24 / 79
第四章:『闇乃宮参ノ闘戯場/地獣キネコ』
【第24話】
しおりを挟む
「えりこぉぉぉぉ!!」
ヤミネコを押しのけて縄ばしごもろとも眼下の砂渦アリジゴクに消えて行った英里子に叫ぶ須田丸。
「あの……馬鹿め!!」
須田丸と共に拳を握りしめ、口を噛み締める茜。
『チノミヤ様、ご無事な貴方だけででも早く上がってきてください!!』
黒渦に手を入れ、予備の縄ばしごを取り出したヤミネコは壁につかまって踏ん張るチノミヤノミコト様に叫ぶ。
「しかし、あいつを正気に戻さねば……ならぬ!!」
砂渦が届かない高さにある壁の出っ張りを掴んでぶら下がり、最後の1人となったチノミヤノミコトが引きずり込まれるのを虎視眈々と待つ暴走キネコ。
「チノミヤさん、今すぐ脱出するんだ!! 闇乃宮討伐隊の要にして五武神のリーダーたる貴方までここで失うわけにはいかない!!」
「くっ!!」
「これは総大将命令だ!!」
初めて闇乃宮討伐隊総大将として命を下す探。
マヨイガに住まう者、訪れる者の枠を超えたその圧倒的な言葉に全員が平伏する。
『男前やないの、雲隠さん!! アンタが大将や!!』
そんな中、勝手に開く神紋もののふ3人のステータスエアディスプレイ画面とSOUND ONLYなスピーカー通信。
「英里子さん!?」
「どこに居るんだ!!」
「あそこを見ろ!!」
第二闘戯場内、ゼド村長が指さす先で盛り上がっていく2つの砂山。
「あの形状は……指、いや腕か?」
「ゴーレムアームだわ!!」
エミの喜びの声と共にせり上がって来る英里子のゴーレムアーム達。
壁から生えたそれらはうつ伏せのまま砂まみれになったフウと英里子を乗せたまま慎重に上昇していく。
「呉井!! 無事だったのか!!」
「おうばっちりやで、デカボ院!! ウチの立派な胸像はまだキャンセル間に合うやろなぁ?」
全身の砂を払いつつ小粋なジョークで返す英里子。
「このクソアマ……そんな高くて縁起でもない物注文するか!! とにかく上がってこい!! そいつを放置して皆で第四闘戯場に逃げるんだ」
涙ボロボロで声も出ない須田丸に代わって泣き笑いしつつも叫ぶ茜。
「そうしたいのはヤマヤマなんやけど……これ以上はジョンとマルグリータも上に行けへんようなのや!!
……おそらく何らかのロックがかかつとつて対戦相手指名されたウチらがコイツを倒さへんとここから出れへんし、あんたらも次のボス戦場にも進めんのやろ暗黒武者殿?」
『……』
新しい呼称はとにかくその沈黙は『是』と言う事か。ヤミネコを問い詰めずともそう察する闇乃宮討伐隊メンバー。
だがおそらくそれをしているのは先ほどの女であり、その部下でしかないこいつを殴った所で何の意味もない上に人質になっている美香に危険が及ぶリスクが増すだけだ。
「静かに、動くな」
皆の怒りを察しつつも探は総大将として冷静沈着に振る舞う。
「こいつはウチらが何とかする、あんたらは先に進むんや!!『ゴーレムレッグ、リッタ&スーザン!!』」
壁にしがみついて砂渦に耐えるチノミヤを蹴り上げるように岩壁に生成召喚された英里子の巨大ゴーレムレッグ2本。
突き出した勢いのまま足裏を揃えて突っ込んでくるそれは自分を踏み漬す気だ、わずかに残っていた理性と本能でそう察した暴走キネコは拳で打ち砕くべく身構える。
『ウガッ!?』
だがその予想に反して英里子のゴーレムレッグ2本キネコを避けるようにY字型に衝突し壁にめり込み、キネコは空振りになった剛拳でバランスを崩す。
「でぇい!!」
英里子のゴーレムレッグに乗って高速接近に成功したチノミヤノミコト様は頭上から飛び掛かり、その腕を押さえつつ野太い首にヘッドロックをかける。
「ナイスや、チノミヤさん!!」
あとは自身の作戦通りに動いてくれた五武神がそのまま虎男をぶん投げ、敵が自ら発動させたアリジゴクに叩き落として自滅させるだけ。
砂渦アリジゴク上でもみ合う大丈夫2人を前に勝利を確信した英里子はガッツポーズを取る。
「いや、まだだ……神でもない魔物が五武神長様のお力を上回るなんてアタシは悪い夢でも見てるのか?」
マヨイガエレメント『地』の力のみならず物理的な『力』において最強無比の存在である五武神長が全力を出しても押さえ込むのがやっとと言う存在に直面した式神フウ。
このままでは敵が押さえ込みを破ってチノミヤノミコト様を渦に突き落としてしまう。
そしてそこから一気に闇乃宮討伐隊全滅……最悪の未来が見えてしまったフウは思わず上から不安そうな表情で見守る妹、式神ライを見る。
「チノモノ英里子、やるしかないぞ」
「どうやらそうみたいやね……フウちゃん」
道を作る覚悟を決めた2人は目を合わせて頷く。
【第25話につづく】
ヤミネコを押しのけて縄ばしごもろとも眼下の砂渦アリジゴクに消えて行った英里子に叫ぶ須田丸。
「あの……馬鹿め!!」
須田丸と共に拳を握りしめ、口を噛み締める茜。
『チノミヤ様、ご無事な貴方だけででも早く上がってきてください!!』
黒渦に手を入れ、予備の縄ばしごを取り出したヤミネコは壁につかまって踏ん張るチノミヤノミコト様に叫ぶ。
「しかし、あいつを正気に戻さねば……ならぬ!!」
砂渦が届かない高さにある壁の出っ張りを掴んでぶら下がり、最後の1人となったチノミヤノミコトが引きずり込まれるのを虎視眈々と待つ暴走キネコ。
「チノミヤさん、今すぐ脱出するんだ!! 闇乃宮討伐隊の要にして五武神のリーダーたる貴方までここで失うわけにはいかない!!」
「くっ!!」
「これは総大将命令だ!!」
初めて闇乃宮討伐隊総大将として命を下す探。
マヨイガに住まう者、訪れる者の枠を超えたその圧倒的な言葉に全員が平伏する。
『男前やないの、雲隠さん!! アンタが大将や!!』
そんな中、勝手に開く神紋もののふ3人のステータスエアディスプレイ画面とSOUND ONLYなスピーカー通信。
「英里子さん!?」
「どこに居るんだ!!」
「あそこを見ろ!!」
第二闘戯場内、ゼド村長が指さす先で盛り上がっていく2つの砂山。
「あの形状は……指、いや腕か?」
「ゴーレムアームだわ!!」
エミの喜びの声と共にせり上がって来る英里子のゴーレムアーム達。
壁から生えたそれらはうつ伏せのまま砂まみれになったフウと英里子を乗せたまま慎重に上昇していく。
「呉井!! 無事だったのか!!」
「おうばっちりやで、デカボ院!! ウチの立派な胸像はまだキャンセル間に合うやろなぁ?」
全身の砂を払いつつ小粋なジョークで返す英里子。
「このクソアマ……そんな高くて縁起でもない物注文するか!! とにかく上がってこい!! そいつを放置して皆で第四闘戯場に逃げるんだ」
涙ボロボロで声も出ない須田丸に代わって泣き笑いしつつも叫ぶ茜。
「そうしたいのはヤマヤマなんやけど……これ以上はジョンとマルグリータも上に行けへんようなのや!!
……おそらく何らかのロックがかかつとつて対戦相手指名されたウチらがコイツを倒さへんとここから出れへんし、あんたらも次のボス戦場にも進めんのやろ暗黒武者殿?」
『……』
新しい呼称はとにかくその沈黙は『是』と言う事か。ヤミネコを問い詰めずともそう察する闇乃宮討伐隊メンバー。
だがおそらくそれをしているのは先ほどの女であり、その部下でしかないこいつを殴った所で何の意味もない上に人質になっている美香に危険が及ぶリスクが増すだけだ。
「静かに、動くな」
皆の怒りを察しつつも探は総大将として冷静沈着に振る舞う。
「こいつはウチらが何とかする、あんたらは先に進むんや!!『ゴーレムレッグ、リッタ&スーザン!!』」
壁にしがみついて砂渦に耐えるチノミヤを蹴り上げるように岩壁に生成召喚された英里子の巨大ゴーレムレッグ2本。
突き出した勢いのまま足裏を揃えて突っ込んでくるそれは自分を踏み漬す気だ、わずかに残っていた理性と本能でそう察した暴走キネコは拳で打ち砕くべく身構える。
『ウガッ!?』
だがその予想に反して英里子のゴーレムレッグ2本キネコを避けるようにY字型に衝突し壁にめり込み、キネコは空振りになった剛拳でバランスを崩す。
「でぇい!!」
英里子のゴーレムレッグに乗って高速接近に成功したチノミヤノミコト様は頭上から飛び掛かり、その腕を押さえつつ野太い首にヘッドロックをかける。
「ナイスや、チノミヤさん!!」
あとは自身の作戦通りに動いてくれた五武神がそのまま虎男をぶん投げ、敵が自ら発動させたアリジゴクに叩き落として自滅させるだけ。
砂渦アリジゴク上でもみ合う大丈夫2人を前に勝利を確信した英里子はガッツポーズを取る。
「いや、まだだ……神でもない魔物が五武神長様のお力を上回るなんてアタシは悪い夢でも見てるのか?」
マヨイガエレメント『地』の力のみならず物理的な『力』において最強無比の存在である五武神長が全力を出しても押さえ込むのがやっとと言う存在に直面した式神フウ。
このままでは敵が押さえ込みを破ってチノミヤノミコト様を渦に突き落としてしまう。
そしてそこから一気に闇乃宮討伐隊全滅……最悪の未来が見えてしまったフウは思わず上から不安そうな表情で見守る妹、式神ライを見る。
「チノモノ英里子、やるしかないぞ」
「どうやらそうみたいやね……フウちゃん」
道を作る覚悟を決めた2人は目を合わせて頷く。
【第25話につづく】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる