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死に戻り編
帰れない夜⑦
しおりを挟む『…貴方が妻を助けてくださったのですね、感謝致します。』
そう言って”僕”に抱き寄せられたセレスティアは、硬直する。
”僕”から、異常なほど女物の香水の匂いが漂っていた。
僕はセレスティアの箍が外れる音を聞いた気がした。
≪ああ…旦那様も楽しんだの…。それなら、もう余計に、我慢の必要もないのだわ…≫
(ああ…!違う…、一瞬も、楽しくなんて…)
”僕”への嫌悪感が募って、触れられている事が嫌で堪らなくなっている事も伝わってくる。
『私に敬語など、止して下さいターナー伯爵。…私は雇われている訳でもないので失礼を承知で申しますが、セレスティア様にあのような会合は全く似合いません。…今後は夫婦同伴ではな旦那様だけで参加された方がよろしいかと思います。』
『デイビッド…!』
君のデイビッドへの心配が流れ込んでくる。
やがて、視界がぐにゃりと歪んで…―――僕を呼ぶ声を聞く。
◇◆◇◆
「…ル!」
荒い息が聞こえて、肩を揺すられている。
「ウィル…‼」
「はぁ、は…ッ!げほ…っ」
荒い息を吐いていたのは自分で、覚醒と同時に思わず噎せた。
「大丈夫ですか…!?とても魘されて…」
ヒヤリとした手が僕の頬を包んだ。
噎せて潤んだ視界がハッキリと戻ると、目の前に美しい彼女が居た。
「!…セレスティア…ッ!?」
(あんなに触れられる事を嫌がっていたのに…!?)
「ウィル様…?なぜ…怯えてるんですか…?…怖い夢を見ましたか…?」
慈しむ様に、彼女の裸の胸へと導かれる。
僕にかけられる優しい声に混乱する。
「…!?」
何度も僕の髪を撫でるセレスティアの手に、顔を押し付けた胸元の良い匂いに、やっと荒い息と思考が落ち着いてくる。
(ああ、そうだ。僕は”ここ”に居る…。)
戻って来た事実を思い出し、これまでのセレスティアとの幸せすぎる毎日も思い出した。
――それなのに、何故泣きたくなるのだろう。
涙が滲んで、見られたくなくて。セレスティアの胸元に隠れる。
「ウィル…大丈夫…夢ですよ、大丈夫…」
そう夢だ。そして夢の様に美しい君の声にうっとりと目を閉じながら。
僕は君に最も相応しい男をまた、頭に刻み込んだ―――。
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