異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉

文字の大きさ
115 / 330
8巻

8-3

 第二章 挨拶回りをしよう。


「えっ!? レベッカさんも領地に行くんですか?」
「ええ、そうなの」

 ルーウェン家のやしきの一室で、僕が思わず声を上げると、レベッカさんがうなずいた。
 年が明けた現在、王都の社交シーズンは既に終わっている。
 王都に集まっていた貴族達はどんどん領地に戻っていて、リスナー家のセドリックさん、テオドールくん、ラティスくんも近いうちに領地に戻ると連絡が来ていた。
 そして、ルーウェン家の長男夫婦であるヴェリオさんとアルメリアさんも、身重であるアルメリアさんの体調が良いうちに領地に戻るそうだ。

「ほら、アルメリアさんがあの状態でしょう? ですから、私も領地に行っていろいろ手助けをすることにしたの」

 確か、ルーウェン家の領地は、王都で仕事のあるマティアスさんの代わりに、ヴェリオさんが領主代行をしているんだったな。
 すると、奥さんであるアルメリアさんも領地では何かしら手伝うことがあるはずだ。
 今はまだ目立たないが、すぐにお腹が大きくなってきて、思うように行動できなくなるんだろうな~。
 であれば、レベッカさんが二人について領地に戻るのも納得できる。

「そうなんですね。それで、出発はいつなんですか?」
「それが、五日後なのよ」
「えっ!? すぐじゃないですか!」

 もっと時間があると思っていたのに、あまり猶予ゆうよはないようだ。
 急な気もするが、もしかしたらもっと前から決まっていたのかもしれないな。

「「……おばーさま」」
「アレンちゃん、エレナちゃん、どうしたの?」
「「おばーさま、どっかいっちゃうのー?」」
「あらまあ! それで泣きそうなお顔をしているの?」
「「うぅ~~~」」

 僕とレベッカさんのやりとりを眺めていたアレンとエレナは、今にも泣きそうな顔をしていた。
 そんな子供達を見て、レベッカさんはほのかに嬉しそうな顔をする。

「離れるのが悲しいなんて、私、感激だわ~」
「「……うにゅ~~~」」

 ……いや、かなり嬉しそうだ。

「私もアレンちゃんとエレナちゃんと離れるのはさびしいもの。そうだわ! アレンちゃんとエレナちゃんも一緒に行きましょうか!」
「「いっしょー?」」
「ええ、アレンちゃんとエレナちゃんはお兄さんといろいろな街を見て回っているのでしょう? それなら、次はルーウェン領の街に行ってもいいじゃない! ――ねえ、タクミさん、良い案だと思わない?」
「そうですね~……」

 レベッカさんの言葉に、僕は考える。
 王都にはそれなりの期間いたので、そろそろ違う街に行ってみようかと思っていたのは確かだ。まあ、どこに行こうかは全然決めていなかったけどな~。

「別の街に行こうにもまったく当てはなかったので、嬉しいお話ですね。だけど、それではまた甘えることになりそうで……」

 きっとまた、ルーウェン家のやしきでお世話になってしまうであろうことだけが気がかりだった。

「あら、甘えると言っているけれど、滞在場所だけでしょう? そのくらいなら甘えるとは言わないわよ。だいたい、それ以上に私達だってタクミさんにはお世話になっているわよ」
「え、そうですかね?」
「そうよ」

 何だろう? 僕的には一方的にお世話になっていると思っていたが、そうではないらしい。
 ん~、僕がルーウェン家に提供したものね……食材かな? まあ、それを今考えても仕方がないか。

「アレンとエレナはどうしたい?」
「「いきたい!」」
「それはルーウェン領の街に?」
「「うん!」」

 泣きそうだったはずのアレンとエレナは一転、強い眼差まなざしでうったえてくる。

「よし、じゃあ、行こうか」
「「ほんとー?」」
「うん。まあ、しばらくはレベッカさんと離れることになるけどね」
「「なんでー?」」

 ルーウェン領の街に遊びに行くのはいいけど、五日後に出発するレベッカさん達と一緒には行けない。
 だって、注文した魔道具や臼と杵を受け取らないといけないし、自領に戻るセドリックさん達も見送りたい。

「王都でやり残したことがあるからね。それが終わってから出発するとして……――レベッカさん、ルーウェン領は王都から西に行ったところでしたよね?」
「あら? タクミさん……もしかしてローヴェル領と勘違かんちがいしているんじゃないかしら?」
「えっ!?」
「ルーウェン領は王都の東の海沿い。セルディーク国との交流が盛んな街、ルイビアがそうよ」

 うわっ、すごい勘違いをしていた。西じゃなくて、東! 正反対じゃないか!
 今、確認しておいてよかった~~~。

「危うく違う場所に行くところでした」
「ふふっ、良かったわね~」
「ええ、本当に。えっと……王都とルイビアの街の間にはまだ他の街がありますよね?」
「ええ、あるわね。――ああ、そういうことね」

 僕が考えていることがわかったのか、レベッカさんはにっこりと微笑ほほえむ。

「アレンちゃん、エレナちゃん、他の街も見ながらゆっくりルイビアの街に来てちょうだい」
「「ほかのまちー?」」
「そうよ。二人はまだまだ知らないものがいっぱいあるでしょう? だから、いろんなものを見て、感じて……たくさん経験することも大事よ」
「「……だいじ~」」

 そう、僕は真っ直ぐにルイビアの街を目指すんじゃなく、せっかくなので間にあるだろう街や村なども堪能たんのうしつつ向かおうと思っているのだ。
 レベッカさんは、そのことをしっかり理解してくれていた。

「ははは~、レベッカさん、代弁ありがとうございます」
「ふふっ、合っていたようね」
「ええ、僕の考えていたことと同じだったので驚きましたよ」

 本当に、僕の考えを読んだかのようだった。

「レベッカさん、準備があると思いますが、出発までの間、時間があったらアレンとエレナを構ってあげてもらえますか?」
「もちろんよ」

 それからというもの――

「おばーさま、おやつたべよー」
「おばーさま、ごほんよもうー」

 アレンとエレナは〝外に遊びに行きたい〟〝依頼を受けに行きたい〟などとは言わず、カルガモのひなのようにレベッカさんについて回るようになった。


「――アレンちゃん、エレナちゃん、お茶にしましょうか」
「「うん! あのねー、きょうはね、おやつをつくってきたのー」」

 レベッカさんが出発する前日、アレンとエレナはレベッカさんのお誘いに、そう答えた。

「あら、二人が?」
「うん、アレンね、ちょこぷりんつくったのー」
「エレナはね、いーちのぷりん!」

 これは、レベッカさんと一緒に食べるためにおやつを作りたい、と二人が言うので挑戦した新作だ。
 テーブルについてお茶の準備ができたところで、二人はプリンを出す。

「「どう? どう?」」
「まあ、二人とも、美味しいわよ~」
「「ほんとう!?」」

 プリンを食べたレベッカさんの反応に、アレンもエレナも満面の笑みで喜んだ。

「「またつくるー」」
「あら、いいの? こんなにも美味しいものを作るのは大変ではなくて?」
「「だいじょーぶ」」
「じゃあ、お願いしようかしら」
「「うん!」」

 そんなほのぼのとした日々も過ぎ、あっという間にレベッカさん、ヴェリオさん、アルメリアさんが領地に向けて出発する朝を迎えた。
 僕はアレンとエレナを連れて、玄関に見送りに出た。当然、ルーウェン家の皆さんもいる。

「「……あぅ~」」
「あらあら、アレンちゃん、エレナちゃん、泣かないでちょうだい」

 そしてアレンとエレナは、涙をポロポロとこぼしていた。
 自分達が旅立つことはあっても、親しい人が旅立っていくのは初めてだもんな~。

「アレン、エレナ、一生の別れじゃないんだから、笑顔で見送ってあげないと」
「そうよ。また会えるでしょう?」
「「……うん」」

 まだぐずぐずとしているが、アレンとエレナは涙を止めて笑顔を作ろうとする。

「「おばーさま、またね」」
「ええ、また会いましょうね」
「「うん」」

 子供達はレベッカさんにぎゅっと抱き着いてお別れの挨拶をする。

「レベッカさん、ヴェリオさん、アルメリアさん、道中お気をつけて」
「ありがとう。ルイビアの街でまた会えるのを楽しみにしているわ」
「タクミくん、楽しかったよ。領のほうにはいつでも来てくれ」
「お待ちしていますね」

 ヴェリオさんとアルメリアさんとはなかなか一緒に過ごすことはなかったが、二人とも穏やかな人物なので、今では僕も親しみを感じている。

「子供達と一緒に、お土産みやげをいろいろと集めてお伺いしますね」
「いっぱい~」
「あつめる~」
「「「……」」」

 僕達の宣言に、旅立つ三人がなぜか無言になった。

「……タクミさん? それはあくまでも……お土産話よね?」
「ああ、そういうお土産ですか。いや~、私はタクミくんがどんな非常識なものを持ってくるのかと冷や冷やしましたよ」

 しぼすように言ったレベッカさんに、ヴェリオさんが続く。
 確かにレベッカさんの言う通り、アレンとエレナがこれから体験するだろう旅の話は、次に会った時の土産話にはなるだろう。でも、僕の言ったものは物品のほうなんだけどな~。
 ……それにしても、ヴェリオさん、非常識なお土産って何ですかね?

「……どのくらいのものからが、非常識なお土産になりますか?」

 正直自分でもわからないので、思い切って聞いてみた。

「今までの経験からいえば……マジェスタの実、トリュフ、ユキシタだけ、オークジェネラルやアーマーバッファローは普通じゃないな。ああ、パステルラビットもか。こうやって挙げてみると、タクミの非常識さが浮き彫りになるな~」

 ここで何故か、一緒にお見送りしていたヴァルト様――僕がこの世界で最初に訪れた街、シーリンで親しくなった騎士で、ヴェリオ様の弟であるグランヴァルト様から指摘が入った。
 予想通りと言えば予想通りの品々が挙げられたが……細かいことを気にしないヴァルト様に指摘されると何だかしゃくだ。

「……じゃあ、ドラゴンのお肉をお土産にできるように頑張りますね」
「「がんばるー」」

 なので、あえて非常識なお土産を用意すると宣言すると、アレンとエレナもにこにこと笑いながら拳を突き上げた。

「いやいやいや! タクミ、それはシャレにならないからな!」
「この際、非常識というものを突き詰めてみるのもいいかな~と」
「……おい、タクミ、ちょっと待てよ」

 ヴァルト様から制止の声が掛かるが、聞こえない振りをする。

「あ、なくなってしまう肉よりは毛皮とかのほうがいいかもしれない。えっと、毛皮なら何の魔物がいいかな?」
「くまー?」
「おおかみー?」

 アレンとエレナも、目を輝かせて提案してきた。

「じゃあ、片方は王都のルーウェンていへの、もう片方は領地のルーウェン邸へのお土産にするか?」
「「おぉ~、がんばる~」」
「だから、ちょっと待てって言っているだろう!」

 ヴァルト様はとうとう声を荒らげてくる。

「「だめなのー?」」
「ああ、駄目だぞ」
「「なんでー?」」

 不思議そうな子供達に、ヴァルト様は言葉に詰まりながらも答える。

「何で……それはな、普通じゃないからだ」
「「ふつうってなーに?」」
「普通!? 普通っていうのは……一般的なことだ」
「いっぱんてきー?」
「なーに?」
「一般的っていうのはな……――」

 アレンとエレナがヴァルト様を質問攻めにする。
 質問を受ける立場っていうのは、結構つらいんだよね~。うん、ここはヴァルト様に任せておこう!

「タクミさん」

 そっと子供達とヴァルト様から遠ざかっていると、そこにレベッカさんがマティアスさんをともなって近寄ってきた。

「美味しいドラゴンのお肉、楽しみにしているわね」
「私も毛皮の敷物を新しくしたいと思っていたところなんだ。タクミくん、良いものがあったらよろしく頼むよ」
「ええ、期待に応えられるように頑張ります」

 二人はとてもにこやかに笑っているので、本気で言っているのではなく、僕の冗談じょうだんに乗ってくれているだけだとわかった。
 ……まあ、毛並みの良い毛皮の敷物なら何とかなるかもしれないが、さすがにドラゴンの肉はちょっと無謀むぼうだよな~。

「ふふっ。でも、あまり待たされるのは嫌よ。ですから、お土産が手に入らなくても、ある程度の期間で切り上げて遊びに来てちょうだい」
「わかりました。何十年経っても会えないのは僕も嫌なので、しっかりと心に刻んでおきます」
「ええ、そうしてちょうだい」

 レベッカさんは微笑むと、僕のことを軽く抱きしめてくる。

「レベッカさん?」
「タクミさん、これからあなたも旅立って行くんでしょうけれど、あなたは私の三人目の息子なの。だから、王都にあるこのやしきも、領にあるやしきもあなたの家よ。遠慮えんりょせずに帰ってきてね」
「……ありがとうございます」

 レベッカさんがこんな風に思ってくれていることに感動し、思わず泣きそうになる。

「寂しくなって、すぐにルイビアの街に行きたくなっちゃうじゃないですか」
「あら、それは大歓迎よ」
「レベッカさん、誘惑ゆうわくは駄目です」
「あら、残念」

 今度は笑いが誘われる。

「でも、本当に待っているわ」
「はい、すぐに伺います」
「アレンちゃんとエレナちゃん、元気でね」
「「うん、おばーさまもね」」

 レベッカさんはいつの間にかこちらに来ていたアレンとエレナにもう一度挨拶をすると、馬車に乗り込んで出発していった。
 アレンとエレナは、馬車が見えなくなるまで手を振って見送っていた。


 ◇ ◇ ◇


「またベイリーにも遊びに来てくださいね」
「アレンくん、またね~」
「エレナちゃん、またね~」

 レベッカさん達を見送った三日後、今度は領に戻るリスナー家の三人を見送った。
 そしてそれからというもの……

「「いってらっしゃい」」
「ああ、行ってくるよ」
「「はやくかえってきてね」」
「わかったよ。二人も良い子で待っているんだよ」
「「うん!」」

 アレンとエレナは仲の良い人達が少なくなっていくのが寂しいのか、仕事に行くマティアスさんに「ちゃんとかえってくる?」「きょうははやい?」などと尋ねるようになった。
 マティアスさんは笑いながら子供達の相手をしてくれるが、毎日何回も聞くので本当に申し訳ないんだよね~。
 しかもそれだけじゃなくて……。

「おやおや、二人ともどうしたんだね?」
「「おじーさま、おしごとー?」」

 マティアスさんが自邸の執務室しつむしつで仕事をしている時まで、部屋を覗き込んで執務を中断させてしまうこともあった。

「マティアスさん、すみません」
「急ぎのものはないし、構わないよ。こっちにおいで」
「「うん!」」

 呼ばれたアレンとエレナは、満面の笑みでマティアスさんに駆け寄る。

「今日は何をしていたんだい?」
「「おりょうりしたの!」」
「料理かい? 美味しいものはできたかな?」
「「うん!」」

 楽しそうに話す子供達。

「おじーさま」
「たべてねー」
「おや、では二人が作った料理が夕食に出るのかな? それは楽しみだ」

 今日二人が作ったのは、お好み焼きっぽいものだ。
 長芋がなかったので固めの出来だし、ソースもトゥーリの実――トマトをベースにショーユやニンニクを混ぜて作ったから、お好みソースとは似ても似つかない。
 全体的にお好み焼きと呼んでいいものかわからないが、それなりに美味しくできた。
 僕達は昼に食べたのだが、アレンとエレナがマティアスさんにも食べさせたいと言うので、午後からもう一度作ったのだ。
 僕の勝手なイメージだと、お好み焼きって夕食にはあまり食べないんだけど……まあ、ただのイメージなので問題ないだろうと、夕食の一品に加わったというわけだ。

「タクミくん、やはり子供達はやしきこもりがちなのかい?」

 マティアスさんは子供達と話していた表情を一変させ、真剣な表情で僕のほうを見てくる。

「そうなんですよ……すみません」

 そうなのだ。アレンとエレナはレベッカさんがルーウェン領に行くとわかってから旅立つまで、ずっとやしきの中で過ごしていた。
 そして彼女がいなくなった後も、あまり外に出たがらなかった。

「いやいや、責めているわけではないんだよ。ヴェリオやヴァルトがこの子達くらいの時は、やしきにいるほうが断然多かったからね。ただ、この子達の場合はいつもあちこちと出歩いていたから、少し気になっただけだよ」

 そうか、貴族の子供だとそう頻繁ひんぱんに出歩いたりしないものなのか。

「まあ、一時的な行動だと思うんですよね。明日は街に出かけようと思っているので、それを嫌がったら……ちょっと真剣に考えてみます」
「それでいいだろう。で、明日はどこに出かけるんだい?」
「はい、白麦を炊く魔道具の試作品ができたと連絡が来たので、確認しに行ってきます」
「おぉ! それは重畳ちょうじょうだな!」

 マティアスさんは嬉しそうな表情を浮かべる。

「確認して問題がないようなら、すぐに正式に製造をお願いしてきますね」
「頼むよ! 他家からもその魔道具に関しての要請が来ているし……そして何より、我が家にも欲しいものだからね」

 わぁーお、炊飯器についての他家からの要請ってまだ来ていたんだ~。
 マティアスさんが防波堤ぼうはていになってくれていたのかな? これは早めに魔道具を完成させないと。


感想 10,856

あなたにおすすめの小説

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。

「家政など侍女の真似事」と笑った義姉が、十二年分の裏帳簿にすべて署名していた件

歩人
ファンタジー
公爵令嬢エルザは、十六歳から家政の一切を任されてきた。領地経営、使用人管理、収支帳簿——表向きは「下女と同じ仕事」と義姉に蔑まれながら、十二年。「家政など侍女の真似事。本当の貴族のすることではないわ」婚約破棄の宴で義姉が放った一言に、エルザは静かに微笑む。翌朝、公爵家の朝食の席。エルザは父の前に十二冊の帳簿を積み上げた。「表帳簿はわたくしが付けてまいりました。裏帳簿は——お姉様が」十二年分。義姉が捏造した脱税の裏帳簿、すべての頁に義姉自身の署名がある。エルザは毎晩、義姉が部屋を出た後、その署名を筆跡鑑定用に複写していた。義姉が悲鳴をあげる前に、王家監察官が屋敷の扉を叩いた。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました

歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。

あなたがワインを浴びせた相手は、"子爵令嬢"じゃありませんわ

ばぅ
恋愛
公爵令息の恋人と噂されている「ルリア・ラズベルン子爵令嬢」と勘違いされ、夜会でワインを浴びせられた私。でも残念、完全な人違いです。

神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない・完結

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

「三番目の王女は、最初から全部知っていた」 ~空気と呼ばれた王女の、静かな逆襲~

まさき
恋愛
「三番目など、いなくても同じだ」 父王がそう言ったのを、アリエスは廊下の陰で聞いていた。 十二歳の夜のことだ。 彼女はその言葉を、静かに飲み込んだ。 ——そして四年後。 王国アルディアには、三人の王女がいる。 第一王女エレナ。美貌と政治手腕を兼ね備えた、次期女王の最有力候補。 第二王女リーリア。百年に一人と謳われる魔法の天才。 そして第三王女、アリエス。 晩餐会でも名前を忘れられる、影の薄い末の王女。 誰も気にしない。 誰も見ていない。 ——だから、全部見えている。 王宮の腐敗も。貴族たちの本音も。姉たちの足元で蠢く謀略も。 十六歳になったアリエスは、王立学園へ入学する。 学園はただの通過点。本当の戦場は、貴族社交と王宮の権力図だ。 そんな彼女に、一人だけ気づいた者がいた。 大勢の中で空気のように扱われるアリエスを、 ただ一人、静かに見ていた男が。 やがて軽んじていた者たちは気づく。 「空気のような王女」が、 ずっと前から——盤面を作っていたことに。 これは、誰にも見えていなかった王女が、 静かに王宮を動かしていく物語。

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。