318 / 330
書籍該当箇所こぼれ話
閑話 マリアノーラの観察録2
わたくしの孫――ウィンデルの子供達はシルフィリールの采配でタクミさんに預けられた。
それからというものの、子供達は見違えるように元気になっていった。やせ細っていた身体がだいぶよくなり、あまり反応がなかった表情も徐々に子供らしいものになってきていた。
シルフィリールの采配が良い方向に動いたってことね。
そしてなにより――
「楽しそうですね」
「あら、あなたの目から見てもそう思う?」
ルーチェの言うとおり、子供達がとても楽しそうなの。
「はい。タクミ殿は本当に子供達を可愛がっている感じがします」
「本当よね~」
タクミさんはこちらの都合で勝手に押しつけられたにもかかわらず、子供達をとても大切に扱ってくれているの。本当の弟妹や子供のようにね。
普通なら少しくらいおざなりになったりするものなのに、そんな様子は一切見受けられないのよ。
全力で可愛がってくれている感じすら見受けられるの。
力が暴走する可能性は変わっていないのだけど、自分の孫が辛い目にあっているよりは楽しく過ごしているほうがいいに決まっているわ。
本当に良い方に恵まれたわ~。これなら安心ねぇ。
◇ ◇ ◇
あら、とうとうエーテルディアにも菓子パンができたのね!
ああ、クリームパンもあるわ!
タクミさんが料理をできる人で本当に嬉しいわ!
まあ! あんパンもできたのね!
どうしましょう~。餡子ということは、和菓子に辿り着く可能性が出てきたわねぇ~。お饅頭にどら焼き、羊羹……。この辺りは見込めそうかしら?
楽しみだわ~。タクミさん、頑張ってちょうだい!
まあまあ! 今度はゼリーね。わたくしの世界にもついにスイーツといえるものが誕生したのね。
スイーツよ、スイーツ! 何て素敵な響きなのかしらぁ~。
どうしてわたくしの世界には、ぼそぼそとしたクッキーしかないのかしらねぇ。それで満足しちゃわないで、もっと探求心が欲しいわ~。
それに比べてタクミさんは本当に凄いわ~。材料にスライムを使うだなんて~。とっても発想力が豊かなんですもの~。素晴らしいわ~。
さあさあ! 温存していないで早くそれをわたくしの世界へ広めてくださいな。世界に定着しなければ、わたくしが食べられません!
「ああ~……」
「マリアノーラ様、どうなさいました!?」
「わたくしのゼリーが……」
フルーツゼリーにミルクゼリー、紅茶ゼリー……大量に作られたゼリーが……。それらをタクミさんは《無限収納》にしまってしまいました。
今現在、タクミさんが広めたクリームパンが切っ掛けで、面倒事に巻き込まれている最中。そんな中、新しく作ったゼリーを不用意に披露することはしなさそうね……。
タクミさんの考えは理解できるのだけどぉ~~~。せっかく! せっかくわたくしの世界で誕生したスイーツが食べられないなんて……。そんなのってないわぁ~~~。
そうねぇ~。こうなったら、こちらでも作るしかないわね!
「ねぇ、ルーチェ。タクミさんが作っていたゼリー、あれと同じものを創ってくれないかしらぁ?」
「えっ?」
「だってぇ~、世界に定着するまでなんて待てないわ~」
「いえ……ですが、創ることに関してはマリアノーラ様の領分ですので……」
あら、そういえばそうだったわねぇ~。わたくしが創造神ですものね。
「じゃあ、久しぶりに頑張っちゃいましょうかねぇ」
「えっ! えぇ?! ま、まさか、お創りになるのですかっ!?」
「あら、ルーチェが自分で創れって言ったんじゃなの~」
「お、お待ちくださいぃぃぃー!!」
「なーに? ルーチェったら、そんな大声を出してどうしたのよ?」
「マリアノーラ様が下手にお力を使いますと、余剰分の力で火山が噴火し、津波が起き、地が割れ、竜巻が起きてしまいますぅ~。どうか! どうか、お待ちくださいぃ~~~」
あらあら、ルーチェに泣きながら止められてしまったわ~。
わたくしの力って、大陸を創ったり、海を広げたりと、大きなものを創るのに適しているのよねぇ。だから、小さなものを創ろうとすると、余った力がどうしても零れちゃうのよ~。
それがちょこ~っと、地上に影響を及ぼしちゃうのよ~。でも、わたくしがちゃんと気を遣えば、ほんのちょっとの影響で済むはずなのだから、大丈夫だと思うんだけどねぇ~。
ルーチェがそんなにお願いするなら、もう少しだけ我慢しましょうか……。
◇ ◇ ◇
あら? あらあら? どうやら、子供達が魔法を覚えたようね。
魔力をコントロールできるようになったのなら、これで力を暴走させる確率は大幅に減ったわね。
うんうん、良かったわ~。とりあえず、大洪水で大陸が沈む心配はなくなったかしらぁ~? あ~、でもでも~。干ばつになる可能性はまだ残っているかしらぁ?
ん~、今は安定しているから、大丈夫だと思うのだけどぉ~。 まあ、油断はできないけれど、そこまで警戒する必要がなくなったってところね~。
それにしても……ふふふっ~。子供達、とっても楽しそうね~。それにすっかり本当の兄弟妹みたいだわ~。微笑ましいわ~。
あっ、そうだわ!
「ねぇ、ルーチェ。今の眷属に子育てとか教育とか、担当している者はいたかしら~?」
「いいえ、いませんね。そのあたりの事柄は私達には縁遠いものですからね。なかなか適正のある者は現れません」
「タクミさんはどうかしら? とっても相性が良さそうでない?」
「タクミ殿、ですか……? 確かに相性は良さそうですが、彼はシルフィリール様の眷属ですよ?」
「あら。でも、わたくしが加護を与えている人物でもあるわよ~」
とっても良い案だと思うのよねぇ~。うん、思い立ったら何とやらって言うものね。早速、タクミさんに任せちゃいましょうっと……。
――うん、これでよし!
「マ、マリアノーラ様!?」
「ふふふっ~『育成』と『教育』を任せちゃった。テヘ☆」
「シ、シルフィリール様にお知らせしないと~~~」
ルーチェが慌ててシルフィリールのもとへと向かった。
シルフィリールとタクミさんはどんな反応をするかしら~? ちょっと楽しみね~。
◇ ◇ ◇
「マリアノーラ様」
「あら、サラマンティールじゃないの? 今日はどうしたの?」
わたくしの子の一人である、火神サラマンティールが訪ねてきた。
「マリアノーラ様は異世界から転生させたシルの眷属のことは知ってますよね?」
何かと思えば、要件はタクミさんのことなのね?
「もちろんよ~。彼がどうかしたの?」
「あいつ、料理に関しての貢献が凄いから、今度褒美をやろうと思っているんだ」
「そうね~。タクミさん、いろいろな料理を広めてくれているものねぇ~。いいんじゃないかしら~?」
「マリアノーラ様、詳しいんですね」
「だって、わたくしが期待している方ですもの~」
ジャムパンや干し果実や木の実のパンの定着はわりと早かったですし、最近やっとクリームパンが定着したところなのよねぇ~。
限定商品だとやっぱり世界に広がるのは遅くなるのは仕方がないわねぇ~。それでも着実に広がっているから文句はないのだけど~。
あんパンはもう少しってところね。
ゼリーは日の目を見ていないから、残念ながらまだまだね。フレンチトーストなんかも広まってくれると嬉しいのだけど~。まあ、これからよね。
タクミさんは他にも料理でいろいろとやってくれているみたいだから、サラマンティールがご褒美をあげたいっていうのは賛成だわ~。
「へぇ~、そうなんだ~。それでシルのやつがさー、今度その眷属から連絡来た時に話すから、それまで待てって言うんだよ」
「ふふっ、シルフィリールの言いたいこともわかるわねぇ~。突然贈り物をしたらタクミさんがびっくりするもの~」
「それはオレも理解したんだけど、連絡がついたらすぐに送りたいんだ。だから連絡が来たらすぐに知らせてもらえるように、マリアノーラ様から一言、言ってもらえないかなぁ~って」
ふふふっ。サラマンティールが頼み事をしてくるのも珍しいけど、その内容がまた可愛らしいわね~。
「ダメかな?」
「そのくらいなら構わないわ~。サラマンティールの頼みですもの~。あとでシルフィリールの眷属にお願いしておくわ」
「ありがとう、マリアノーラ様」
タクミさんにとって領分は関係ないから、どんどん活躍してくれるわね~。本当に頼もしい存在だわ~。
わたくしもご褒美を用意しておいたほうがいいかしら? ちょっと考えておきましょうかね。
それからというものの、子供達は見違えるように元気になっていった。やせ細っていた身体がだいぶよくなり、あまり反応がなかった表情も徐々に子供らしいものになってきていた。
シルフィリールの采配が良い方向に動いたってことね。
そしてなにより――
「楽しそうですね」
「あら、あなたの目から見てもそう思う?」
ルーチェの言うとおり、子供達がとても楽しそうなの。
「はい。タクミ殿は本当に子供達を可愛がっている感じがします」
「本当よね~」
タクミさんはこちらの都合で勝手に押しつけられたにもかかわらず、子供達をとても大切に扱ってくれているの。本当の弟妹や子供のようにね。
普通なら少しくらいおざなりになったりするものなのに、そんな様子は一切見受けられないのよ。
全力で可愛がってくれている感じすら見受けられるの。
力が暴走する可能性は変わっていないのだけど、自分の孫が辛い目にあっているよりは楽しく過ごしているほうがいいに決まっているわ。
本当に良い方に恵まれたわ~。これなら安心ねぇ。
◇ ◇ ◇
あら、とうとうエーテルディアにも菓子パンができたのね!
ああ、クリームパンもあるわ!
タクミさんが料理をできる人で本当に嬉しいわ!
まあ! あんパンもできたのね!
どうしましょう~。餡子ということは、和菓子に辿り着く可能性が出てきたわねぇ~。お饅頭にどら焼き、羊羹……。この辺りは見込めそうかしら?
楽しみだわ~。タクミさん、頑張ってちょうだい!
まあまあ! 今度はゼリーね。わたくしの世界にもついにスイーツといえるものが誕生したのね。
スイーツよ、スイーツ! 何て素敵な響きなのかしらぁ~。
どうしてわたくしの世界には、ぼそぼそとしたクッキーしかないのかしらねぇ。それで満足しちゃわないで、もっと探求心が欲しいわ~。
それに比べてタクミさんは本当に凄いわ~。材料にスライムを使うだなんて~。とっても発想力が豊かなんですもの~。素晴らしいわ~。
さあさあ! 温存していないで早くそれをわたくしの世界へ広めてくださいな。世界に定着しなければ、わたくしが食べられません!
「ああ~……」
「マリアノーラ様、どうなさいました!?」
「わたくしのゼリーが……」
フルーツゼリーにミルクゼリー、紅茶ゼリー……大量に作られたゼリーが……。それらをタクミさんは《無限収納》にしまってしまいました。
今現在、タクミさんが広めたクリームパンが切っ掛けで、面倒事に巻き込まれている最中。そんな中、新しく作ったゼリーを不用意に披露することはしなさそうね……。
タクミさんの考えは理解できるのだけどぉ~~~。せっかく! せっかくわたくしの世界で誕生したスイーツが食べられないなんて……。そんなのってないわぁ~~~。
そうねぇ~。こうなったら、こちらでも作るしかないわね!
「ねぇ、ルーチェ。タクミさんが作っていたゼリー、あれと同じものを創ってくれないかしらぁ?」
「えっ?」
「だってぇ~、世界に定着するまでなんて待てないわ~」
「いえ……ですが、創ることに関してはマリアノーラ様の領分ですので……」
あら、そういえばそうだったわねぇ~。わたくしが創造神ですものね。
「じゃあ、久しぶりに頑張っちゃいましょうかねぇ」
「えっ! えぇ?! ま、まさか、お創りになるのですかっ!?」
「あら、ルーチェが自分で創れって言ったんじゃなの~」
「お、お待ちくださいぃぃぃー!!」
「なーに? ルーチェったら、そんな大声を出してどうしたのよ?」
「マリアノーラ様が下手にお力を使いますと、余剰分の力で火山が噴火し、津波が起き、地が割れ、竜巻が起きてしまいますぅ~。どうか! どうか、お待ちくださいぃ~~~」
あらあら、ルーチェに泣きながら止められてしまったわ~。
わたくしの力って、大陸を創ったり、海を広げたりと、大きなものを創るのに適しているのよねぇ。だから、小さなものを創ろうとすると、余った力がどうしても零れちゃうのよ~。
それがちょこ~っと、地上に影響を及ぼしちゃうのよ~。でも、わたくしがちゃんと気を遣えば、ほんのちょっとの影響で済むはずなのだから、大丈夫だと思うんだけどねぇ~。
ルーチェがそんなにお願いするなら、もう少しだけ我慢しましょうか……。
◇ ◇ ◇
あら? あらあら? どうやら、子供達が魔法を覚えたようね。
魔力をコントロールできるようになったのなら、これで力を暴走させる確率は大幅に減ったわね。
うんうん、良かったわ~。とりあえず、大洪水で大陸が沈む心配はなくなったかしらぁ~? あ~、でもでも~。干ばつになる可能性はまだ残っているかしらぁ?
ん~、今は安定しているから、大丈夫だと思うのだけどぉ~。 まあ、油断はできないけれど、そこまで警戒する必要がなくなったってところね~。
それにしても……ふふふっ~。子供達、とっても楽しそうね~。それにすっかり本当の兄弟妹みたいだわ~。微笑ましいわ~。
あっ、そうだわ!
「ねぇ、ルーチェ。今の眷属に子育てとか教育とか、担当している者はいたかしら~?」
「いいえ、いませんね。そのあたりの事柄は私達には縁遠いものですからね。なかなか適正のある者は現れません」
「タクミさんはどうかしら? とっても相性が良さそうでない?」
「タクミ殿、ですか……? 確かに相性は良さそうですが、彼はシルフィリール様の眷属ですよ?」
「あら。でも、わたくしが加護を与えている人物でもあるわよ~」
とっても良い案だと思うのよねぇ~。うん、思い立ったら何とやらって言うものね。早速、タクミさんに任せちゃいましょうっと……。
――うん、これでよし!
「マ、マリアノーラ様!?」
「ふふふっ~『育成』と『教育』を任せちゃった。テヘ☆」
「シ、シルフィリール様にお知らせしないと~~~」
ルーチェが慌ててシルフィリールのもとへと向かった。
シルフィリールとタクミさんはどんな反応をするかしら~? ちょっと楽しみね~。
◇ ◇ ◇
「マリアノーラ様」
「あら、サラマンティールじゃないの? 今日はどうしたの?」
わたくしの子の一人である、火神サラマンティールが訪ねてきた。
「マリアノーラ様は異世界から転生させたシルの眷属のことは知ってますよね?」
何かと思えば、要件はタクミさんのことなのね?
「もちろんよ~。彼がどうかしたの?」
「あいつ、料理に関しての貢献が凄いから、今度褒美をやろうと思っているんだ」
「そうね~。タクミさん、いろいろな料理を広めてくれているものねぇ~。いいんじゃないかしら~?」
「マリアノーラ様、詳しいんですね」
「だって、わたくしが期待している方ですもの~」
ジャムパンや干し果実や木の実のパンの定着はわりと早かったですし、最近やっとクリームパンが定着したところなのよねぇ~。
限定商品だとやっぱり世界に広がるのは遅くなるのは仕方がないわねぇ~。それでも着実に広がっているから文句はないのだけど~。
あんパンはもう少しってところね。
ゼリーは日の目を見ていないから、残念ながらまだまだね。フレンチトーストなんかも広まってくれると嬉しいのだけど~。まあ、これからよね。
タクミさんは他にも料理でいろいろとやってくれているみたいだから、サラマンティールがご褒美をあげたいっていうのは賛成だわ~。
「へぇ~、そうなんだ~。それでシルのやつがさー、今度その眷属から連絡来た時に話すから、それまで待てって言うんだよ」
「ふふっ、シルフィリールの言いたいこともわかるわねぇ~。突然贈り物をしたらタクミさんがびっくりするもの~」
「それはオレも理解したんだけど、連絡がついたらすぐに送りたいんだ。だから連絡が来たらすぐに知らせてもらえるように、マリアノーラ様から一言、言ってもらえないかなぁ~って」
ふふふっ。サラマンティールが頼み事をしてくるのも珍しいけど、その内容がまた可愛らしいわね~。
「ダメかな?」
「そのくらいなら構わないわ~。サラマンティールの頼みですもの~。あとでシルフィリールの眷属にお願いしておくわ」
「ありがとう、マリアノーラ様」
タクミさんにとって領分は関係ないから、どんどん活躍してくれるわね~。本当に頼もしい存在だわ~。
わたくしもご褒美を用意しておいたほうがいいかしら? ちょっと考えておきましょうかね。
あなたにおすすめの小説
試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました
あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。
断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。
平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。
――だが。
私にはもう一つの試験がある。
それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。
そして数日後。
その結果は――首席合格だった。
冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。
「家政など侍女の真似事」と笑った義姉が、十二年分の裏帳簿にすべて署名していた件
歩人
ファンタジー
公爵令嬢エルザは、十六歳から家政の一切を任されてきた。領地経営、使用人管理、収支帳簿——表向きは「下女と同じ仕事」と義姉に蔑まれながら、十二年。「家政など侍女の真似事。本当の貴族のすることではないわ」婚約破棄の宴で義姉が放った一言に、エルザは静かに微笑む。翌朝、公爵家の朝食の席。エルザは父の前に十二冊の帳簿を積み上げた。「表帳簿はわたくしが付けてまいりました。裏帳簿は——お姉様が」十二年分。義姉が捏造した脱税の裏帳簿、すべての頁に義姉自身の署名がある。エルザは毎晩、義姉が部屋を出た後、その署名を筆跡鑑定用に複写していた。義姉が悲鳴をあげる前に、王家監察官が屋敷の扉を叩いた。
「三番以下を取りなさい」と五年言われ続けたので、公開試験で本気を出しました
歩人
ファンタジー
王立魔法学院、入学時首席のリュシエンヌは、婚約者レイナルト公爵令息から五年間「女は三番以下を取れ」と命じられてきた。学院の序列は国家序列の縮図。レイナルトは常に一位に居続けた。婚約披露を控えた十九歳の春、レイナルトが新しい婚約者を連れて告げる。「お前では並び立てぬ。学力も身分も、足りなすぎる」——リュシエンヌは微笑んで、その翌日の年次公開試験で、五年封じてきた本気を出した。国王臨席の場で、史上最高点。魔法局長官が教授陣に命じる。「過去五年間の彼女の実測点と、もし本気で受けていたら出せた推計点を、公表したまえ」。教授陣は震える手で数字を並べた。レイナルトの「首席」は、全て彼女が譲った場所だった。
あなたがワインを浴びせた相手は、"子爵令嬢"じゃありませんわ
ばぅ
恋愛
公爵令息の恋人と噂されている「ルリア・ラズベルン子爵令嬢」と勘違いされ、夜会でワインを浴びせられた私。でも残念、完全な人違いです。
夫に捨てられたので、借金ごと全財産を不倫相手にあげました。――実家に帰ったら、過保護な兄たちの溺愛と侯爵様の求愛が待っていました
まさき
恋愛
あらすじ
夫が不倫相手を連れて帰り、私を家から追い出した。
相手は、よりによって私の遠縁の娘。
私は素直に従うフリをして、五年間の生活の「すべて」を二人に譲り渡す書類にサインさせる。
「これで私たちは大金持ちよ!」と歓喜する不倫相手。
「邪魔な女がいなくなって清々した」と笑う夫。
でも、お気をつけて。
私が譲ったのは「資産」だけじゃなく、それを維持するための「莫大な借金」もセットですから。
明日の朝、扉を叩くのは私ではなく、恐ろしい取り立て屋のはずですよ?
捨てられたはずの妻は、最強の過保護な三人の兄たちの元へ帰ってきた。
長兄アルドは無言で、次兄ケインは泣きながら、三兄セオは笑いながら、私を迎えてくれた。
久しぶりの「家」で、私はようやく気づく。
五年間、ずっと我慢ばかりしていたのだと。
そんな私の前に現れたのは、今回の騒動を遠くから眺めていた侯爵・ルーク・ヴァーノン。
「借金ごと渡した女」に興味を持ったと言う彼を、私は信用するつもりはなかった——はずなのに。
変更点は2つです。
冒頭に「よりによって私の遠縁の娘」を追加
「久しぶりの家で」の段落に「五年間」を追加して本文と一致させました
これで1話目・あらすじともに整合性が取れた状態です。2話目に進みますか?
「三番目の王女は、最初から全部知っていた」 ~空気と呼ばれた王女の、静かな逆襲~
まさき
恋愛
「三番目など、いなくても同じだ」
父王がそう言ったのを、アリエスは廊下の陰で聞いていた。
十二歳の夜のことだ。
彼女はその言葉を、静かに飲み込んだ。
——そして四年後。
王国アルディアには、三人の王女がいる。
第一王女エレナ。美貌と政治手腕を兼ね備えた、次期女王の最有力候補。
第二王女リーリア。百年に一人と謳われる魔法の天才。
そして第三王女、アリエス。
晩餐会でも名前を忘れられる、影の薄い末の王女。
誰も気にしない。
誰も見ていない。
——だから、全部見えている。
王宮の腐敗も。貴族たちの本音も。姉たちの足元で蠢く謀略も。
十六歳になったアリエスは、王立学園へ入学する。
学園はただの通過点。本当の戦場は、貴族社交と王宮の権力図だ。
そんな彼女に、一人だけ気づいた者がいた。
大勢の中で空気のように扱われるアリエスを、
ただ一人、静かに見ていた男が。
やがて軽んじていた者たちは気づく。
「空気のような王女」が、
ずっと前から——盤面を作っていたことに。
これは、誰にも見えていなかった王女が、
静かに王宮を動かしていく物語。
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた
歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。