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第四章:『闇乃宮参ノ闘戯場/地獣キネコ』
【第16話】
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「そうか、カゼノミヤはお前達を逃して…」
時空の狭間で崩壊していく第二闘戯場から脱出し、小さいながらも古代ロ―マのコロッセオを再現したような第三闘戯場になだれ込んだ闇乃宮討伐隊メンバー。
ファイアージェットでしんがりをつとめた総大将、雲隠探から仲間の最期を聞いたチノミヤノミコト様は重い表情で口をつぐむ。
「……」
言語化出来ない胸の内のあまり観客席で言葉を失ったまま座り込む須田丸とそれに寄り添う英里子。
「うぐっ、えぐっ…」
兄と自身の無事を喜びつつもゴブガミ先生の死のショックで茜おばさんの着物を涙で濡らすばかりのエミと固く口を結んで立ち尽くしたままそれを見守るタケル。
『雲隠御一行様方、先程の件…まことに感謝しております』
誰も救われないム―ドの中、沈黙を破ったのはヤミネコ。
今は中立とはいえ明確な敵サイドの自分にもエレメントプラスをかけ、反重力ムカデトレインの一員として脱出させてくれた事に感謝する。
「気にするな、あの時はお前も必要だっただけの話だ」
「アルジサマ……」
吐き捨てるように呟くナルカミノミヤを眷属魔物として気遣うシルバーデストロイメン。
『ふむ……ならば話しても大丈夫であろう』
ナルカミノミヤの返答に一瞬考えた後、静かに話し出すヤミネコ。
『先ほど御鐵院殿が言っていた戦場より去りしもののふの件だが……そなたらと我らの合計6つの御霊は我が主が再生可能な状態で確保している』
「それは本当か!?」
『ふむ、仔細は明かせぬが我が主はそれを可能とする奇跡の御方。そしてそなたらが主様の下に辿り着き、カミイクサで打ち勝ちし暁には皆無事に戻って来れるように手筈も整えている』
「じゃあゴブガミ先生も……」
「戻ってくるのね!!」
「タケル、エミ静かに……ヤミネコ、三度目となるがそれは本当なのか?」
突如なんの証拠もなく提示された虫が良すぎる出来ゲーム設定。
純粋に喜ぶ息子と娘を黙らせた探はヤミネコに問い返す。
『信じるか信じないかはそなたらの自由……だが我はそなたらに助けられた恩義を返したまでである。そなたらの心の準備が出来しだい闇乃宮、第三闘戯場試合開始とする』
試合審判兼案内人のヤミネコは少し離れた観客席に腰を下ろす。
(探、 どう思う?)
先ほどの件でここでもスマホが使える事が分かった闇乃宮討伐隊はすぐに各々のスマホを取り出してチャットアプリを起動。
身じろぎ一つせずにじっと待つヤミネコの動向に気を配りつつグループチャットで会話する。
(シルバーデストロイメン、今の発言に違和感はなかったか)
(アア、ワタシノ音声分析卜生体魔力観測的ニハウソヲツイテイナイヨウニオモエタ)
(ダガ、アイテガアイテダケニ100%デハナイダロウ)
(雲隠のアニキ、俺は元ヤンキー感覚だが……あれは嘘じゃねぇ)
(実際の所ナルカミが助けなきゃアイツもブラックホール行きだったわけだし……)
(それもそやね、どの道ウチらは美香ちゃんを助けなあかん。そこ忘れ取らんやろな?)
メッセージと共にポニーテール&猫耳なベリーダンサー海外アニメキャラ、ニャンティ・ザ・ベリィの『忘れないでねっ!!』のコメントスタンプを貼り付けた英里子。
「ニャンテイだっ!!」
茜のスマホを横から見つつ会話内容を把握していたタケルは喜びの声を上げる。
『わかっている』
『とにかく進もう!!』
『それしかないだろっ!!』
「パパ?」
「ハンゾー?」
それに対し、少し前のニチアサ特撮『改造忍者戦士ハンゾー』の主人公ヒーローの激熱コメントスタンプ3連貼り付けで答えた探。
偉大なるもののふの意外な側面を見た双子は思わずポーカーフェィスでスマホを見ている父を見てしまう。
『総大将殿、我らにご指示を』
三面六臂のデフォルメ阿修羅が敬礼するスタンプと共に総大将へ指示を仰ぐチノミヤノミコト様。
『探、私はお前を信じるぞ』
それを後押しする言葉と共にニチアサ特撮ヒーロー『スペース☆ゴエモン』の暑苦しい隈取ドアップ顔コメントスタンプ『どんと来いっ!!』を貼り付ける茜。
チャットアプリでのやり取りを終え、スマホをポケットにしまった探は立ち上がってヤミネコに向かって行く。
「ヤミネコ殿、こちらの覚悟は決まりました……第三闘戯場、試合開始願えますか?」
『それは何よりでございます、総大将殿』
相変わらず抑揚のない声だが満足気に答えるヤミネコ。
あんなふざけたやり取りでも揺るがぬ信頼と阿咋の呼吸で動けるパパ達みたいな大人ってすごいなぁ……闇乃宮討伐隊メンバー内最年少のタケルとエミはそんな事を思いつつ展開を見守るのであった。
【第17話に続く】
時空の狭間で崩壊していく第二闘戯場から脱出し、小さいながらも古代ロ―マのコロッセオを再現したような第三闘戯場になだれ込んだ闇乃宮討伐隊メンバー。
ファイアージェットでしんがりをつとめた総大将、雲隠探から仲間の最期を聞いたチノミヤノミコト様は重い表情で口をつぐむ。
「……」
言語化出来ない胸の内のあまり観客席で言葉を失ったまま座り込む須田丸とそれに寄り添う英里子。
「うぐっ、えぐっ…」
兄と自身の無事を喜びつつもゴブガミ先生の死のショックで茜おばさんの着物を涙で濡らすばかりのエミと固く口を結んで立ち尽くしたままそれを見守るタケル。
『雲隠御一行様方、先程の件…まことに感謝しております』
誰も救われないム―ドの中、沈黙を破ったのはヤミネコ。
今は中立とはいえ明確な敵サイドの自分にもエレメントプラスをかけ、反重力ムカデトレインの一員として脱出させてくれた事に感謝する。
「気にするな、あの時はお前も必要だっただけの話だ」
「アルジサマ……」
吐き捨てるように呟くナルカミノミヤを眷属魔物として気遣うシルバーデストロイメン。
『ふむ……ならば話しても大丈夫であろう』
ナルカミノミヤの返答に一瞬考えた後、静かに話し出すヤミネコ。
『先ほど御鐵院殿が言っていた戦場より去りしもののふの件だが……そなたらと我らの合計6つの御霊は我が主が再生可能な状態で確保している』
「それは本当か!?」
『ふむ、仔細は明かせぬが我が主はそれを可能とする奇跡の御方。そしてそなたらが主様の下に辿り着き、カミイクサで打ち勝ちし暁には皆無事に戻って来れるように手筈も整えている』
「じゃあゴブガミ先生も……」
「戻ってくるのね!!」
「タケル、エミ静かに……ヤミネコ、三度目となるがそれは本当なのか?」
突如なんの証拠もなく提示された虫が良すぎる出来ゲーム設定。
純粋に喜ぶ息子と娘を黙らせた探はヤミネコに問い返す。
『信じるか信じないかはそなたらの自由……だが我はそなたらに助けられた恩義を返したまでである。そなたらの心の準備が出来しだい闇乃宮、第三闘戯場試合開始とする』
試合審判兼案内人のヤミネコは少し離れた観客席に腰を下ろす。
(探、 どう思う?)
先ほどの件でここでもスマホが使える事が分かった闇乃宮討伐隊はすぐに各々のスマホを取り出してチャットアプリを起動。
身じろぎ一つせずにじっと待つヤミネコの動向に気を配りつつグループチャットで会話する。
(シルバーデストロイメン、今の発言に違和感はなかったか)
(アア、ワタシノ音声分析卜生体魔力観測的ニハウソヲツイテイナイヨウニオモエタ)
(ダガ、アイテガアイテダケニ100%デハナイダロウ)
(雲隠のアニキ、俺は元ヤンキー感覚だが……あれは嘘じゃねぇ)
(実際の所ナルカミが助けなきゃアイツもブラックホール行きだったわけだし……)
(それもそやね、どの道ウチらは美香ちゃんを助けなあかん。そこ忘れ取らんやろな?)
メッセージと共にポニーテール&猫耳なベリーダンサー海外アニメキャラ、ニャンティ・ザ・ベリィの『忘れないでねっ!!』のコメントスタンプを貼り付けた英里子。
「ニャンテイだっ!!」
茜のスマホを横から見つつ会話内容を把握していたタケルは喜びの声を上げる。
『わかっている』
『とにかく進もう!!』
『それしかないだろっ!!』
「パパ?」
「ハンゾー?」
それに対し、少し前のニチアサ特撮『改造忍者戦士ハンゾー』の主人公ヒーローの激熱コメントスタンプ3連貼り付けで答えた探。
偉大なるもののふの意外な側面を見た双子は思わずポーカーフェィスでスマホを見ている父を見てしまう。
『総大将殿、我らにご指示を』
三面六臂のデフォルメ阿修羅が敬礼するスタンプと共に総大将へ指示を仰ぐチノミヤノミコト様。
『探、私はお前を信じるぞ』
それを後押しする言葉と共にニチアサ特撮ヒーロー『スペース☆ゴエモン』の暑苦しい隈取ドアップ顔コメントスタンプ『どんと来いっ!!』を貼り付ける茜。
チャットアプリでのやり取りを終え、スマホをポケットにしまった探は立ち上がってヤミネコに向かって行く。
「ヤミネコ殿、こちらの覚悟は決まりました……第三闘戯場、試合開始願えますか?」
『それは何よりでございます、総大将殿』
相変わらず抑揚のない声だが満足気に答えるヤミネコ。
あんなふざけたやり取りでも揺るがぬ信頼と阿咋の呼吸で動けるパパ達みたいな大人ってすごいなぁ……闇乃宮討伐隊メンバー内最年少のタケルとエミはそんな事を思いつつ展開を見守るのであった。
【第17話に続く】
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