その日の夜の星空はとても綺麗に見えた気がした。まるで、恋をしたかのように
「こ、、、恋!?私が!?誰に!!!!」
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