異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉

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本編

543.幻の食材

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あけましておめでとうございます。
今年も『異世界ゆるり紀行』をよろしくお願いします。


↓↓↓ここより本編です。
=========


 あっという間に三十階層まで進んでボス部屋に辿り着いた僕達は、ボスに挑む前に休憩を取っていた。まあ、あっという間と言っても、倒した魔物が少なかったということもなく、たっぷりとドロップアイテムのお肉は入手している。ナターリさんからもう充分だから分け前はいらない……と言われるくらいにはね。

「ボスはコカトリスだったな」
「そうですね」
「あっ!」

 巨獣の迷宮のボスについて話していると、突然ルドルフさんが声を上げた。

「「どうしたの?」」
「タクミにコカトリスの肉を食べさせてもらった! その時にはもうこの迷宮を攻略していたってことか!」
「ん? ああ、そんなこともありましたね」

 ケルムの街で出会って一緒に鉱山へ行った時、確かにその時にコカトリスの肉を使ったご飯を食べたな~。そして、コカトリスの肉が高価なものだとしっかり認識しておけと注意されたな。
 ルドルフさんは、僕達が巨獣の迷宮をだいぶ前に攻略し終えていて、それを気付ける情報を持っていたことに気がついたようだ。
 まあ、コカトリスの肉は他の迷宮、迷宮外でも手に入れられる可能性があるから、気付けなくても仕方がないような気もするけどな~。

「よっしゃあ、そろそろ行くか~」
「「行く~」」
「で、本当におまえ達だけに任せていいのか?」
「「任せておいて!」」

 ボスもアレンとエレナだけで戦うという話にはなっているが、ルドルフさんは心配そうにしている。
 まあ、子供達は自信満々に胸を張っているけどね。

「何匹いるかな~?」
「いっぱいいるといいね~」

 しかも、若干暢気な感じでもある。

「アレン、エレナ、油断はするんじゃないぞ!」
「「わかったー」」

 ボス部屋に入って扉が閉まりきる前に、子供達に注意はしておく。
 少しの油断が致命的なことになるかもしれないからな。

「「行ってきます!」」

 ボスが現れると、アレンとエレナはすぐさま駆け出していく。
 今回はコカトリスが六匹のようだな。前回は三匹だったか? ボス部屋に現れる魔物の数は変動するのだな~。

「「ていやー!」」
『『クェーーー』』

 まずは先制とばかりにアレンとエレナがそれぞれ一匹ずつのコカトリスを蹴り飛ばす。

「「ほりゃー!」」
『『グエェェェー』』

 続いて魔力撃で二匹のコカトリス吹っ飛ばす。

「「《ウォータージェット》」」
『『ホゲェェェー!』』

 そして、残りの二匹は魔法を放って倒した。

「うわぁ~……あっさり片づいたな~」
《おぉ~、流れるように倒したね》
《二人とも凄いわ~》
《ええ、本当に。ぼくも見習いたいですね》
《お肉はあるかな~》
《お肉はきっとあるの! だけど、その前にアレンとエレナの凄さを褒めるの!》
《ラジアンもできるようになりたい!》

 前回は攻撃を避けられたりしたはずだが……今回はそれをさせないために流れるように攻撃したのかな? 威力を抑えなければ一撃で倒せると踏んで思いっきり攻撃したのだろう。
 三パターンの攻撃方法を使って倒しているのに、相談しているわけでもなく息ぴったりで倒している。もしかしたら、僕が気づいていないだけで、二人で相談してあったのだろうか?

「「勝ったー!」」
「お疲れ様」
「ドロップアイテム」
「拾ってくるねー」

 子供達は戦闘終了後、息を吐く暇もなくドロップアイテムを拾いにいく。

「コカトリスはBランクだぞ! こんなにもあっさり倒せるものか!?」
「まあ、普通はもっと苦労するだろうな。タクミ達が異常だってことだな」
「いやいやいや、何で僕も!? 僕は何もやっていないじゃないですかっ!!」
「「タクミ込みで全体的に酷い!」」
「えぇ~……」

 ルドルフさんとナターリさんの言い分が酷い! 僕は二人と一緒で散歩していただけなのに!

「「ねぇ、ねぇ!」」
「どうかした……何だ、それ?」

 ルドルフさん達に物申していると、アレンとエレナが戻ってきていた。
 ドロップアイテムのようだが、それぞれラグビーボールくらいの白い球を持っていた。

「「……卵?」」
「まあ……そうだな。卵だな」

 卵なのは間違いないが、一応【鑑定】で調べてみると、コカトリスの卵だということがわかった。
 無精卵のようなので孵化する可能性はなく、食べても問題ないもののようだ。

「凄いな! コカトリスの卵は滅多に出ないドロップアイテムだぞ!」
「「美味しいの?」」
「俺は食べたことはないが、濃厚な味だと聞いたことがあるな」
「「おぉ~」」

 ナターリさんがやや興奮している感じがする。

「じゃあ、せっかくだからこの後調理して食べようか~」
「「わーい」」
「良いのか!?」
「おい、売らずに食べるのかよ!」

 僕がコカトリスの卵を早速食べようとすると、子供達とナターリさんは嬉しそうにするが、ルドルフさんだけは驚愕していた。まあ、稀少なドロップアイテムっぽいから売れば良い値段になりそうだからな。普通の冒険者なら売る一択なのだろう。だけど、二個あるのだから、とりあえず一個は食べてしまったっていいだろう。

《アレン、エレナ、お肉はなかったのー?》
「「お肉もあったよー」」
「えっとね、アレンは四個」
「エレナはね、二個拾った」
《おぉ~、じゃあ、倒したコカトリスの数だけお肉が手に入ったんだね》
「あとはね、魔石と羽根がいっぱい」
「それとね、尻尾? もあったよー」

 ドロップアイテムはなかなか良かったようだ。

「さて、じゃあ、転移装置のある最奥の間でご飯にしようか」
「「賛成!」」

 というわけで、僕達はコカトリスのドロップアイテムにうきうきしながら最奥の間へと移動する。

「あ、宝箱だ~」
「開けていい?」

 すると、最奥の間には宝箱があり、子供達がすぐに発見してみんなで囲んでいた。

「罠はなさそうだな。いいぞ~」

 ジュールとベクトルの間に入り込み、罠の有無を確認して問題ないことを伝えると、アレンとエレナが同時に蓋を開ける。

「「えっとね……これ、転移の魔道具だ~」」
「えっ!」
「「何っ!?」」

 子供達が宝箱の中に頭を入れて覗いて確認すると、中には転移の魔道具があったようだ。
 中級の迷宮で転移の魔道具が手に入るとは思っていなかったよ。

「これ、ルドルフさんかナターリさんが所持しません?」
「「はぁ!?」」

 ルドルフさんとナターリさんにすぐに連絡できるようになったらいいような~というちょっとした出来心で提案してみると、二人から軽く睨み返されてしまった。

「転移の魔道具は個人が所持するようなものじゃないぞ!」
「そうだぞ! 冗談が過ぎるぞ!」
「ははは~。だって、二人とすぐに連絡が取れるようになったら便利じゃないですか」

 携帯電話で個人的に連絡し合えた環境にいた僕からしたら、やはりすぐに連絡を取り合えるようにしたい。

「それなら、タクミが持っていればいいだろう?」
「俺達のほうから連絡してやるよ!」
「既に持っています」
「「……」」

 既に個人所有していることを伝えれば、ルドルフさんとナターリさんはとうとう黙り込んでしまった。




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