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第一部
第2章:山崎の敗戦
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1
天正十年六月十三日——山崎の戦い、決着。
明智光秀率いる軍勢は、羽柴秀吉の猛攻を受け、総崩れとなった。
「退け! 退けえぇぇ!」
武将たちの叫びもむなしく、兵たちは恐怖に駆られ、無秩序に山道を駆けていく。
粟井義道もまた、その中にいた。
だが、彼の目は敗走する兵たちではなく——戦場の中央に注がれていた。
本陣が落ちたのだ。
明智光秀が、もはや"天下人"ではなく、"敗者"となった瞬間だった。
2
「光秀様……どこへ向かわれるのですか?」
義道は、敗走する光秀の背中を見つめながら馬を駆った。
光秀はわずかに振り返ると、静かに言った。
「坂本城へ帰る……まだ終わりではない……」
声には、まだ武将としての矜持が残っていた。
しかし、その表情には焦りと迷いが見えた。
義道は、その姿を見て悟った。
光秀様は、敗北を認めていない。
だが、現実は非情だ。
「秀吉がこのまま引くとは思えません……」
義道が言うと、光秀は黙ったまま馬を進めた。
そこへ——
「殿! お逃げください!」
斎藤利三が駆け寄ってきた。
「坂本城はもう持ちませぬ! このままでは討たれます!」
光秀は険しい顔をしながらも、ついに馬の歩みを止めた。
「……ならば、どこへ逃れよと?」
その言葉に、義道は決断を迫られた。
自分は、まだ光秀に忠義を尽くすべきなのか——。
それとも——
3
そのとき、背後から蹄の音が響いた。
「……追手か!」
秀吉軍の騎馬武者たちが、敗残兵を討つべく迫っていた。
「もはやこれまで……!」
斎藤利三は、光秀の前に立ち、剣を抜いた。
「殿、ここはお任せを! 今のうちに、お逃げください!」
「しかし——」
「坂本城へ! この者たちは必ず食い止めます!」
光秀はしばし迷ったが、やがて無言で馬を走らせた。
義道もまた、その場に残るか迷ったが——
剣を握る手が、止まった。
「……俺の役目は、終わったのかもしれない」
そして、彼は剣を鞘に収め、森の奥へと消えた。
この瞬間——
粟井義道は、明智家の家臣であることを捨てた。
4
その夜——
義道は、ある村の小屋で傷の手当をしながら、光秀の運命を案じていた。
📡 「光秀様は、坂本城へ戻れたのか……?」
しかし、数日後——
📡 「明智光秀、小栗栖にて討死!」
その報せが、彼の耳に届いた。
義道は、ただ静かに目を閉じた。
「……光秀様……」
主は死んだ。
では、自分は何のために生きるのか?
戦乱の中で、彼の新たな旅が始まろうとしていた——。
(第2章・了)
天正十年六月十三日——山崎の戦い、決着。
明智光秀率いる軍勢は、羽柴秀吉の猛攻を受け、総崩れとなった。
「退け! 退けえぇぇ!」
武将たちの叫びもむなしく、兵たちは恐怖に駆られ、無秩序に山道を駆けていく。
粟井義道もまた、その中にいた。
だが、彼の目は敗走する兵たちではなく——戦場の中央に注がれていた。
本陣が落ちたのだ。
明智光秀が、もはや"天下人"ではなく、"敗者"となった瞬間だった。
2
「光秀様……どこへ向かわれるのですか?」
義道は、敗走する光秀の背中を見つめながら馬を駆った。
光秀はわずかに振り返ると、静かに言った。
「坂本城へ帰る……まだ終わりではない……」
声には、まだ武将としての矜持が残っていた。
しかし、その表情には焦りと迷いが見えた。
義道は、その姿を見て悟った。
光秀様は、敗北を認めていない。
だが、現実は非情だ。
「秀吉がこのまま引くとは思えません……」
義道が言うと、光秀は黙ったまま馬を進めた。
そこへ——
「殿! お逃げください!」
斎藤利三が駆け寄ってきた。
「坂本城はもう持ちませぬ! このままでは討たれます!」
光秀は険しい顔をしながらも、ついに馬の歩みを止めた。
「……ならば、どこへ逃れよと?」
その言葉に、義道は決断を迫られた。
自分は、まだ光秀に忠義を尽くすべきなのか——。
それとも——
3
そのとき、背後から蹄の音が響いた。
「……追手か!」
秀吉軍の騎馬武者たちが、敗残兵を討つべく迫っていた。
「もはやこれまで……!」
斎藤利三は、光秀の前に立ち、剣を抜いた。
「殿、ここはお任せを! 今のうちに、お逃げください!」
「しかし——」
「坂本城へ! この者たちは必ず食い止めます!」
光秀はしばし迷ったが、やがて無言で馬を走らせた。
義道もまた、その場に残るか迷ったが——
剣を握る手が、止まった。
「……俺の役目は、終わったのかもしれない」
そして、彼は剣を鞘に収め、森の奥へと消えた。
この瞬間——
粟井義道は、明智家の家臣であることを捨てた。
4
その夜——
義道は、ある村の小屋で傷の手当をしながら、光秀の運命を案じていた。
📡 「光秀様は、坂本城へ戻れたのか……?」
しかし、数日後——
📡 「明智光秀、小栗栖にて討死!」
その報せが、彼の耳に届いた。
義道は、ただ静かに目を閉じた。
「……光秀様……」
主は死んだ。
では、自分は何のために生きるのか?
戦乱の中で、彼の新たな旅が始まろうとしていた——。
(第2章・了)
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