異世界転移したのにテレパスしか使えない僕は、誰を信じればいいんだろう

ぐりとぐる

文字の大きさ
22 / 37

違和感

しおりを挟む
僕は、カイウス様に感謝している。
自分に害をなす者と言われている僕に、カイウス様はとても良くしてくれている。

僕が暮らしていくのに不自由がないよう、何かと気を使ってくれる。
お金も支給してくれた。

リィナやエリナにとっても、カイウス様は恩人だろう。
だから出会った時のリィナが、そのカイウス様に害をなすと言われた僕に良い感情を持たなかったのも当然と言える。

どうして僕がこの世界に来たのか、それは分からない。
日本での僕は、交通事故で死んでしまった。それは確かだ。

次に目が覚めた時、僕はこの世界にいた。
もしもカイウス様が領主じゃなかったら、僕はすぐに二度目の死を迎えていたのかもしれない。

僕のことをすぐに受け入れてくれたカイウス様に、僕は恩義を感じている。
だから、疫病や水害の時に田中と渡会に頼った。

その時の提言は、役に立ったと思う。
カイウス様に感謝されると、僕の方が面映ゆくなる。

今はリィナやエリナとも仲良くしていて、とても楽しい毎日を過ごしている。
これも、カイウス様が僕を受け入れてくれたからだ。

……なのに、最近カイウス様に何か違和感を抱くことが増えている。
ハッキリとしたことは分からない。
だけど、言葉の端々や態度の片隅に違和感——いや、嫌悪感のようなものを抱いてしまうのだ。

***

今日、僕はリィナとエリナと堤防の工事を視察しに来ている。
僕自身も「信玄堤」というものを見たことはないが、田中と渡会に聞いた知識で必死に理解しようとしている。

水害を防ぐための工事において、この世界では僕が一番のエキスパートなんだ。
……エキスパートじゃないといけないんだ。

これはかなりのプレッシャーだった。
ついこの間まで、僕はただの高校生だったのだからそれは仕方がないと思う。

それでも、この世界でそんな言い訳は通用しない。
僕は、カイウス様のためにも頑張ろうと思った。……でも。

最近の違和感を、僕はエリナに相談してみた。
リィナの方が快活で豪快に見えるけど本当は繊細だから、カイウス様を否定するようなことを言うとどんな反応をするか分からないから。

「エリナ、最近のカイウス様って何か変じゃないか?」

「……?そうですか?どういうところが?」

「うーん、具体的には分からないけど、何となく違和感があるんだ」

「私は何も感じませんが……ユージ様がそう言うなら何かあるのかもしれませんわね。少し気にして見てみますわ」

「ありがとう」

エリナは僕に好意的に接してくれているし、察しがいいからとても相談しやすい。
リィナに対する態度を見ても、すごく優しい子なのがよくわかる。

そうして2人で話している時、突然3人組の男が僕たちを取り囲んだ。

「お二人さん、随分楽しそうだねえ」
「俺たちにもその幸せを分けてくれねえかなあ」
「お前ら見てるとムカつくんだよ」

……これは、向こうの世界にもいたチンピラという奴か。
僕は絡まれているらしい。初めての経験だから、どうしても足が震える。

それでも、僕はエリナを守りたかった。
剣術の練習をしているのは、こういう時に誰かを守りたいからだ。
リィナに初めて会った時の状況で、演技ではなく本当に守れるように。

ただ、それだけではなかった。
その三人組の男は、みんな黒い服で黒い髪を肩まで伸ばしていた。

——それは、カイウス様と同じ装い。
日本のハロウィーンなら、カイウス様のコスプレだと周りに思われるだろう。

その相手に対して、僕はなぜか強い苛立ちを感じた。
もちろん絡まれているのだから、好感情を持つわけはない。
だが、普通なら怖くなるはずだ。実際膝は震えている。それなのに、憎悪が先に立った。

頭で考えるより先に、僕は護身用の短剣を懐から出した。
そして、相手に斬りかかる。

「え!?」

一人の男の腕から血がほとばしる。
自分たちが主導権を握っていると思い込んでいた三人は、いきなり斬りかかられて混乱している。

「な、なんだこいつ!」
「待てって、おい!」

相手が何か叫んでいるが、僕は怒りに任せて短剣を振るう。
その勢いに恐れを抱いたのか、三人組は逃げて行った。
一瞬僕も追いかけそうになったが、エリナのことを思い出した。

「大丈夫?」

と声をかける。

「ありがとうございました。……随分お強くなられたのですね」

エリナが僕を褒めてくれる。それは、すごく嬉しい言葉だった。

「ううん、まだまだだよ。でも、エリナを守らなきゃって思ったんだ」

僕は、照れ隠しのようにそう言った。
それは本心だ。その気持ちは確かにあった。

だけど……あの三人に対する憎悪も確かにあった。
——いや、そっちの方が大きかったのかもしれない。

僕は、自分自身に違和感を抱いた。
何か不自然な感情が、僕の中に芽生えている。

その時、リィナが戻ってきた。

「大丈夫だった!?騒ぎを聞きつけて戻ってきたんだけど」

あの三人に絡まれた騒ぎは、結構大きくなっていたようだ。

「ええ、ユージ様が追い払ってくれましたわ」

エリナがそう言ってくれた時、僕は少し誇らしい気持ちになった。

「私がいればもっと鮮やかに追い払ってあげたのに」

リィナが本気で悔しそうに言う。確かに、僕とエリナとリィナの三人ならリィナが一番強いだろう。

「僕だって剣術を習ってるんだからな」

そう言いながら「早くリィナより強くなってみんなを守れるようになりたい」と僕は思った。

***

「やはり伝承のとおりだな」

黒ずくめの男は、くつくつと笑いながら雄二を見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

蝋梅
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

婚約破棄された悪役令嬢、手切れ金でもらった不毛の領地を【神の恵み(現代農業知識)】で満たしたら、塩対応だった氷の騎士様が離してくれません

夏見ナイ
恋愛
公爵令嬢アリシアは、王太子から婚約破棄された瞬間、歓喜に打ち震えた。これで退屈な悪役令嬢の役目から解放される! 前世が日本の農学徒だった彼女は、慰謝料として誰もが嫌がる不毛の辺境領地を要求し、念願の農業スローライフをスタートさせる。 土壌改良、品種改良、魔法と知識を融合させた革新的な農法で、荒れ地は次々と黄金の穀倉地帯へ。 当初アリシアを厄介者扱いしていた「氷の騎士」カイ辺境伯も、彼女の作る絶品料理に胃袋を掴まれ、不器用ながらも彼女に惹かれていく。 一方、彼女を追放した王都は深刻な食糧危機に陥り……。 これは、捨てられた令嬢が農業チートで幸せを掴む、甘くて美味しい逆転ざまぁ&領地経営ラブストーリー!

処理中です...