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嫌悪感
しおりを挟むこれは雄二の知らないところでの話。
エリナは、リィナの部屋を訪れた。
「リィナ、ちょっと話したいことがあるんですの」
「どうしたの?」
エリナは、少し顔を赤くして言った。
「私、ユージ様に恋をしたみたいですわ」
前から何度もそれを聞いてきたリィナは、やはりと思いながらショックも受けていた。
今までずっとエリナはそれをやんわりと否定してきていたから、それが変わるのが怖かったのだ。
エリナは、ずっと「好ましいけれどまだ恋愛感情ではない」というスタンスだった。
それが、変わってしまったのだ。
「3人組に絡まれた時?」
リィナは、エリナに聞いた。
「そうですわね。決して格好良くはありませんでしたが、一生懸命私を守ろうとしてくれましたの」
「……私があそこにいたら、ユージに手を出させるまでもなく蹴散らしたのに……」
リィナは、震えながら声をこぼす。
「リィナ……あなたを放ったらかしてユージ様に溺れたりはしませんわ。ただ、知っておいてほしかっただけですの。今すぐ何かが変わるわけじゃありませんもの……」
エリナは、リィナが今の状態を続けたいと思っていることを理解している。
それでも、みんな年を取っていくのだ。
変わらずにいるわけにはいかない。それを、リィナにも知って欲しかった。
そして、自分の気持ちも。
リィナは、動揺を抑えようと平静を装った声で言った。
「うまくいくといいね……」
瞳からは、涙がこぼれそうになっている。
そんなリィナに、エリナは声をかけずにいられなかった。
「リィナ、私はユージ様よりリィナの方が大事ですわよ」
そう言われた時、リィナは弾かれたように顔を上げた。
その瞬間、瞳から涙がこぼれる。
「そんなこと望んでるんじゃないよ!エリナには幸せになって欲しいの!私はエリナの邪魔になりたくないの……!」
エリナは、リィナを抱き締める。
「分かってますわよ。私は幸せになりますわ。そして、リィナも幸せになるんですの。こっちの世界で、必ず。リィナを邪魔だなんて思いませんわ、何があっても」
そして、付け加える。
「みんなで、幸せになるんですのよ」
***
僕は、カイウス様に呼び出された。
治水についての会議に出て欲しいとのことだった。
みんなから慕われているカイウス様に頼りにされるのは、とても自尊心が満たされる。
正直な話、カイウス様と直に話せるだけで自分が特別だという気持ちになれた。
ただの高校生だった僕が、この世界ではすごく大きなことをやっているのだ。
——それなのに、なぜか最近はカイウス様の言葉が素直に受け取れない。
「異世界の知識を教えてくれるユージ君は得難い存在だ」
などと言われると、カイウス様に必要なのは田中と渡会で僕じゃないんだろうなどと考えてしまう。
この日も、「異世界から来た~」という言葉がやけに癇に障った。
気づいた時には、声が出ていた。自分でも驚くほど強い声で。」
「僕個人に用はないんですよね!」と声を荒げてしまった。
場は凍り付き、気まずい空気が流れる。
「すみません、少し疲れてるみたいです」
そう言って、僕は会議室を出た。
この違和感は何だろう。なぜこんなに腹が立つのだろう。
***
黒ずくめのローブの男は、雄二の後をつけている。
家の場所はとうの昔に突き止めているし、カイウス様の下に出仕していることもわかっている。
「思ったよりも良い状況だな」
黒ずくめの男は、ニヤニヤしながらつぶやく。
「そろそろ……か?」
黒ずくめの男は、自分の悲願を果たせる時が近いと感じていた。
そのために必要な存在……。
黒ずくめの男は、雄二の肩を叩く。
「君は、この世界の人じゃないよね?」
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