ダンジョンマスター先輩!!(冒険に)付き合ってあげるからオカルト研究会の存続に協力してください 2!! ~闇乃宮と涙怨の巫女~

千両文士

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第六章:『闇乃宮五ノ闘戯場/風獣カゼネコ』

【第38話】

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「えっ、ええっ?」
「あれは、まさか……マジかよ。参ったなこりゃぁ……」
 風の力だけで垂直浮上していく茜を前に戸惑う式神ライと顔を抑えて笑い出すナルカミノミヤ。
 そんな2人の目の前で浮上を続けた茜は地上から5メートル辺りに漂う雲の上に立つ敵と同じ高さまで上昇しその場で空中停止する。
「改めまして、カゼネコ殿……私はタメシヤノミコト様によるマヨイガの義を司った武家、御鐵院の一族の血を継ぐ風神紋使い、御鐵院 茜と申します。 以後よろしく」
『ふぉふぉふぉ、まさか『迷処七天賦』に名が残るのみの風エレメント奥義を使える人のもののふとお手合わせできるとは……長生きはしてみるものですな』
 腕を組んだまま不敵な笑みと共に挑発する茜に挑発し返すカゼネコ。
 強者と強者がぶつかり合う前の不穏ながらも穏やかな沈黙が第五闘戯場に満ちる。

「茜おばさんが……飛んでいる?」
「お兄ちゃんや英里子おばちゃんの漫画みたいだわ!!」
 第五闘戯場、バトルフィールド外の控え席となる茶室。
 ヤミネコが取り出した大型銅鏡で箱庭内の拡大ライブ中継を見ていたタケルとエミは思わず目をこする。
「あれはかつて風神紋を授かりし御鐡院のもののふ、御鐡院 笠間 (みてついん かさま)が編み出し『迷処七天賦』に記録として残された物で間違いない!」
 雲隠家の双子とその他全員の疑間に答えるように解説を始めるミズノミヤ様。
「理論上は全身を覆うように風エレメントを付与し、その強弱を調整することで鳥のように宙を自由に舞う事を可能とするモノだが……エレメント付与状態を長時間維持しつつ魔力と小まめな強弱調整できる調整力、さらにはバランス能力含む高い身体能力が求められる高度技術だ。
 少なくとも笠間より後にこれをマヨイガの儀で実践し用いた者はおらぬ」
「すごい……」
 いつか私も同じマヨイガ風紋持ちとして……エミは静かな決意と共に銅鏡内の大先輩を見守る。

 (式神、私はいざとなれば自分の身は守れる。 君はダメだと思ったらすぐに逃げろ)
 激突カウントダウン状態を維持しつつ頭上中空で対峙する2人を見守りつつ足の怪我を回復させていくナルカミノミヤは傍らで支える式神ライの耳元で呟く。
 (ありがとうございます、五武神様)
 茜と敵の武器から推測するに矢と遠距離エレメント技を主体とした空中戦になる可能性が高い。
 そのような予測を立てていた式神ライは遠距離技の流れ弾と巻き添えに細心の注意を払う。
『はぁ!!』
『うぉぉ!!』
 式神ライの順当な予想に反し、風を纏いしカゼネコの杖と茜の巨大な野太刀による物理激突から始まった一騎打ち。

「えっ、ええっ? 御鐵院殿は…… どこにあのような武器を!?」
 茜が浮遊状態を維持しつつ振るう野太刀と敵の木杖がガンガンと切り結ぶまさかの展開。
 エレメントプラスで強化された(と思われる)敵の木杖が野太刀を受け止めて切り結べると言う事実はさておき、180オーバーな大柄女子でも隠し場所が無い長柄物をどこから出したのか想像も及ばない式神フウは頭上の丁々発止に驚きながらも見守る。
「式神、落ち着いてよく見ろ。 あれは太刀ではない、あいつの武器たる神紋弓だ」
「えっ、しかし……あれは?」
 緑色の魔力を放つ茜の野太刀の中に透け見える何か。
 最初は気づけなかったが冷静になってみると気づけたDのような形をしたそれが大弓である事に気づいた式神フウは全てを理解する。
「ふふっ、まさか人のもののふの身でありながらあのような器用な事が出来るとは。いやはや参ったよ…… よっこらせっと」
 マヨイガの儀に挑みし者に与えられるマヨイガ紋はもののふ自身の魔力を注ぐ事でその属性に対応した様々な技……分かりやすく言えば火球を撃ち出し、電撃を纏い、岩塊を創生する事を可能とする。
 そして神紋シリーズと呼ばれる特殊なマヨイガ装備は神紋の魔力を取り込む事でその力を大幅に増幅する特性があり、茜の神紋弓も例外ではない……ウインドオーバードライブの力を流し込まれた神紋弓を核として溢れ出す魔力を野太刀型に生成、密度と硬度を上げて近接武器に仕上げると言う超高度テクを『空』と併用して用いる茜を前にいつものニヒルな笑みを浮かべつつ立ち上がるナルカミノミヤ。
「五武神様!! お怪我が……」
「もう大丈夫だ、私の神力による再生はもちろんお前の治療も良く効いたぞ式神」
 そのまま四次元振袖に手を入れたナルカミノミヤは小声で詠唱しながら何かを引きずり出す。
『サカサ』
 赤字で『封』と書かれた紙がびっしりと貼られ、その上から縄をぐるぐるに巻かれた小ぶりな銅剣。
 五武神ナルカミノミヤ様がお持ちだったソレが何かは分からないが、ジョークではないガチ封印に刃に纏わりつくどす黒い瘴気……タメシヤノミコト様のお創りになったマヨイガのモノではない事を察したフウは思わず後ずさりする。
「安心しろ、これはお前には危害を加えぬモノだ。 故に全ての代償は私に向かう。我らも参るぞ!!」
「はい!!」
 そう言いつつ狩衣上着を脱ぎ捨て、上半身裸の袴姿になったナルカミノミヤは不穏な銅剣を構え、フウに続くように命じる。

【第39話につづく】

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