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準備期間です。

35.家庭教師がつきました

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「お父様、お呼びと伺いましたが?」
「ああ、リア、こっちにおいで。リアに彼を紹介しよと思ってね」
「っ!!」

父から呼び出しを受け、父の執務室へ行くとそこには見覚えのある顔の人物がいた!
見たことあるよ!
この人って、王弟だよね!?
何で王弟がうちにいるんだ!?
どこで見たかといえば、夢で見たんだよ!
だって、王弟って攻略対象者の一人じゃないかーーー!!
平和な日々を送っていたのに、ここにきて攻略対象者と絡まなきゃいけないなんて!!
何だって突然王弟がうちに来たんだか……父よ、早く説明して!

「リアに勉強を教えてくれるローランド殿だ」
「ローランドと申します。ヴィクトリア様、お会いできて光栄です」

はぁぁぁあああ?
いやいやいや、家庭教師だって?
家庭教師が付くのは以前から言われていたからいいんだよ?
私も七歳になったしな。
そろそろ本格的に勉強を始めても良い頃だ。
その教師が王弟ってどういうことさ!?
ありえないよね!!
令嬢の家庭教師といえば、普通はオールドミスの女性じゃないのかな?
だって、令嬢の勉強と言えば、礼儀作法やダンスのようなものだってあるんだし!

「お、お父様。私、語学や歴史などの他にも礼儀作法やダンスも教えていただけると聞いていたので、てっきり女性の教師の方が来てくださると思っていましたわ」
「大丈夫だよ、リア。彼は優秀だから、礼儀作法もダンスも教えていただけるよ」
「……」

聞いた話によると、王弟は幼少の頃からもの凄く優秀だったようだ。
優秀が故に、今の王様が皇太子時代に王位継承者争いが勃発しそうになるほどだったんだって。
そこで、一切王位に興味がなかった王弟は、王太子――サイラス様が生まれた時に王位継承権を放棄したそうだ。
その王弟が何故、私の家庭教師としてやって来たんだ!?
凄く関わりたくないんだけど、拒否ってできないよね?

「ロ、ローランド様は私のような者に教鞭を執るのはお嫌ではありませんの? 私よりも立派な後継になりうる方がよろしかったのでは?」
「ヴィクトリア様は非常に優秀な方だと伺っておりますので、私に不満はありませんよ」
「……父や兄達の身内びいきの評価は信じないでくださいませ」

不満に思ってよ!
優秀な人物なら、女児じゃなくて男児に教えに行こうよ!
別に男尊女卑というわけではないが、どうしてもこの世界では男性が主軸として考えられている。
家を継ぐのは男と決まっている感じだしね~。
そして、女性は良い家へ嫁ぐこと、旦那を支える良き妻を目指す傾向にある。
そういう世界なんだから、国のために立派な後継者をたくさん生み出しなよ!

「身内びいきなんてとんでもない! リアはとても可愛くて、とても優秀だよ!」
「お父様、それが身内びいきというものです」

父よ、今の会話の流れで容姿の話は関係ないぞ?
とりあえず、今は『娘・溺愛』を引っ込めておいてくれ。
私は今、攻略対象者と縁を結ばないようにするために必死なのだからな!

「ヴィクトリア様は謙虚な方なのですね」
「そうなんだよ。リアは控えめで慎ましいんだよ!」

ちょっと待て、そこ!
どうして嬉々として私の話で盛り上がるんだ!?
それも、父だけならわかるが、王弟まで話に乗っかるんだ?
いたたまれなさすぎて考え事に集中できないじゃないか!


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