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贖罪
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「私は、あなた様に会う前にユージ様とリィナ様にあって謝罪をさせていただきました」
ユージに会ったらまたカイウスに対する憎悪が再燃するのではないかという懸念があったが、護衛兵がいれば大丈夫ということでそれが実現した。
「その際、リィナ様に父の気を感じました」
エリナには、何を言っているのかわからない。
それが何だと言うのだ。エリナは、まだオルゲンに対する不信感が拭えない。
「父は6年前に処刑されましたが、その際に作った召喚の魔法陣によってリィナ様がこちらの世界に来られたのだと思います。だから、リィナ様から父の気を感じるのです」
ちなみにこちらの世界の6年は、地球時間に換算すると12年強になる。
その時エリナは、初めて相手の顔を真剣に見た。
以前の印象よりずっと若い。
——父アステルがなくなった時10歳だったので、今は22歳なのだ(どちらも地球での年齢に換算してある。こちらではオルゲンは11歳)
「今にして思えば、父は私に復讐など望んでいませんでした。だから、リィナ様の気がユージ様に送った私の邪念を打ち払ったのではないでしょうか」
「……何の話をしているの?」
「ユージ様とリィナ様の間に特別な絆があるわけではないのではないかということです」
その言葉が、氷を割るようにエリナの胸に染み込んだ。
体の奥が、じんわりと温かくなる。
だが、鵜呑みにすることもできない。
何だこいつは。魔術で私の心を読んでいるのか?
「話を伺ったところ、リィナ様は三年前(地球での六年強)にこちらに転移なさったそうな。他に召喚を行った者がいるならともかく、あの方は恐らく私の父の召喚術でこちらに来たものと考えられます」
少し息をついてオルゲンは続ける。
「父は高名な魔術師でした。だから、何年も召喚術が生きていたのでしょう。父の召喚術で、リィナ様は三年前にこちらに来られた。その際、私の父の意思が影響したのかもしれません」
エリナは、息を飲んでその言葉を聞く。
「私がユージ様を操っていた時、リィナ様が確かにその壁となった。それがなぜかと考えた時、父の意思だったのだろうとしか思えないのです」
「だから何なんです?」
「ユージ様の暗示が解けたのは、私と父の影響であって二人個人の絆は関係ないのではないかということです」
「……」
「リィナ様とユージ様も、仲が良いようにお見受けしました。でも、お二人ともエリナ様のことばかりを気にしておられました。あのお二人が好き合っているということはないのではないでしょうか」
「魔術や魔法でそんなことを読み取ったんですの?」
「そんなことはできません。ご存じだと思いますが、魔術や魔法は、物理的に触れるものにしか干渉できないんです。私も例外ではありません。ただ、召喚士は召喚した相手の魂に触ることができます。だから私はユージ様にしか影響を与えられませんし、ユージ様の心は読もうと思えば読めます」
一呼吸おいてから、オルゲンは言った。
「エリナ様にはご迷惑をおかけしましたから、ご要望とあらばユージ様の御心を読み取ってお伝えすることもできますよ?」
「結構よ」
エリナは、間髪入れずに返答した。
これ以上自分の美学に背くことはできない。
「オルゲン様、と仰ったかしら。ユージ様とリィナは今後別の問題が起きた時に今回のような心の通じ合わせ方をすることはないということですの?」
「はい、私と父の相反する意志を反映する事象でない限り、今回のようなことは起こらないと思われます」
そこまで聞いてから、エリナは少し唇をかんだ。
自分がユージ様を、そしてリィナを信じ切れなかったことが悔しかった。
「オルゲン様、私はまだあなたを心から信じることはできません。ですが、感謝の気持ちは伝えておきますわ」
「もちろん、私の罪は簡単に許されるべきものではありません。少しずつ、信頼を築いて行ければと思っています」
「それにしても、本当に人の心を読む魔法はありませんの?」
「申し訳ありませんが、カイウス様を始めとして、皆さま恋愛に関して鈍感すぎるのではないかと……」
「!!」
エリナはカイウス様の下での世界しか知らない。
もしかすると、自分たちは恋愛に関してものすごく奥手なのか?
「オルゲン様、あ、あの、決してあなたを心から信じているわけではありませんが、恋愛話などをまた聞かせていただいてもよろしいですわよ」
(別に私が恋愛話を聞かせたいと言ったことはないのに)と思いつつ、オルゲンはエリナに忖度した。
「それが私の贖罪となりますよう、お力添えをさせていただきたく思います」
***
オルゲンが去った後、エリナは心が軽くなったのを感じた。
そうだ、召喚されたという共通点以外、二人は特別ではなかった。
リィナがユージ様に色目を使ったことはない。
ユージ様は、こっちの世界で初めて世話をした女の子がリィナなのだから仕方がない部分はある。
でも……。
明日、ユージ様とリィナに会ってみよう、とエリナは思った。
早く会いたい、とエリナは思った。
ユージに会ったらまたカイウスに対する憎悪が再燃するのではないかという懸念があったが、護衛兵がいれば大丈夫ということでそれが実現した。
「その際、リィナ様に父の気を感じました」
エリナには、何を言っているのかわからない。
それが何だと言うのだ。エリナは、まだオルゲンに対する不信感が拭えない。
「父は6年前に処刑されましたが、その際に作った召喚の魔法陣によってリィナ様がこちらの世界に来られたのだと思います。だから、リィナ様から父の気を感じるのです」
ちなみにこちらの世界の6年は、地球時間に換算すると12年強になる。
その時エリナは、初めて相手の顔を真剣に見た。
以前の印象よりずっと若い。
——父アステルがなくなった時10歳だったので、今は22歳なのだ(どちらも地球での年齢に換算してある。こちらではオルゲンは11歳)
「今にして思えば、父は私に復讐など望んでいませんでした。だから、リィナ様の気がユージ様に送った私の邪念を打ち払ったのではないでしょうか」
「……何の話をしているの?」
「ユージ様とリィナ様の間に特別な絆があるわけではないのではないかということです」
その言葉が、氷を割るようにエリナの胸に染み込んだ。
体の奥が、じんわりと温かくなる。
だが、鵜呑みにすることもできない。
何だこいつは。魔術で私の心を読んでいるのか?
「話を伺ったところ、リィナ様は三年前(地球での六年強)にこちらに転移なさったそうな。他に召喚を行った者がいるならともかく、あの方は恐らく私の父の召喚術でこちらに来たものと考えられます」
少し息をついてオルゲンは続ける。
「父は高名な魔術師でした。だから、何年も召喚術が生きていたのでしょう。父の召喚術で、リィナ様は三年前にこちらに来られた。その際、私の父の意思が影響したのかもしれません」
エリナは、息を飲んでその言葉を聞く。
「私がユージ様を操っていた時、リィナ様が確かにその壁となった。それがなぜかと考えた時、父の意思だったのだろうとしか思えないのです」
「だから何なんです?」
「ユージ様の暗示が解けたのは、私と父の影響であって二人個人の絆は関係ないのではないかということです」
「……」
「リィナ様とユージ様も、仲が良いようにお見受けしました。でも、お二人ともエリナ様のことばかりを気にしておられました。あのお二人が好き合っているということはないのではないでしょうか」
「魔術や魔法でそんなことを読み取ったんですの?」
「そんなことはできません。ご存じだと思いますが、魔術や魔法は、物理的に触れるものにしか干渉できないんです。私も例外ではありません。ただ、召喚士は召喚した相手の魂に触ることができます。だから私はユージ様にしか影響を与えられませんし、ユージ様の心は読もうと思えば読めます」
一呼吸おいてから、オルゲンは言った。
「エリナ様にはご迷惑をおかけしましたから、ご要望とあらばユージ様の御心を読み取ってお伝えすることもできますよ?」
「結構よ」
エリナは、間髪入れずに返答した。
これ以上自分の美学に背くことはできない。
「オルゲン様、と仰ったかしら。ユージ様とリィナは今後別の問題が起きた時に今回のような心の通じ合わせ方をすることはないということですの?」
「はい、私と父の相反する意志を反映する事象でない限り、今回のようなことは起こらないと思われます」
そこまで聞いてから、エリナは少し唇をかんだ。
自分がユージ様を、そしてリィナを信じ切れなかったことが悔しかった。
「オルゲン様、私はまだあなたを心から信じることはできません。ですが、感謝の気持ちは伝えておきますわ」
「もちろん、私の罪は簡単に許されるべきものではありません。少しずつ、信頼を築いて行ければと思っています」
「それにしても、本当に人の心を読む魔法はありませんの?」
「申し訳ありませんが、カイウス様を始めとして、皆さま恋愛に関して鈍感すぎるのではないかと……」
「!!」
エリナはカイウス様の下での世界しか知らない。
もしかすると、自分たちは恋愛に関してものすごく奥手なのか?
「オルゲン様、あ、あの、決してあなたを心から信じているわけではありませんが、恋愛話などをまた聞かせていただいてもよろしいですわよ」
(別に私が恋愛話を聞かせたいと言ったことはないのに)と思いつつ、オルゲンはエリナに忖度した。
「それが私の贖罪となりますよう、お力添えをさせていただきたく思います」
***
オルゲンが去った後、エリナは心が軽くなったのを感じた。
そうだ、召喚されたという共通点以外、二人は特別ではなかった。
リィナがユージ様に色目を使ったことはない。
ユージ様は、こっちの世界で初めて世話をした女の子がリィナなのだから仕方がない部分はある。
でも……。
明日、ユージ様とリィナに会ってみよう、とエリナは思った。
早く会いたい、とエリナは思った。
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