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親友
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——トルネア王国にて
黒いローブを羽織った男が、古びた石室の中央で祈りを捧げている。
だが一日が過ぎ、夜が明けても、魔法陣には何の反応もない。
「ちっ」
男は、舌打ちをして去って行った。
***
浜田雄二、16歳。高校二年生。
成績はそれなりだけど、クラスのカーストは下の方と言ってもいい。
このクラスにいじめはないけれど、陰キャと陽キャははっきり分かれている。
アニメやゲームが好きな人種は、どうしてもクラスで上位には行きづらい。
何だかんだで話してみればアニメやゲームが嫌いな男子はそんなにいないのだが、女子受けを考えてなのか本当に体を動かす方が好きなのか、あまりアニメやゲームが趣味だと公言する人はいない。
それでも僕には、友達がいる。
クラスの下の方と言っても、3人いれば別に苦でもない。
僕と田中幸助、渡会公男の三人は、一緒にアニメやゲームを楽しむ仲間として休み時間はいつも一緒にいる。
休み時間に1人でいるのは恥ずかしいからそれを避けられるのは助かるけれど、それ以上に心行くまでアニメやゲームの話ができる友人の存在が嬉しかった。
ただ好きなものの話をしているだけで、お互いを助け合ったり悩みを打ち明け合ったりしたわけではない。
そういう意味では、親友と呼べるかどうか分からない。
何かを一緒に乗り越えたり、涙を流したり、喧嘩をして仲直りしたりするのが親友ではないかと思うからだ。
ただ単にお互いの好きなものを言い合って、大きな喧嘩をすることもなくなんとなく楽しいから一緒にいる。
この二人が親友かどうかと言われると、僕にはよくわからない。
親友というものは、学校を卒業した後も連絡を取り合ったりしているものではないのか?
僕たちは、3年になってクラスが別になったらそれきりのような気もする。それは親友と呼ぶには物足りないだろう。
そんなことを考えながらも、僕はこの二人と一緒にいる。
他に一緒にいる相手もいないし、この二人と一緒にいると楽しいからだ。
アニメの話をしている僕たちを、特に女子は蔑んだような目で見てくる。
それでも僕は、彼女を作るよりもこいつらと一緒にいるほうが楽しいと思って毎日を過ごしていた。
そんなある日、突然渡会が「相談があるんだ」と言ってきた。
今までにないシリアスな顔と展開に少しワクワクしながら、僕と田中は渡会について行く。
そこで渡会は、僕たちに「小森さんを好きになった」と言ってきた。
こいつは僕と違って彼女が欲しかったらしい。
でもまあ、人を好きになる時ってそういうものかもしれない。
もちろん僕も田中も渡会の恋を応援することを誓ったが、その女子はカーストの上位なので難しいんじゃないかと思っていた。
だから、渡会がその女子に話しかけようとした時は見ていられなかった。
分を超えたことをしようとする人を見るのは、何となく共感性羞恥のようなものが働く。
だが、次の瞬間嘲るような笑い声が聞こえると目を背けてはいられなかった。
「お前みたいなのが小森に話しかけてんじゃねーよ」
「おどおどしてどもっちゃってるじゃん」
「てか、隣の席だから教科書見せてもらっただけなのに何か勘違いしちゃった?」
そんな風に渡会が馬鹿にされているのを見ると、僕の中には怒りの感情が湧き上がってきたんだ。
そうして、僕と田中は同時に立ち上がっていた。
「話しかけただけで馬鹿にすることないだろ!」
「自分たちが偉いとでも思ってんのか!」
そう言いながら、僕たちは渡会の前に立つ。
うつむいていた渡会が顔を上げた時、僕は足を払われて尻もちをついた。
そこでまた笑いが巻き起こる。
「この程度で尻もちついちゃって、弱えーの」
「何だ俺たちに楯突こうってのか?」
そう言って何人かの男子が僕たちを取り囲む。
それでも僕らは、相手をにらみ返したんだ。
だってこのまま馬鹿にされるのは我慢できないから。
「お、なんだよその反抗的な目は」
それから、僕たちは抵抗もできずに殴られていた。
うずくまって体を守っていたから大きな怪我をすることはなかったけど、結局何もできない自分を惨めに思った。
その場面はチャイムによって終わりを告げられ、僕たちは自分の席に戻る。
次がその日最後の授業だったのはラッキーだったのかもしれない。
授業が終わると、あいつらは僕らを構うよりも遊びを優先したいらしくすぐに教室から出て行った。
僕たち3人は顔を見合わせ、少し笑ってから一緒に帰った。この時、僕は友達との絆を感じた。
その瞬間、僕は“何かが変わる前触れ”のような予感を覚えた。
そして、その帰り道で僕は、猫を助けようとしてトラックに轢かれた。
——光のトンネルの中を通っているような感覚。
……誰かに呼ばれたような?
——気が付くと僕は、見知らぬ場所で寝そべっていた。
黒いローブを羽織った男が、古びた石室の中央で祈りを捧げている。
だが一日が過ぎ、夜が明けても、魔法陣には何の反応もない。
「ちっ」
男は、舌打ちをして去って行った。
***
浜田雄二、16歳。高校二年生。
成績はそれなりだけど、クラスのカーストは下の方と言ってもいい。
このクラスにいじめはないけれど、陰キャと陽キャははっきり分かれている。
アニメやゲームが好きな人種は、どうしてもクラスで上位には行きづらい。
何だかんだで話してみればアニメやゲームが嫌いな男子はそんなにいないのだが、女子受けを考えてなのか本当に体を動かす方が好きなのか、あまりアニメやゲームが趣味だと公言する人はいない。
それでも僕には、友達がいる。
クラスの下の方と言っても、3人いれば別に苦でもない。
僕と田中幸助、渡会公男の三人は、一緒にアニメやゲームを楽しむ仲間として休み時間はいつも一緒にいる。
休み時間に1人でいるのは恥ずかしいからそれを避けられるのは助かるけれど、それ以上に心行くまでアニメやゲームの話ができる友人の存在が嬉しかった。
ただ好きなものの話をしているだけで、お互いを助け合ったり悩みを打ち明け合ったりしたわけではない。
そういう意味では、親友と呼べるかどうか分からない。
何かを一緒に乗り越えたり、涙を流したり、喧嘩をして仲直りしたりするのが親友ではないかと思うからだ。
ただ単にお互いの好きなものを言い合って、大きな喧嘩をすることもなくなんとなく楽しいから一緒にいる。
この二人が親友かどうかと言われると、僕にはよくわからない。
親友というものは、学校を卒業した後も連絡を取り合ったりしているものではないのか?
僕たちは、3年になってクラスが別になったらそれきりのような気もする。それは親友と呼ぶには物足りないだろう。
そんなことを考えながらも、僕はこの二人と一緒にいる。
他に一緒にいる相手もいないし、この二人と一緒にいると楽しいからだ。
アニメの話をしている僕たちを、特に女子は蔑んだような目で見てくる。
それでも僕は、彼女を作るよりもこいつらと一緒にいるほうが楽しいと思って毎日を過ごしていた。
そんなある日、突然渡会が「相談があるんだ」と言ってきた。
今までにないシリアスな顔と展開に少しワクワクしながら、僕と田中は渡会について行く。
そこで渡会は、僕たちに「小森さんを好きになった」と言ってきた。
こいつは僕と違って彼女が欲しかったらしい。
でもまあ、人を好きになる時ってそういうものかもしれない。
もちろん僕も田中も渡会の恋を応援することを誓ったが、その女子はカーストの上位なので難しいんじゃないかと思っていた。
だから、渡会がその女子に話しかけようとした時は見ていられなかった。
分を超えたことをしようとする人を見るのは、何となく共感性羞恥のようなものが働く。
だが、次の瞬間嘲るような笑い声が聞こえると目を背けてはいられなかった。
「お前みたいなのが小森に話しかけてんじゃねーよ」
「おどおどしてどもっちゃってるじゃん」
「てか、隣の席だから教科書見せてもらっただけなのに何か勘違いしちゃった?」
そんな風に渡会が馬鹿にされているのを見ると、僕の中には怒りの感情が湧き上がってきたんだ。
そうして、僕と田中は同時に立ち上がっていた。
「話しかけただけで馬鹿にすることないだろ!」
「自分たちが偉いとでも思ってんのか!」
そう言いながら、僕たちは渡会の前に立つ。
うつむいていた渡会が顔を上げた時、僕は足を払われて尻もちをついた。
そこでまた笑いが巻き起こる。
「この程度で尻もちついちゃって、弱えーの」
「何だ俺たちに楯突こうってのか?」
そう言って何人かの男子が僕たちを取り囲む。
それでも僕らは、相手をにらみ返したんだ。
だってこのまま馬鹿にされるのは我慢できないから。
「お、なんだよその反抗的な目は」
それから、僕たちは抵抗もできずに殴られていた。
うずくまって体を守っていたから大きな怪我をすることはなかったけど、結局何もできない自分を惨めに思った。
その場面はチャイムによって終わりを告げられ、僕たちは自分の席に戻る。
次がその日最後の授業だったのはラッキーだったのかもしれない。
授業が終わると、あいつらは僕らを構うよりも遊びを優先したいらしくすぐに教室から出て行った。
僕たち3人は顔を見合わせ、少し笑ってから一緒に帰った。この時、僕は友達との絆を感じた。
その瞬間、僕は“何かが変わる前触れ”のような予感を覚えた。
そして、その帰り道で僕は、猫を助けようとしてトラックに轢かれた。
——光のトンネルの中を通っているような感覚。
……誰かに呼ばれたような?
——気が付くと僕は、見知らぬ場所で寝そべっていた。
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