異世界転移したのにテレパスしか使えない僕は、誰を信じればいいんだろう

ぐりとぐる

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異世界

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「ここは、どこだ?」

そうつぶやいたが誰も答えるはずもない。
僕は、草原で寝そべっている。とてもいい天気だ。

そして僕は、絶対学生服ではないものを身に着けている。
少し体を動かす度にジャラジャラという音がする。
高校の制服には、こんなに金属はついていない。

ヤンキーはチェーンを財布につけているという噂が本当であれば、こんな音がしてもおかしくないだろう。
でも、上半身の重さはチェーンだけのものではない。
そして、最も違和感があるのが腰だ。
そこに目をやると、剣のようなものが腰に結わえ付けられている。

そこまで確認してから、僕は体を起こした。
現実逃避をしているのにも限界がある。
どうしてただの高校生だった僕が、こんな見たこともない場所で騎士のような恰好をしているのか。

とりあえずやることがないので剣を触ってみる。
恐る恐るそれを抜いてみたりもする。少しだけ鞘から出してみる。

「鞘から抜いたら銃刀法違反、とかにならないよな」などと思いながら少しずつ刀身を露出させる。
そして完全に抜いてから試しに振ってみるが結構重い。

帰宅部でろくに体も鍛えていない僕に剣は重過ぎた。
ただ他にやることもないので、何度か剣を抜いたり仕舞ったりした後に周りを見回してみた。

大きな木が一本あって、その根元に近い位置で僕は目覚めた。
僕は普通の高校生に過ぎないが、これがおかしなことだというのはすぐにわかる。

ただ、田中が好きな小説でこんな展開は読んだことがある。
異世界転生という奴だ。

体を起こして周りを見渡してみても、日本とは思えないほどのどかな風景が広がっている。
眼下には壁があり、門が開いている。
出たり入ったりする人がまばらにいて、門番らしき人も立っている。

どう見ても今の日本に存在するような風景ではない。
そこまで見て取った後、僕は何をするべきか考えたが何も思いつかない。
というか、僕はここにいていいのかどうかもわからないし、ここでの僕は何なのかもわからない。

仕方ないのでもう少し寝転がっていようと決心した時、頭の中で声がした。
聞き覚えはあるけど実際には聞いたことのない声。

それは泣き声だった。僕の両親、そして田中と渡会の声も聞こえる。

みんなが泣いている。

そういえば、日本での最後の記憶は猫を助けるために車の前に飛び出したことだ。
だとすると、僕は死んでしまったんだろう。
だから、こんな訳の分からないところに寝そべっている。

そして両親が泣いている。田中と渡会も、泣いてくれているのか?
でも、その声が聞こえるのはどういうことだろう。

それ以前に、ここは本当に異世界なのか?
とにかく誰かを探して話を聞かないと、今の状況が何もわからない。


そんな時に、女性の悲鳴が聞こえた。

「助けて!」と叫びながらまっすぐこっちに向かってくる。
その後を、屈強な男が3人で追っている。

田中が貸してくれた小説では、こんな時は当然のように女性を助けていた。
そして、異世界転生した主人公には特別な力が与えられている。

だが、僕にそんなものがあるのかどうかわからない。
いやさっきの剣の感触からすると、体力自体は特に変化していない。

それでも、女性はまっすぐ僕のほうに走って来る。
以前と変わらない力しか持っていない僕は、身に着けているものの重さのために逃げることもできない。

そこで僕は仕方なく剣を構え、立ち上がる。
女性は僕の後ろに回り込み、僕は追っ手に対峙する。

絶対まともに扱うことはできないだろうと思いながらも、僕はそれ以外にできることがないので剣を構える。
だが、別に戦うつもりはなかった。
そもそも僕は何も悪いことはしていない。

悲鳴を上げて助けを求めてはいるが、だからといってこの女の子が正しいとは限らないのだ。
とりあえず話を聞いてみよう、と僕は思った。

だが、事態は思わぬ方向に進展していく。
屈強な男たちは、僕に怖気づいたのかすぐに回れ右をして逃げて行ったのだ。

「え?」

僕は戸惑うしかなかった。
いくら剣を持っていると言っても、かなりのへっぴり腰なのではないかと思う。
それなのに、3人の屈強な男が僕を見るだけで逃げていったのだ。

やはり僕にも何か特別な能力が授けられているのだろうか。
まだ鏡を見ていないけれど、すごく強そうな見た目になっているのかもしれないし、やっぱり何かすごい力が与えられているのかも。

そうでなければ、どうしてここに自分がいるのかもわからないじゃないか。
僕には、ここでやるべきことがあるはずだ。
——この世界を救うとか?

そんなことを考えつつも、やはり女の子のことも気になる。
「助けて」という声を聞いた時の僕の中には、助けたいという気持ちがあった。

恐怖や保身の気持ちも芽生えたけれど、女の子を助けることに憧れの気持ちも抱いていたのだ。
そして、いざ安心な状態になるとやはり年頃の男性としての意識が持ち上がる。

僕が助けた女の子は、年齢は僕と同じくらいだろうか。
その女の子はとても可愛らしく、そして露出の高い服を着ていた。
高校でも制服のスカートを短くしている子はいたけれど、それと同じくらいの丈しかない。

と言うか、よく見てみるとみすぼらしいような格好でさえある。
衣服と言うよりずだ袋に穴を開けて被っているという感じなのだ。
ただ、手には杖のようなものを持っている。

思春期の僕は、女の子をじろじろ見ていると思われないように視線を逸らしつつその子の様子を窺った。

「ありがとう、助かったよ」

その女の子は、屈託のない笑顔でそう話しかけてきた。
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