異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉

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本編

555.打ち上げ

 城に移動した僕達は、口頭での聞き取り調査を受けた。
 だがまあ、作戦はフィリクス様の指示通りだし、戦闘に関しても苦戦という苦戦もなくあっさり終わったので、説明で呆れさせることはあっても回答に詰まることはなく終わった。

「「お肉パーティしよう!」」


 報告が終わり、解体されたワイバーンが冒険者ギルドから届くと子供達は満面の笑みを浮かべた。
 アレンとエレナだけではなく、ジュールとベクトル、ラジアンもだ。

「パーティ? ルーウェン家でかい?」
「「ここで!」」
「ここって……ここはお城だから、勝手にパーティはできないよ?」

 子供達が言うパーティとは、たぶん打ち上げパーティ的なものだろう。
 だが、さすがにお城で無許可パーティはやれない。

「「お願いしてくる~」」
《ボクも!》
《オレもオレも!》
《ラジアンも!》
「え?」

 子供達がフィリクス様のところに突撃していった。
 まあ、間違いないく許可を取りに行ったのだろうけど……アレンとエレナが思い描くパーティってどんなものなんだろう?
 ワイバーンの肉を食べる……ということは間違いないだろうから、焼肉パーティか?

《あらあら、行っちゃったわね~》
《でも、ぼくもワイバーンを早く食べたいですし、許可が出るといいですね~》
《そうなの。楽しみなの》

 フィート、ボルト、マイルも大はしゃぎしていないだけで、フィリクス様に突撃しに行った子達と同様の意見のようだ。

「タクミ、子供達が言っているパーティとは何かわかるか?」
「ははは~」

 アレンとエレナは許可を取ってくるのではなく、しっかりと手を繋いでフィリクス様を連れてきた。

「パーティというか、ワイバーンのお肉をみんなで食べたいだけだと思います」
「「そう!」」
「ああ、なるほど、そういうことか」

 許可を取ろうとしたけど、説明をしっかりできていなかったから僕のところに来たのか。

「だが、タクミ、食事会の許可は出せても、ワイバーンの肉の提供は私での権限では難しいぞ」
「それは僕の報酬分から出しますから問題ないですよ」
「いや、まあ、タクミがいいのなら、いいんだがな……」

 ワイバーン肉は間違いなく高級肉に分類されるので、それを無料提供することに呆れているのだろう。だが、今回の討伐報酬に僕はワイバーンを二体丸ごと貰えることになった。その二体分のワイバーン肉って売らなければかなりの量になるので問題ない。

「あ、でも、アレン、エレナ、みんなってどこまでの人達のこと? さすがに討伐に集まった人達全員っていうのは多すぎるから無理だよ」

 街周辺で警戒人員、支援組などまで入れると相当な人数になってしまうだろう。

「「えっとね~……」」
「ワイバーンを倒しに行った人達!」
「フィリクス様達とアンディさん!」
「「それでどう?」」
「えっと、実際にワイバーンを倒しに行ったのは、飛竜隊の六人と地上隊の冒険者と騎士合わせて十人。フィリクス様とアンディさんで十八人。ん? フィリクス様……達?」
「「護衛さん?」」
「ああ、そうだね、フィリクス様は護衛の騎士も一緒のほうがいいか。確か、二人だったな。ということは全部で二十人か。このくらいなら許容範囲だな」

 僕達を入れて二十三人。それにジュール達もだ。これだけいれば子供達の言う通りパーティと言えるかもな。

「タクミ、会場はどのような場所がいい?」
「全員が入れる場所があれば大丈夫ですよ」
「ん? 厨房付きじゃなくていいのか?」
「本格的に料理するわけではないので、作業台とかを出せる余裕があれば問題ないですね。あ、でも、料理はするんで匂いがついては駄目なところは避けてください」

 パーティ、パーティ……とは言っているが、さすがに今は手の込んだ料理は作る予定はない。

「それならここから一番近い広間を解放しよう」
「「わ~い。フィリクス様、ありがとう~」」

 フィリクス様はすぐに会場となる広間を貸してくれたので、僕は一足先に会場へ向かう。
 取り調べ……じゃない、討伐報告は僕が一番最初だったので、打ち上げに呼ぶ予定のメンバーはこれから聴取になる。終わり次第会場へと誘導してくれるそうなので、僕は今のうちに料理を作っていることにした。

「ん~、肉が主役で、簡単で三十人分をまとめて作れるもの……ステーキとかか?」

 肉質は鶏や豚よりは牛っぽい赤身だ。
 肉を味わうにはステーキが一番良さそうだよな~。

「でも、僕はパンよりご飯がいいな~」
「アレンもご飯がいい~」
「エレナもご飯~」
「じゃあ、いっその事ステーキ丼にしちゃうかな~」
「「ステーキ丼! それがいい!」」
「じゃあ、決まりだな」

 塩コショウでシンプルに作り、味変用にニンニクを利かせたショーユソースでも作ろう。
 あとはスープとサラダでいいかな?

「アレンとエレナはご飯をいっぱい炊いてくれる?」
「「わかった~」」

 ご飯は子供達に任せ、僕はワイバーン肉の塊を焼きやすい大きさにカットしていく。

「ご飯は炊けるのを待つだけ~」
「次はなにする~?」

 複数の炊飯器に白麦と水を計り入れて稼働させる流れはもうお手のものらしく、作業はあっさり終わったようだ。

「じゃあ、次はサラダをお願い」
「じゃあ、アレンはレタスを千切るね」
「じゃあ、エレナはトゥーリを切るね」

 二人とも本当に手慣れてきているので、もう手伝いレベルではないよな~。
 今度、簡単な料理を一品任せてみるかな。

「おぉ! 良い匂いがする!」
「あ、ルドルフさん!」
「タクミ、何か手伝うか?」
「ナターリさんも! 報告が完了したんですか?」
「「おう」」

 料理を進めていると、報告が終わった人達が集まり出した。そろそろ全員来るのかな?

「じゃあ、スープを盛ってくれます?」
「おう、任せろ!」
「アレンとエレナはご飯をお願い。丼ぶりは……全員分がないから、この深皿に盛って~」
「「はーい」」

 僕は盛ってもらったご飯に添えるように焼いてカットしたステーキを載せていく。
 レアで食べるのも美味しそうだが、魔物肉を火を通さないで食べるのは危険かもしれない。だが、ウェルダンでは勿体ない気がしたので……とりあえず、今回はミディアム……ミディアムウェルくらいで焼いたステーキはかなり美味しそうだ。

「じゃあ、皆さん、取りに来てください。――あ、フィリクス様には持っていきますから、座っていてください」
「アレンが持っていってあげる~」
「エレナも~」

 アレンがトレーにステーキ丼を三人前載せて持っていくと、エレナがスープとサラダを三人前ずつトレーに載せてフィリクス様と護衛騎士の下へと向かう。

「これ、お肉のソースね。最初にかけるのは駄目だよ」
「途中からかけるの。そしたらね、味が変わるの」

 子供達はしっかりとニンニクショーユのソースの説明までしていた。

「「じゃあ、いただきまーす!」」

 全員に料理が行き渡ると、子供達の合図で食事が開始された。統率が取れているかのように一斉にだ。というか、料理を取りに来た後、誰一人食べ始めていなかったんだな~。

「「美味しいねぇ~」」
《うん、ワイバーンもなかなか美味しいね~》
《結構柔らかいのね~。ワイバーンは筋張っていそうなのに不思議だわ~》
《確かに、ワイバーン本体を見ると固そうに見えますが、美味しいですね》
《美味しい! これはいっぱい食べられる!》
《確かにいっぱい食べられそうだけど、違う料理でも食べたいの!》
《おいしい~》

 子供達は気に入ったようで、楽しそうにわいわい食べているが――

「「「「「…………」」」」」

 フィリクス様をはじめ、騎士や冒険者達は、誰もひと言も声を発せず、ひと口ひと口味わうように食べていた。

「ルドルフさんでもバクバクと食べないんですね」
「ワイバーンの料理をそんな調子で食べられるか!」
「そういうものなんですね」

 わいわいとした雰囲気の打ち上げになるかと思っていたが、静かなお食事会でワイバーン討伐は締めくくられた。




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